1.今年の司法試験・予備試験について、「司法試験法7条があるので、中止には法改正が必要だ。だから、法改正がされない限り、中止されることはない。」とする説明がされることがあるようです。
(司法試験法7条)
司法試験及び予備試験は、それぞれ、司法試験委員会が毎年一回以上行うものとし、その期日及び場所は、あらかじめ官報をもつて公告する。
しかし、法律の素人であればともかく、将来の法律家を目指す立場の者が、これで納得してもらっては困るというものです。補助線として、憲法の短答知識を復習してみましょう。以下の肢の正誤はどうでしょうか。
① 憲法上、裁判官の報酬は在任中減額できないものとされており、実際に在任中の裁判官の報酬が減額されたことはない。
② 憲法上、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、国会の臨時会の召集を決定しなければならないとされており、実際にいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったにもかかわらず、内閣が臨時会の召集を決定しなかったことはない。
2.①を考えます。前半部分が正しいことは明らかです。
(憲法)
79条6項 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
80条2項 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
では、後半部分はどうか。憲法79条6項後段及び80条2項後段は、文言上例外を認めていません。そうすると、「憲法79条6項後段、80条2項後段があるので、減額には憲法改正が必要だ。だから、憲法が改正されていないのに減額されたことはないはずだ。」ということになり、後半部分も正しいと判断したくなるところです。しかし実際には、裁判官の在任中の報酬が減額された例があるのです。
(衆院総務委員会平成14年9月6日議事録より引用。太字強調は筆者。)
小池百合子(保守党)委員 今回、一九四八年の勧告史上初のベースダウンということで、特に基本給、俸給表の引き下げ改定というのがやはり一番大きなテーマではなかろうかと考えております。
そこで、いきなり憲法問題になるわけでございます。新聞などにも報道されておりますように、裁判官に対してこの人勧をそのまま当てはめていった場合には、憲法の文言では、減額してはならない、減額することができないということが憲法の第七十九条、そして八十条にうたわれているわけでございますけれども、今回のこの措置で明らかな減額になるわけでございます。これによりまして、最高裁の方でも、これは違憲か合憲かといったような討議といいましょうか、検討が行われたということで、結局これは合憲であるというふうにみなされたと伺っております。
直接最高裁の方から、今回の経過、そしてその結果についてお伺いしたいところではございますが、残念ながら立法府にはお越しいただけないということでございますので、法務省の方から、今回のこの問題につきまして、どのような経過があり、そしてどのような判断に基づいて結論を出されたのか、御報告を願いたいと思います。
寺田逸郎(法務省大臣官房司法法制部長)政府参考人 おっしゃるとおり、最高裁判所の裁判官会議におきまして御議論が行われたようでございまして、法務省としてこれを詳細に承知しているわけではございませんけれども、ただいま委員が御指摘になりましたように、裁判官の報酬の引き下げにつきましては憲法上の問題があるということから、司法行政上の決定をする前提として御議論をされまして、たとえ今回の人事院勧告が完全実施されて報酬が一般的に引き下げられる、これに伴いまして裁判官の報酬も引き下げられるということになりましても、必ずしも憲法の言う報酬を引き下げてはならないということに抵触して違憲であるということにはならない。これは、司法の独立を侵すものではないという趣旨からして、そういうことにはならないということで、一定の結論をお入れになられたというふうに私どもは受け取っております。
小池百合子(保守党)委員 実際の相手といいますか、お伺いしたいところの最高裁がおられないので、なかなか法務省には聞きにくいところでございますが、ただ、日本国憲法の文言からいいますと、「この報酬は、在任中、これを減額することができない」、それ以外の読み方ができないわけでございまして、私は、今回、この人事院の勧告をそのまま完全実施いたしますと、これは明らかに違憲ではないか、これは違うのではないかというふうに思わざるを得ないわけでございまして、むしろ、これは憲法改正をすべきではないかというようなことも思うわけでございます。
これで、もし裁判官の皆さんが、これは違憲ではないかということで訴えられてきたときに、法的にもつのでございましょうか。だれにお答えいただいたらいいのかわかりませんが、法務省としてはいかがでしょうか。
寺田逸郎(法務省大臣官房司法法制部長)政府参考人 私は、ここで確定的に憲法解釈を申し上げる立場にはございませんが、かねてからこの問題につきましては、おっしゃるとおり、文面上全く留保なく、報酬を在任中は引き下げることができないという規定ぶりがされていることから、これを違憲とする考え方が一方でございます。
しかし他方で、今回と同様に、国家の財政上の理由あるいは経済情勢からいたしまして、一般的に公務員すべて、国家公務員すべてが報酬、給与を引き下げられるというような場合に、これに伴いまして裁判官も相応の引き下げがされるというような場合には、これは憲法の趣旨からいきまして司法の独立を侵すことはないということで、憲法に必ずしも違反するものではないという見解がありまして、私どもといたしましては、最近では、私が今申し上げました後の方の見解、すなわち、必ずしも違憲ではないという見解が有力になりつつある、こういうふうに承知しております。
(引用終わり)
(衆院法務委員会平成14年11月13日議事録より引用。太字強調は筆者。)
山花郁夫(民主)委員 憲法の七十九条、八十条を見ますと、裁判官の報酬は下げてはならない、「報酬は、在任中、これを減額することができない。」と明確に規定しているわけであります。
権力分立という考え方は、申し上げるまでもありませんけれども、モンテスキューの法の精神以来、各国が立憲主義の精神にのっとって、国のあり方として広く普遍化してきておりますけれども、その権力分立の中の一つとして、司法権の独立ということが強く言われております。
司法権の独立というのは、もちろん裁判所の独立ということと個々の裁判官の独立という二つのことを内容としているわけでありますが、今回の法案は、個々の裁判官の独立にかかわることではなかろうかと思っております。
かつて、日本でも、大審院の児島惟謙という方が有名でありますけれども、その時代に、あれは恐らく裁判所の独立を行政から守ったという事件なんだと思いますけれども、裁判所が本当に独立しているためには、個々の裁判官が本当に職務に専念できるようでなければいけない。そのことの一つを担保するために、経済的な面から、お金がなくて家のことで困っているのでアルバイトしてなんという心配をしないでしっかりと裁判に打ち込めるというために、この憲法上の保障となっているわけであります。
こうした保障の趣旨からしますと、ほかの公務員について年俸を引き下げるからという理由だけで引き下げることが適切だろうかという疑問を私自身は若干持っているわけであります。
指摘というよりも、疑問を持っているので御説明をいただきたいという立場で質問させていただきますが、形式的には憲法の条項に触れるように見えるということ、実質的には、今申し上げましたように、司法権の独立という観点からすると、検察官についてはともかく、裁判官もあわせて下げるということについては、趣旨説明で説明された以上にもう少し踏み込んで御説明をいただかなければいけないのかなと思いますので、その点についての御説明をお願いいたします。
森山眞弓法務大臣 憲法第七十九条第六項及び第八十条第二項は、「在任中、これを減額することができない。」と規定しております。確かにおっしゃるとおりでございます。
ただ、法務省は憲法の解釈一般について政府を代表して見解を述べるという立場ではございませんが、当省なりの考え方を申し上げますと、これらの憲法の規定は、裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するため、相当額の報酬を保障することによって裁判官が安んじて職務に専念することができるようにするためであるとともに、裁判官の報酬の減額については、個々の裁判官または司法全体に何らかの圧力をかける意図でされるおそれがないとは言えないことから、このようなおそれのある報酬の減額を禁止した趣旨の規定であるというふうに解されます。
今回の国家公務員の給与の引き下げは、民間企業の給与水準等に関する客観的な調査結果に基づく人事院勧告を受けて行われるものでございます。このような国家公務員全体の給与水準の民間との均衡等の観点から、人事院勧告に基づく行政府の国家公務員の給与引き下げに伴いまして、法律によって一律に全裁判官の報酬について、これと同程度の引き下げを行うということは、裁判官の職権行使の独立性や三権の均衡を害して司法府の活動に影響を及ぼすということではないと思います。したがいまして、今回の措置は憲法の趣旨に反するものではなくて、また同条に違反するものではないというふうに考えるわけでございます。
そして、このように憲法の規定が解されることに加えまして、委員御指摘のとおり、今般の人事院勧告を受け、同勧告どおりの給与の改定を行う旨閣議が決定をしたこと、また、従来裁判官の給与については、国家公務員全体の給与体系の中で、その職務の特殊性を考慮しながらバランスのとれたものとするという考え方に基づいて改定を行ってきたことなどを踏まえまして、政府としては、裁判官についても、一般の政府職員の給与改定に伴いまして、報酬月額を、その額においておおむね対応する一般の政府職員の俸給の減額に準じて改正する必要があると考えまして、今般の措置を講ずることにいたしたものでございます。
(中略)
山花郁夫(民主)委員 最高裁にもう少しお聞きしたいんですけれども、その最高裁判所の裁判官会議の中で、報道等によれば、国家財政上の理由などでやむを得ず立法、行政の公務員も減額される場合、裁判官報酬の減額は身分保障などの侵害には当たらず許されるという見解で一致したということのようでありますが、こういった結論が出てくるまでの議論の経緯であると……(略)……どういう意見集約のされ方がなされたかということについて御報告いただければと思います。
山崎敏充最高裁判所長官代理者 この問題につきまして最高裁判所の裁判官会議で議論がございまして、憲法上、裁判官の報酬について特に保障規定が設けられております趣旨及びその重みを十分に踏まえて検討いたしました。人事院勧告の完全実施に伴い国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合、その場合に裁判官の報酬を同様に引き下げても司法の独立を侵すものではないということで、会議におきましては憲法に違反しない旨確認されております。
その議論の参考に資するという趣旨で、下級裁判所の裁判官から、可能な限りでございますけれども意見を聴取いたしました。若干時期的な問題もございまして、これは全員からというわけにはいかなかったわけでございますけれども、相当数の判事あるいは判事補から意見を聞いて、これを参考にして、ただいま申し上げました結論に達したということでございます。
(引用終わり)
一般的に国家公務員すべてが報酬、給与を引き下げられ、それに伴って裁判官も相応の引き下げがされるというような場合には、憲法79条6項後段、80条2項後段に違反しない。このような解釈の下に、減額がなされたのでした。
以上のように、①の肢は、後半部分が誤りです。
3.②の肢をみてみましょう。これも、前半部分が正しいことは明らかです。
(憲法53条)
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
では、後半部分はどうか。憲法53条後段は、文言上例外を認めていません。そうすると、「憲法53条後段があるので、臨時会を召集しなくてよい場合を認めるには憲法改正が必要だ。だから、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったならば、必ず臨時会が召集されていたはずだ。」ということになり、後半部分も正しいと判断したくなるところです。しかし実際には、内閣が臨時会の召集を決定しなかった例があるのです。
(参院外交防衛委員会平成15年12月16日議事録より引用。太字強調は筆者。)
齋藤勁(民主)委員 衆議院と参議院のイラク特とかこの外交防衛委員会は、それはそれぞれ院内でいろいろ協議することですが、憲法五十三条に基づいて臨時会を要求したわけですね、四分の一以上の議員の賛成をもって。……(略)……臨時会を開こうということです。開かなければならないということなんですね、憲法に基づきまして。ねばならないんです。
(中略)
齋藤勁(民主)委員 長いこの憲政史上、二十九回臨時会を要求していますよ、国会は。二十九回……(略)……すぐやった場合と、ちょっと時間が空いてやった場合があるんです。しかし、二十九回とも臨時会召集しているんですよ、二十九回とも。これ三十回目で、私ども委員が要求をして実施をしないということになれば、小泉内閣初めてですよ、これは。
(中略)
秋山收(内閣法制局長官)政府参考人 憲法第五十三条の問題でございますので、一般的な考え方を御説明いたしたいと思います。
憲法五十三条後段は、「内閣は、」その要求があった場合に「その召集を決定しなければならない。」と規定しておりますが、召集時期につきましては何ら触れておりませんで、その決定は内閣にゆだねられております。
このことから、いつ、いつ召集してもいいということではもちろんございません。臨時会の召集要求があった場合に、仮にその要求において召集時期に触れるところがあったとしましても、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないというふうに考えられているところでございます。
もっとも、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと異なると、異なるところはございませんので、あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません。
(引用終わり)
(参院本会議平成28年1月7日議事録より引用。太字強調は筆者。
前川清成(民主)委員 憲法第五十三条は、臨時国会に関して、いずれかの院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならないと定めています。そして、参議院においても、昨年十月二十一日、総議員の四分の一を超える八十四名の議員が議長宛てに召集要求書を提出しています。それにもかかわらず、なぜ、昨年、臨時国会の召集を決定しなかったのか、そして、それはいかなる憲法解釈に基づくのか、お答えをください。
(中略)
安倍晋三内閣総理大臣 国会の召集についてお尋ねがありました。
一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねております。
基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと解しておりますが、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えておりません。
昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府としてこれに適切に対応するため、現下の諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、迅速かつ適切に対応していると考えております。
(引用終わり)
合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情があれば、臨時会の召集を決定する必要はない。そのような解釈の下に、臨時会の召集はなされなかったのでした。
また、最近では、「憲法53条後段は内閣の政治責任を定めたものであって、法的義務を定めていない。だから、仮に臨時会の召集を決定しなくても、違憲の問題は生じないのだ。」と考えているかのような態度をみせるようになってきています。
(衆院内閣委員会令和元年5月29日議事録より引用。太字強調は筆者。)
高井崇志(立民)委員 法制局長官に伺いたいんですが、憲法五十三条というのがあります。これは、臨時国会を召集する、衆参いずれかの四分の一の要求でできるということで、二年前に我々野党で要求しましたけれども、結局、九十八日間も開かれなかったということであります。さらに、その日に解散して、その後の特別国会まで数えると実に合計百三十一日、国会が開かれなかったんですが。
これは、実は、このことについて横畠長官に二月十四日の予算委員会で、これは憲法上の義務なのかということの趣旨の質問をして、そのときに、合理的な期間を超えない期間内に臨時国会を召集しなければいけない、これは憲法上の義務だというような答弁だったんですけれども、改めて、その答弁、そのとおりでよろしいでしょうか。もう一度答弁をしてください。
横畠裕介(内閣法制局長官)政府特別補佐人 昨年二月のことかと思いますけれども、憲法第五十三条後段につきましては、まさに条文上、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と現に規定しているわけです。このことはまさに、すなわち、憲法に規定されている義務と言うことができるのではないかということをお答えしたところでございます。
その義務ということから、じゃ、どのような義務内容であるのかとか、あるいは、どのような場合にその義務に違反したことになるのかであるとか、さらには、その義務に違反した場合の法的効果でありますとか、その責任がどのようなものであるかというのは別の事柄でございますけれども、条文がそうなっておりますことから、そのようにお答えしたところであり、また、その憲法に規定されている義務の中身としましては、従前からお答えしているとおり、内閣は、臨時会で審議すべき事項等を勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないものと理解しているところでございます。
高井崇志(立民)委員 実は、私、これを訴訟しているんです。憲法五十三条、憲法違反じゃないかということで訴訟しておりまして、そうすると、国の弁明は、これは法務省が担当していますけれども、これは法的義務じゃないと言っているんですね。政治的な責任を負うけれども、法的な責任を負わない、法的義務ではないと。これは今の長官の答弁と違う、閣内不一致じゃないですか。
横畠裕介(内閣法制局長官)政府特別補佐人 先ほどお答えしたとおり、憲法第五十三条後段の規定がまさに憲法に規定されている義務と言うことができるのではないかというふうにお答えしたわけで、私自身、法的義務であるという言い方をしたことはございません。過去、法制局においても、そのようなお答えをしたことはないと思います。
あえて申し上げれば、御指摘の答弁においては、それに違反した場合に何か法的責任が生ずると誤解されるおそれがある法的義務という言葉はあえて用いなかったということでございます。
高井崇志(立民)委員 それでは、長官も、これは法的義務ではないけれども、法的な責任ではない、法的責任はない、政治的責任を負うのみでいい、この憲法五十三条後段は政治的責任のみを負えばいいという法制局としてのお考えですか。
横畠裕介(内閣法制局長官)政府特別補佐人 先ほどお答えしましたけれども、憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」という義務的な文言で規定されていることから、それについて、憲法に規定されている義務と言うことはできるというふうに考えられるところでございますけれども、さらにその先、先ほども申し上げましたけれども、その義務内容がどのようなものであるのか、すなわち、どのような場合にこの義務に違反したことになるのか、さらには、これに違反した場合の責任、法的効果がどのようなものであるのかというのは別の事柄と考えられるところであり、法制局として答弁申し上げたところは、憲法第五十三条の規定に則したところと、さらには、その義務の内容としては先ほどお答えしたところであるというふうに考えているというところまでお答えしているところでございます。
その先につきましては、先生、裁判もされているということでございますれば、それは裁判所の判断というのもあろうかと思いますので、今ここで私どもの、法的責任か政治的責任か等々のことについて申し上げることは差し控えたいと思いますが、憲法自身には、その法的効果について何も規定がないということは事実でございます。
高井崇志(立民)委員 これは本当におかしいと思いますね。憲法上、召集しなければならないとはっきり書いている。一方、解散はそこまで書いていないので、この解散権については、統治行為論という裁判所の判断、これも非常に評判が悪くて、憲法学者や法学者の間では、最高裁、どうなっているんだ、こんな統治行為論を乱発するようでは最高裁判所の意味がないじゃないか、違憲審査の意味がないじゃないかという議論にまでなっています。
この五十三条まで、私は、法的義務はないとか法的責任はないといって政治的責任だといったら、本当に、もう憲法は成り立たないと思いますね。これは法務省と法制局、どこまで相談してやっているかわかりませんけれども、相当法務省も苦しい言いわけで、これはかなり、やはり法学界からは問題視されていますので、ぜひ政府として、もう一度しっかり検討していただきたいと思います。
(引用終わり)
いずれにしても、②の肢は、後半部分が誤りです。
4.以上のように、文言上は例外がなくても、解釈上の例外は認められる。これは、法解釈の基本です。そして、憲法規範ですら、現にそのように運用されてきたのです。司法試験法7条に限って、これが当てはまらないという理由はないでしょう。これに対し、「そんな解釈はけしからん。あってはならないことだ。」と考えることは自由です。しかし、将来の予測として、「司法試験法7条があるので、法改正がされない限り、司法試験・予備試験が中止されることはない。」と考えるのは、適切とはいえない。当サイトは、そのように考えているのです。
5.ちなみに、論文で、司法試験・予備試験の中止が司法試験法7条に違反しない旨を論じなければならなくなったとして、瞬時に論述内容を想起できるでしょうか。例えば、以下のようなものが考えられるでしょう。
【論述例】
司法試験法7条の趣旨は、法曹界と政府が対立した場合に、政府が制裁的に司法試験・予備試験の実施を中止するなど、公権力による恣意的な司法試験・予備試験の運用がなされないようにするとともに、法曹人材の安定供給に資する点にある。司法試験・予備試験の実施により受験生、試験監督員、周辺住民等の生命・健康に重大な危害が及ぶおそれがある場合には、公権力の恣意によるものとはいえない。また、法曹人材の安定供給の要請は、国民の生命・健康を大きく犠牲にしてまで確保すべき公益であるとはいえない。
以上から、受験生、試験監督員、周辺住民等の生命・健康に重大な危害が及ぶおそれがある場合には、司法試験・予備試験を中止しても、同条に違反しない。
上記のような論述は、出来上がったものを覚えても意味がありません。大切なことは、未知の論点が問われた際に、瞬時にそれっぽい論述を想起できるということです。そのような能力は基本書や予備校テキストを読んでいても身に付かないので、当サイトは、答案を書くことを非常に重視しているのでした。