令和3年予備試験口述試験(最終)結果について(1)

1.令和3年予備試験口述試験の結果が公表されました。合格点は、これまでと同じ119点最終合格者数は、467人でした。昨年の最終合格者数442人と比べると、25人の増加ということになります。
 今年の口述試験の受験者合格率は、467÷476≒98.10%でした。以下は、これまでの口述試験の受験者合格率等の推移をまとめたものです。元号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

受験者数 合格者数 受験者
合格率
前年比
23 122 116 95.08% ---
24 233 219 93.99% -1.09
25 379 351 92.61% -1.38
26 391 356 91.04% -1.57
27 427 394 92.27% +1.23
28 429 405 94.40% +2.13
29 469 444 94.66% +0.26
30 456 433 94.95% +0.29
令和元 494 476 96.35% +1.40
令和2 462 442 95.67% -0.68
令和3 476 467 98.10% +2.43

 平成26年までは下落傾向でしたが、平成27年以降は、上昇傾向となっています。とはいえ、今年はやや高すぎる数字になっていますので、来年は、もう少し低い水準となる可能性が高いでしょう。以前にも説明したとおり、口述試験の理論的な合格率は、93.75%です(「令和3年予備試験口述試験対策について(上)」)。平成28年以降は、それを上回る数字で推移しています。ですから、当面は58点以下が付く可能性を考える必要はないでしょう。最近では、口述の再現をネット上に公開する人が増え、口述不合格者の再現を目にする機会が増えてきています。それをみると、民事・刑事のどちらかが悪く、それが58点以下になって不合格になったようにみえたりするものです(再現者自身がそのような感想を述べていることも多いようです。)。しかし、上記の合格率からは、そうではない可能性が高いといえます。以前の記事(「令和3年予備試験口述試験対策について(上)」)でも説明したとおり、口述は初日に大失敗した、と感じるのが普通で、58点が付く可能性を考えるようになると、それだけで心理的に不利になります。口述再現を目にする機会が増えることは悪いことではありませんが、読み方には注意を要します(※1)。以前の記事(「令和3年予備試験口述試験対策について(下)」)でも説明しましたが、口述再現は、当日の雰囲気を知る程度のものとして読み流せばよく、論文の再現答案のように、それを分析して対策しようとすることは、適切とはいえないと思います。後記2のとおり、口述試験では論文のような極端な若手優遇策は採られていないので、そもそも再現を用いて詳細な分析をする必要はあまりないのです。
 ※1 論文は答案という書面の内容のみで審査されますが、口述は言語によるやり取り以外の要素も審査対象となること、採点方法も論文とは違い、考査委員の印象でざっくりと決まること、論文は試験問題が公開されますが、口述の場合は主査の問いかけ自体も受験生の記憶に基づくこと、とっさのやり取りは記憶に残りにくいことに加え、論文よりも受け答えの内容が人格に関わりやすく、本当に恥ずかしい受け答えは再現から省いてしまいがちなこと等、口述再現には不確定要素があまりにも多く、それを理解した上で適切に判断の材料とすることは容易ではありません。

2.以下は、年代別の口述合格率(論文合格者ベース)の推移です。元号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

19歳
以下
20代 30代 40代 50代
以上
23 --- 96.0% 94.2% 87.5% 100%
24 --- 99.2% 91.8% 81.8% 83.3%
25 --- 95.0% 93.4% 75.8% 64.2%
26 --- 92.6% 83.9% 86.2% 87.5%
27 --- 93.0% 92.0% 83.8% 88.2%
28 --- 95.4% 89.1% 91.3% 88.8%
29 100%
(2人)
96.8% 88.0% 87.0% 87.5%
30 100%
(1人)
95.6% 94.1% 93.9% 66.6%
令和元 100%
(1人)
97.9% 93.3% 87.5% 77.7%
令和2 100%
(3人)
97.0% 94.0% 76.0% 85.7%
令和3 100%
(4人)
98.6% 96.0% 87.0% 93.3%

 従来から確立している傾向として、20代が常にトップ、ということがありました(母数の少ない19歳以下を除く。)。今年も、20代トップの傾向に変化は生じていないといえます。口述も、基本的には若手有利といえるでしょう。もっとも、30代以降については、年によってバラ付きが大きく、また、年代ごとの合格率の差も、そこまで大きくはありません。最も合格率の高い20代でも、今年は5人落ちており(※2)、これは不合格者(※3)12人の半数近い割合を占めます。40代が低く見えますが、これはやや母数が小さい(31人中27人合格)ことが影響しています。ですから、論文のような圧倒的な差があるというわけではない。その意味では、年配者だからといって、特別な対策を考える必要はないだろうと思います。
 ※2 今年は、論文合格者の中で3人が受験していない(年代は不明)ため、厳密には、受験していない者を含む可能性があります。
 ※3 受験しなかった者を含みます。

3.以下は、予備試験の最終合格者の平均年齢の推移です。元号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

最終合格者
平均年齢
23 31.57
24 30.31
25 27.66
26 27.21
27 27.36
28 26.16
29 26.90
30 27.43
令和元 26.03
令和2 25.89
令和3 26.28

 平成24年から平成25年にかけて一気に若年化が進み、平成27年まではほぼ横ばい平成28年は、さらに1歳以上若年化しました。そして、平成30年までやや上昇傾向となった後に、令和元年からは再び若年化傾向となっていました。今年は、0.4歳程度ですが、高齢化しています。その主な要因は、大学生や法科大学院生の合格者の増減にあります。以下は、最終合格者全体に占める大学在学中、法科大学院在学中の合格者の割合の推移です。元号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

大学在学中 法科大学院在学中 両者の合計
23 33.6% 5.1% 38.7%
24 31.5% 27.8% 59.3%
25 30.4% 46.7% 77.1%
26 32.0% 47.1% 79.1%
27 39.5% 35.0% 74.5%
28 44.1% 38.0% 82.1%
29 47.9% 24.5% 72.4%
30 39.2% 35.1% 74.3%
令和元 52.7% 24.3% 77.0%
令和2 54.7% 21.9% 76.6%
令和3 53.9% 21.4% 75.3%

 一般に、大学生・法科大学院生は若者が多いので、大学在学中、法科大学院在学中の合格者の割合が増加すると、全体の平均年齢は若年化しやすくなります。また、一般に、法科大学院生より大学生の方が若いので、法科大学院在学中合格者が減少し、それに代えて大学在学中合格者が増加すると、やはり全体の平均年齢は若年化しやすくなるのです。平成26年までの若年化は、主に法科大学院在学中合格者の増加が原因でした。しかし、それ以降は、法科大学院在学中合格者は減少傾向となり、代わって大学在学中合格者が増加傾向となっていきます。昨年は、大学在学中合格者の割合が過去最高となった一方で、法科大学院在学中合格者の割合は、平成24年以降で最低となりました。今年は、法科大学院在学中合格者の減少幅が小さくなるとともに、大学在学中合格者の増加にはブレーキがかかり、減少に転じています。今年の若干の高齢化は、これらを反映しているといえるでしょう。それでも、合格者の半数以上を大学生が占める状況に変わりはありません。
 令和元年以降、大学生5割強、法科大学院生2割、その他3割弱という感じで推移しています。今後も、このくらいの割合で推移する可能性がそれなりにありそうです。そうなると、合格者の平均年齢も横ばいで推移することになりやすいでしょう。

戻る