「司法試験令和3年最新判例ノート」を発売しました

 Amazonより、「司法試験令和3年最新判例ノート」を発売しました。
 本書はKindle用電子書籍ですが、Kindle以外のスマホ、タブレット端末やPCからも、下記の無料アプリを使って利用できます。

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【本書の概要】

1.本書は、令和3年に出された最高裁判例のうち、司法試験対策上重要と考えられるものを掲載したものです。

2.最新判例は、短答式試験において、その判示内容の正誤が問われることがあるだけでなく、論文式試験においても、事案や問題意識の類似した問題が出題される場合があります。論文式試験で最新判例を素材にした出題がされた場合、その判例を全く知らないと、これまでに考えたことのない論点を現場で考えることになります。頭の中が真っ白になって、時間をロスしたり、的外れな解答をしてしまいがちです。判例があることを知っていれば、現場での迷いが少なくなり、自信を持つことができるでしょう。答案構成に掛かる時間を節約できたり、精神的な負担を軽減することができるわけです。判例の内容を詳しく覚えていなくても、大体の問題意識を知っていれば、解答の方向性を誤る可能性は格段に低くなります。
 最新判例については、「しばらくは出題されないだろう。」と思っている人もいるようです。しかし、平成28年司法試験の刑事系第2問では、最決平27・5・25と類似の事案が出題され、同判例が判示した論点が直接に問われましたし、令和3年司法試験刑事系第1問では、最決令2・9・30と問題意識を共通にする出題がなされています。本書に収録した令和3年の判例との関係でいえば、令和4年の論文式試験で出題されてもおかしくないといえるでしょう。
 本書では、上記のような観点から、令和3年に出された判例のうち、一度目を通しておくと役に立つだろうと思われるものを選んで収録しました。憲法5、行政法3、民法8、商法2、民訴法3、刑法3、刑訴法3の合計27の判例を収録しています。各判例には、重要度に応じてAAからCまでのランクを付しました。もっとも、令和3年に関しては、AAランクに該当するものはありません。原則として法廷意見(多数意見)のみを収録していますが、特に重要なものについては、個別意見についても収録しています。

3.判例の原文には、本質的理解には必要のない細かい記述が含まれています。これは、内容の正確性、特定性を確保するために必要な記述です。しかし、そのような記述があるために、何度読んでも判旨の全体像が理解できないまま、挫折してしまう、ということが起きがちです。他方で、安易に要約されたものに頼っていると、原文に目を通していればしないような大きな誤解をしてしまうおそれがあります。そこで、本書では、骨格読み(スケルトン・リーディング)の手法を用い、基本的に原文をそのまま掲載しつつ、本質的理解に必要な部分に下線を付して太字とし、その部分だけを繋いで目を通せば、概要をつかめるようにしています。まずは下線・太字部分だけに目を通し、詳細が気になった場合に、前後を注意して読み直すと、効率良く理解できるでしょう。

4.最新判例については、「とにかくそんな判例がある。」ことを知ることが重要です。詳細な解説は、かえってその妨げとなるおそれがあります。「判例が言っていたのか、解説における学者の見解だったのかわからなくなった。」等というのは、詳細な判例解説を読んでしまったために生じる混乱です。もっとも、最新判例の中には、原文だけを読んでも受験生には意味がわかりにくいものもあります。そこで、本書では、適宜、参照条文・参照判例を付すとともに、判例自体の意味を理解するのに必要であると思われる点については、「※注」を付して、説明を補足しています。

5.判例を学習する際、ただ漫然と目を通しても頭に入ってこない、という人が多いと思います。与えられた文字を読む場合には、どうしても脳は受動的となり、活発に働かなくなるからです。これに対し、質問に対する答えを考える場合には、脳は解答を探そうと活発に働きます。そのため、急に理解が進むようになるのです。そこで、本書では、各判例の理解のポイントとなる部分について、一問一答形式のチェックテストを設けています。スマホやタブレット端末での操作になじむよう、問題の次のページに解答に対応する判示部分を再掲しています。直前に見たばかりの判旨でも、チェックテストで指摘されたポイントを意識していないと、頭に入っていないことに気が付くと思います。同時に、特定のポイントを意識して解答を考えてから同じ判旨を見ると、見え方が違うことにも気が付くでしょう。

6.論文対策として、多くの人が準備しているのが、論証です。論文式試験は、時間との戦いです。論証は、試験の現場で表現ぶり等に悩むことなく書けるように事前に準備しておくことによって、貴重な時間を節約するためのものです。最新判例の論証は、必須とまではいえませんが、あると便利であることも確かです。そこで、本書の末尾には、付録として、論証化して整理しておくと論文で役に立つと思われる判例について、判旨等を論証化した論証例集を収録しました。

7.なお、本書では、判決・決定のいずれにおいても、「判旨」と表記しています。「裁判所の判断の要旨」ないしは「裁判要旨」の略称と考えておけばよいでしょう。市販されているテキスト等の中には、決定の場合に「決旨」と表記するものがあります。これは、「判旨」とは判決の要旨を、「決旨」とは決定の要旨を指すと理解しているからです(このような用例によれば、命令の場合は「命旨」となるのでしょうか。)。しかし、そのような使い分けに意味があるとは思われません。決定のときに限って、判例を「決例」としたり、判示を「決示」などとしないのと同様です。最高裁のHPでも、「裁判要旨」の表記が用いられています。

8.本書が、受験生の方々の最新判例の学習に少しでも役立てば幸いです。

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