司法試験委員会第176回会議において、検証担当考査委員による令和4年司法試験の検証結果が報告されています。
(司法試験委員会第176回会議議事要旨より引用。太字強調は筆者。) (1) 令和4年司法試験の検証結果について(報告・協議) (中略) ・短答式試験については、問題文の字数・ページ数等の分量や設問ごとの正答率等の難易度において近年の短答式試験とほぼ同水準であり、合計点の平均点についても同様に高い水準を維持し、外部からも総じて高い評価を得るなど、いずれの科目についても基本的知識を問う出題傾向で安定しており、引き続き、このような出題方針を継続することが望ましいとされた。 ・論文式試験については、過去の試験の検証を踏まえ、問題作成に当たり一層の工夫がなされ、全体として高評価を得たところであるが、一部の科目分野については、なお出題論点等の分量や難易度等についてより一層の工夫が必要であるとの意見が出されるなどしたところであり、引き続き、受験者に対して過度に事務処理能力を求める結果とならないよう、問題文、資料、設問の分量について十分に配慮しつつ、受験者の事例解析能力、論理的思考力、法解釈・法適用能力等を適切に判定することができるよう工夫することとされた。 ・出題の趣旨及び採点実感については、引き続き、出題の趣旨・採点実感の公表を通じて、受験者の学習の指針となるような有効かつ必要十分な情報発信に努めることとされた。 ・そのほか試験の在り方全般について意見交換を行った上、今回の検証結果を今後の司法試験に適切に反映させるとともに、今後とも司法試験が適正に実施されるよう、検証方法にも工夫を加えながら検証を継続していくことが有用であるとの認識で一致した。 (引用終わり) |
短答・論文ともに、例年どおりの内容です。
短答は、現状維持で全然問題ないという内容ですから、今年もこれまでどおりの出題傾向が維持されるでしょう。
論文については、「一部の科目分野については、なお出題論点等の分量や難易度等についてより一層の工夫が必要」、「過度に事務処理能力を求める結果とならないよう、問題文、資料、設問の分量について十分に配慮しつつ」、「工夫する」と書いてある。これだけを単体でみると、「今年は劇的に問題文が短くなるのでは」と思ってしまいそうです。しかし、これはもう毎年のように言われ続けていることです。
(「司法試験委員会会議(第131回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。) 平成28年司法試験の検証の経過及び結果について,検証担当考査委員から報告がなされ,これを踏まえて協議を行った。 (中略) 2 論文式試験については,必須科目に関し,出題における事例の分量及び設問の個数が増大しつつあることから,受験生に過度に事務処理能力を求めるのではなく,事案分析能力・論理的思考力等の能力を適切に判定することができるよう今後一層留意する (引用終わり) (「司法試験委員会会議(第138回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。) (3) 平成29年司法試験の検証結果について(報告・協議) (中略) ・
論文式試験については,必須科目・選択科目とも,問題の内容に関し,総じて高い評価が示され,問題の分量に関しても,多くの必須科目において前年より減少するなど,平成28年司法試験の一連の検証が反映されたものとなったとの評価で一致した。他方で,一部の科目分野において,なお分量が多いのではないかなどの指摘もあった。 (引用終わり) (「司法試験委員会会議(第146回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。) (1) 平成30年司法試験の検証結果について(報告・協議) (中略) ・ 論文式試験については,前年試験の検証結果も踏まえるなどして,問題作成に当たり一層の工夫がなされ,基本的知識,論理的思考力,判断枠組みを事案に当てはめる能力等の様々な能力を問う出題であることなどを理由に高い評価が示されるなど全体として高評価を得たところであるが,一部の科目分野については,なお出題論点等の分量や難易度等について改善が必要であるとの意見が出されるなどしたところであり,引き続き,受験者に対して過度に事務処理能力を求める結果とならないよう,問題文,資料,設問の分量について十分に配慮しつつ,受験者の事例解析能力,論理的思考力,法解釈・法適用能力等を適切に判定することができるよう工夫することとされた。 (引用終わり) (「司法試験委員会会議(第155回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。) (2) 令和元年司法試験の検証結果について(報告・協議) (中略) ・ 論文式試験については,前年の試験の検証を踏まえ,問題作成に当たり一層の工夫がなされ,全体として高評価を得たところであるが,引き続き,他の科目分野における工夫やその成果のうち特に有用なものを参考にするなどして,受験者に対して過度に事務処理能力を求める結果とならないよう,問題文,資料,設問の分量について十分に配慮しつつ,受験者の事例解析能力,論理的思考力,法解釈・法適用能力等を適切に判定することができるよう工夫することとされた。 (引用終わり) (「司法試験委員会会議(第170回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。) (2) 令和3年司法試験の検証結果について(報告・協議) (中略) ・論文式試験については、過去の試験の検証を踏まえ、問題作成に当たり一層の工夫がなされ、全体として高評価を得たところであるが、一部の科目分野については、なお出題論点等の分量や難易度等についてより一層の工夫が必要であるとの意見が出されるなどしたところであり、引き続き、受験者に対して過度に事務処理能力を求める結果とならないよう、問題文、資料、設問の分量について十分に配慮しつつ、受験者の事例解析能力、論理的思考力、法解釈・法適用能力等を適切に判定することができるよう工夫することとされた。 (引用終わり) ※ なお、令和2年司法試験については、試験の実施延期により検証が実施できなかった(「司法試験委員会会議(第165回)議事要旨」参照)。 |
以下は、司法試験の平成27年以降の必須科目ごとの頁数(表紙を除く。)の推移です。
憲法 | 行政 | 民法 | 商法 | 民訴 | 刑法 | 刑訴 | |
平成27 | 2 | 8 | 4 | 4 | 4 | 2 | 4 |
平成28 | 4 | 12 | 3 | 3 | 5 | 2 | 4 |
平成29 | 4 | 7 | 5 | 4 | 3 | 3 | 4 |
平成30 | 5 | 6 | 3 | 3 | 4 | 3 | 4 |
令和元 | 4 | 7 | 2 | 4 | 4 | 2 | 5 |
令和2 | 4 | 7 | 4 | 3 | 3 | 2 | 2 |
令和3 | 4 | 7 | 3 | 4 | 4 | 3 | 4 |
令和4 | 3 | 7 | 3 | 4 | 3 | 2 | 4 |
平成28年に、「出題における事例の分量及び設問の個数が増大しつつある」と初めて指摘されて以降、行政法で8頁以上の出題はなくなりました。その意味では、検証結果の指摘はそれなりに反映されているといえそうです。もっとも、その後も同様の指摘を受けている割には、劇的な変化はみられません。今年になって劇的に変化する可能性は、低いでしょう。なので、論文に関しても、ここ数年と同様の傾向に沿った出題がされると考えておけばよいと思います。