大阪市ヘイトスピーチ対処条例事件判例については、同条例の立法技術上の不備と、それに対応してなされたさりげない判示の意味が重要なのですが、この点に触れた評釈は筆者の知る限りほとんどありません。ジュリスト2023年2月号(No.1580)99~105頁の高瀬保守裁判官(元調査官)の解説は、この点を正面から説明してくれている数少ない例の1つです(とりわけ、104頁「Ⅳ1(2)」を参照)。もっとも、受験生がいきなりこれを読んでも、「どうしてそうなるの?」と思うかもしれません。当サイト作成の「司法試験令和4年最新判例ノート」の同判例掲載部分のチェックテスト第2問解答の補足説明等において、より具体的にこの点を説明していますので、参考にしてみてください。
どうしてこのようなことをわざわざ紹介したかというと、現在の論文における憲法の出題では、合憲性判断の対象となっている仮想法令を普通に適用すると、どのような結果となるか、という点を正しく読み解かないと、そもそも適切な憲法上の論点を導出できない、というものが多いからです。憲法の知識以前に、条文の正しい読み方を体得しておく必要がある。上記判例は、その点を学ぶ貴重な事例です。まず、同判例で問題となった条例(「司法試験令和4年最新判例ノート」に必要な条文はそのまま掲載されています。)を自分の目で読んでみて、立案担当者が主に想定していた適用対象以外に、どのようなものが適用対象となり得るか、考えてみるとよいでしょう。その上で、判例の原文や上記解説等を読めば、試験の現場で条文を読み解く力になるだろうと思います。