答案を書くことで覚える範囲がわかる

 事例問題を解いて、答案を書く、という勉強を繰り返していると、「これは別に覚えようとしなくても自然に書けちゃうな。」というものと、「これは意識して覚えようとしないと書けないな。」というものがあることに気が付くでしょう。前者については、敢えて覚えようとする必要はありません。論証集等のインプット教材を漫然と回す勉強法だと、前者のようなものも、「覚えてないか不安だから覚えよう。」という感じになってしまう。これは無駄なことです。これには個人差があるので、実際に事例問題を解いて、答案を書く、というプロセスを経て体感する必要があります。
 後者、すなわち、「これは意識して覚えようとしないと書けないな。」というものの中には、市販の論証集等ではフォローされていない規範等が結構あることにも気が付くでしょう(市販の論証集は収録論点が少な過ぎる。)。このようなものは、当然ですが論証集を回す勉強法ではフォローできません。例えば、刑法の因果関係については、「行為の危険が結果に現実化したか」みたいな規範は普通は覚えようとしなくたってすぐ書けるよね、という人が多いでしょうが、実際には、直接実現型、間接実現型等の類型に応じた参照判例と下位規範の方が重要で、これは覚えていないと自然には端的な表現が思い付かないかもしれない。それで、復習の際に、「この場合ってどう書けばいいの?」と思って手元の論証集等を見ても、書いていなかったりする(いわゆる予備校通説は、旧試験時代の前田説(3要素説)が多いからです。)。そんなときは、「書いてないじゃない!」などと怒ったりするのではなく、その本をそっと閉じて他に書いてありそうな教材を確認すればよい。例えば、当サイト作成の司法試験定義趣旨論証集(刑法総論)であれば、「行為後の被害者の不適切な行動と危険の現実化」、「行為後の行為者自身の行為と危険の現実化」、「行為後の第三者の行為と危険の現実化」、「複数人の過失の競合と危険の現実化」、「行為後の第三者の行為により死期が早まった場合」、「監禁後の介在事情と危険の現実化」の各項目で答案にそのまま書ける下位規範を確認できます。他の教材にも書いていなければ、自分なりに、「次にこれが出たら、こんな感じに書こう。」と決めておく。内容を完全に理解できなくても、答案にどんな感じで書くかが決まれば、それ以上悩む必要はありません。
 頻出の重要論点と、そうでない論点との区別も、事例問題を解いて、答案を書く、という勉強を繰り返していると、勝手にわかります。頻出の論点は、解いているうちに何度も目にするからです。事例を見ただけで、「またかよ。それ前にも見た。」という感じになることでしょう。そして、何度か書けない経験をすれば、「あーこれ前も書けなかったやつだ。悔しい。」という意識が生じます。脳は、必要性を感じないと覚えようとしないものです。実際に問題を解いて、「これは覚えてないとダメなやつだ。」、「書けなかった。悔しい。」という経験をし、意識をすることによって、覚えやすくなる。こうして、頻出の重要論点は、「これは重要論点だから覚えよう。」などと考えなくても、自然と覚えるようになっていきます。

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