(用途地域指定事件判例より引用。太字強調は筆者。) 都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法48条7項、52条1項3号、53条1項2号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法6条4項、5項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があつたものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もつとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとつても格別の不都合は生じないというべきである。 (引用終わり) |
(浜松市事件判例より引用。太字強調は筆者。) 市町村は,土地区画整理事業を施行しようとする場合においては,施行規程及び事業計画を定めなければならず(法52条1項),事業計画が定められた場合においては,市町村長は,遅滞なく,施行者の名称,事業施行期間,施行地区その他国土交通省令で定める事項を公告しなければならない(法55条9項)。そして,この公告がされると,換地処分の公告がある日まで,施行地区内において,土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築,改築若しくは増築を行い,又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくはたい積を行おうとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならず(法76条1項),これに違反した者がある場合には,都道府県知事は,当該違反者又はその承継者に対し,当該土地の原状回復等を命ずることができ(同条4項),この命令に違反した者に対しては刑罰が科される(法140条)。このほか,施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなった者は,書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に申告しなければならず(法85条1項),施行者は,その申告がない限り,これを存しないものとみなして,仮換地の指定や換地処分等をすることができることとされている(同条5項)。 (引用終わり) |
(第2種市街地再開発事業計画決定事件判例より引用。太字強調は筆者。) 再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法26条4項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。しかも、この場合、都市再開発法上、施行地区内の宅地の所有者等は、契約又は収用により施行者(市町村)に取得される当該宅地等につき、公告があった日から起算して30日以内に、その対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設の部分の譲受け希望の申出をするかの選択を余儀なくされるのである(同法118条の2第1項1号)。 (引用終わり) |
(医療法勧告(病床数削減)事件判例における藤田宙靖補足意見より引用。太字強調及び※注は筆者。) 当審の先例が示して来た一般的な考え方、すなわち、「行政庁の処分とは……(略)……公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」……(略)……とする考え方(参照、最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁(※注:ごみ焼却場事件判例を指す。)他。以下この考え方を、「従来の公式」と称する。)との関係について、若干の補足をしておくこととしたい。 (中略) 「従来の公式」においては、行政事件訴訟法3条にいう「行政庁の処分」とは、実質的に講学上の「行政行為」の概念とほぼ等しいものとされているものであるところ、このような行為のみが取消訴訟の対象となるとされるのは、取消訴訟とはすなわち、行政行為の公定力の排除を目的とする訴訟である、との考え方がなされているからに他ならない。そしてその前提としては、行政活動に際しての行政主体と国民との関わりは、基本的に、法律で一般的に定められたところを行政庁が行政行為によって具体化し、こうして定められた国民の具体的な権利義務の実現が強制執行その他の手段によって図られる、という形で進行するとの、比較的単純な行政活動のモデルが想定されているものということができる。しかしいうまでもなく、今日、行政主体と国民との相互関係は、このような単純なものに止まっているわけではなく、一方で、行政指導その他、行政行為としての性質を持たない数多くの行為が、普遍的かつ恒常的に重要な機能を果たしていると共に、重要であるのは、これらの行為が相互に組み合わせられることによって、一つのメカニズム(仕組み)が作り上げられ、このメカニズムの中において、各行為が、その一つ一つを見たのでは把握し切れない、新たな意味と機能を持つようになっている、ということである。……(略)……「従来の公式」は、必ずしもこういった事実を前提としているものとは言い難いのであって、従って、本件においてこれを採用するのは、適当でないものというべきである。 (引用終わり) |
(東京地判平20・12・25より引用。太字強調は筆者。) 新たな施行地区の編入を伴わない変更の認可については、それが公告されたとしても、建築行為等の制限や宅地等の処分制限、さらに権利変換に関する選択の強制という各効果が新たに生ずるものではなく、当初の事業計画等の認可による効果が残存する状態にあると解するほかはない。以上によれば、事業計画等の認可の公告がされることによって……(略)……第一種市街地再開発事業の手続に従って権利変換処分を受けるべき地位に立たされた者については、その後、新たな施行地区の編入を伴わない事業計画等の変更の認可の公告がされたとしても、そのことだけでは、新たな法的効果が及ぶことはない。したがって、上記のような変更の認可は、施行地区内の宅地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものとはいえず、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないと解するのが相当である。 (引用終わり) |
(たぬきの森事件判例より引用。太字強調は筆者。) 建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして……(略)……安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。 (引用終わり) |