1.令和6年司法試験民事系第2問設問1。問題文を読んでいて、「あれっ?」と思った人がいたかもしれません。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 4.令和3年10月20日、本件臨時株主総会1が開催され、本件各議題についての乙社提案の各議案は、いずれも出席した株主の議決権の約75%の賛成により可決した(以下「本件決議1」という。)。本件臨時株主総会1においては、出席した株主の議決権の数は、例年の定時株主総会よりも約30%増加し、行使された議決権のうち議案に賛成したものの割合も、例年の定時株主総会において行使された議決権のうち甲社が提案した議案(いずれも可決された。)に賛成したものの割合よりも高いものであった。なお、本件臨時株主総会1において、甲社の株主が返送した議決権行使書面には、賛否の欄に記入をしていない白票は存在しなかった。 (引用終わり) |
「は?商品券で書面投票が増えたんじゃないの?なんで出席株主の議決権が増えてんだよ。」と思った人は、会社法の条文に慣れ親しんでいない人です。
(参照条文)会社法311条(書面による議決権の行使) 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。 2 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。 3~5 (略) |
実際に議場に足を運んでいなくても、書面投票をすれば、それは、「出席した株主の議決権」に参入されるのです。だから、商品券で書面投票が増えたことによって、「出席した株主の議決権」が増えるわけですね。
2.上記のことを知らないと、現場で一瞬思考が止まります。中には、「増加したのは出席株主の投票なので、商品券の影響ではない。」なんて書いてしまった人もいたかもしれません。そこまではいかなくても、思考停止して無駄に悩んだ時間はロスになる。とりわけ、会社法は技巧的な読み方をする場面が多く、法令マニアにはたまらないのですが、受験生は別の意味でたまりません。会社法は、普段から特に条文を確認するクセを付けるべきでしょう。ちなみに、当サイト作成の『司法試験定義趣旨論証集会社法【第2版】』では、各論点に関係する条文を掲載し、六法で確認しなくてもすぐに関連条文を確認できるようになっています。また、太字・下線を付して、ポイントが分かるようにもなっています。参考にしてみてください。