令和6年予備試験民訴法の参考判例等

(参照条文)民事訴訟法

157条(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 (略)

167条(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
 準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。

174条(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
 第167条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

最判昭32・12・24より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 所論修繕費償還請求と賃料との相殺の主張は、昭和30年7月18日付準備書面において主張され、上告人はこれを同日の口頭弁論において陳述したこと記録上明らかである。かゝる主張は、論旨においても、修繕個所が散在し損害の算定に非常な困難を極めたといつていることによつて窺いうる如く、その証拠調には経験上多大の日子(※注:「日子」とは、日数の意味。)を要するから、「訴訟ノ完結ヲ遅延セシムベキコト」(民訴139条(※注:現行の157条1項に相当する。)は明らかであり(しかもこの主張自体不充分なばかりでなく、証拠の申出もされていない)、第二審において、すでに判決に熟した時期に始めてかゝる複雑な主張をすることは少くとも重大な過失があるものということができる。原審がこの主張を時機に遅れたものとして却下したのは相当であり、論旨は理由がない。

(引用終わり)

最判昭30・4・5より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 所論引用の大審院判例(昭和8年2月7日判決)が、控訴審における民訴139条(※注:現行の157条1項に相当する。)の適用について、第一審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であつても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであつて、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。
 記録によつて調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第2回の口頭弁論において(第1回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第一審第1回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第一審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第一審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもつて、上告人が第二審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできないしかし時機に遅れた防禦方法なるが故に上告人の右主張を却下するためには、その主張を審理するために具体的に訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来する場合でなければならないこと前示のとおりであるところ、借地法第10条の規定による買取請求権の行使あるときは、これと同時に目的家屋の所有権は法律上当然に土地賃貸人に移転するものと解すベきであるから、原審の第2回口頭弁論期日(実質上の口頭弁論が行われた最初の期日)において、上告人が右買取請求権を行使すると同時に本件家屋所有権は被上告人に移転したものであり、この法律上当然に発生する効果は、前記買取請求権行使に関する主張が上告人の重大なる過失により時期に後れた防禦方法として提出されたものであるからといつて、なんらその発生を妨げるものではなく、またこのため特段の証拠調をも要するものではないから、上告人の前記主張に基き本件家屋所有権移転の効果を認めるについて、訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来するものとはいえない。従って訴訟の完結を遅延せしめることを理由として、前記所有権移転の効果を無視し、なんらの判断をも与えずに判決することは許されないものといわなければならない。
 以上のとおりであるから、右第2回口頭弁論期日において結審することなく第6回の口頭弁論期日において弁論を終結したこと記録上明らかな本件において前記上告人の主張を時機に後れた抗弁として排斥し、本件家屋所有権移転の効果を無視したものと認められる原判決は、民訴139条の解釈適用を誤つた違法があるを免れない。

(引用終わり)

最判昭46・4・23より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 本件記録によれば、原審は、上告人Aが原審第11回口頭弁論期日(昭和44年9月9日)に提出した所論建物買取請求権に関する主張を、同第12回口頭弁論期日(同年10月23日)に民訴法139条1項(※注:現行の157条1項に相当する。)により却下して弁論を終結し、原判決を言い渡したことが認められ、右却下の決定が右民訴法の規定の定める要件の存在を認めたうえでなされたことも明らかである。
 そして、上告人Aが第一審において口頭弁論期日に出頭せず、本件建物収去、土地明渡等を含む一部敗訴の判決を受けて控訴し、原審第2回口頭弁論期日(昭和42年9月21日)に、抗弁として、同上告人が前借地人から地上の建物を買い受けるとともに、賃貸人の承諾を得て本件土地の賃借権の譲渡を受けた旨主張したが、被上告人ら先代においてこれを争つていたこと、その後証拠調等のため期日を重ねたが、前述のとおり、第11回口頭弁論期日にいたつてようやく建物買取請求権行使の主張がなされるにいたつた等本件訴訟の経過によつてみれば、右主張は、少なくとも同上告人の重大な過失により時機におくれて提出されたものというべきである。原審においては二度和解の勧告がなされたが、口頭弁論期日もこれと平行して進められたのみならず、和解の試みが打ち切られたのちも、第8回以降の口頭弁論期日が重ねられ、上告人Aにおいて十分抗弁を提出する機会を有していたことから考えると、和解が進められていたから前記主張が提出できなかつたという所論は、にわかに首肯することができない。
 つぎに、本件記録によれば、所論建物買取請求権の行使に関する主張は、被上告人らが借地法10条所定の時価として裁判所の相当と認める額の代金を支払うまで、上告人らにおいて本件建物の引渡を拒むために、同時履行等の抗弁権を行使する前提としてなされたものであることを窺うことができるが、所論指摘の各証拠によつては到底右時価を認定するに足りるものとは認められず、かくては右時価に関する証拠調になお相当の期間を必要とすることは見やすいところであり、一方、原審は、本件において、前述のように右主張を却下した期日に弁論を終結しており、さらに審理を続行する必要はないとしたのであるから、ひつきよう、上告人Aの前記主張は、訴訟の完結を遅延せしめるものであるといわなければならない。
 それゆえ、原審が右主張を民訴法139条1項により却下したのは相当である。最高裁判所昭和28年(オ)第759号同30年4月5日第三小法廷判決(民集9巻4号439頁(※注:前掲最判昭30・4・5を指す。))は、事案を異にするので、本件に適切ではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

(引用終わり)

(大阪高判平7・11・30より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 被控訴人Yの相殺の抗弁は、当審における第3回口頭弁論期日において始めて主張されたものであるところ、右期日までには、当事者双方の主張立証はほぼ尽くされていたところ、控訴人は、その自働債権の存在及び額を争っており、それを確定するためには、他の連帯保証人の有無、その負担部分等について、さらに主張立証を要し、これがために訴訟の完結が遅延することは明らかである。そして、被控訴人らは、一審以来弁護士である訴訟代理人に委任して本訴を追行してきている上、甲30号証の1によると、控訴人(※注:被控訴人の誤記と思われる。)は、平成3年に、本訴の訴訟代理人を代理人として、相殺の抗弁の主張事実と共通する事実を主張して他の連帯保証人に対して求償請求をする訴訟を提起しており、右抗弁をより早い時期において主張することが困難であったことをうかがわせる事情は見当たらないから、右抗弁の提出が当審における第3回口頭弁論期日まで遅れたことは被控訴人の故意又は重大な過失によるものということができる。したがって、右相殺の主張は、民事訴訟法139条1項(※注:現行の157条1項に相当する。)の規定により、これを却下する

(引用終わり)

最判昭40・4・2より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 相殺は当事者双方の債務が相殺適状に達した時において当然その効力を生ずるものではなくて、その一方が相手方に対し相殺の意思表示をすることによつてその効力を生ずるものであるから、当該債務名義たる判決の口頭弁論終結前には相殺適状にあるにすぎない場合、口頭弁論の終結後に至つてはじめて相殺の意思表示がなされたことにより債務消滅を原因として異議を主張するのは民訴法545条2項(※注:現行の民事執行法35条2項に相当する。)の適用上許されるとする大審院民事連合部明治43年11月26日判決(民録16輯764頁)の判旨は、当裁判所もこれを改める必要を認めない。

(引用終わり)

最判平7・12・15より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時までに借地法4条2頃(※注:現行の借地借家法13条1項に相当する。)所定の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がされ、同判決が確定した場合であっても、賃借人は、その後に建物買取請求権を行使した上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができるものと解するのが相当である。けだし、(1) 建物買取請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃借人の建物収去義務が消滅するに至るのである、(2) したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当たるものではなく(最高裁昭和52年(オ)第268号同52年6月20日第二小法廷判決・裁判集民事121号63頁)、訴訟法上も、前訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはないと解すべきものである、(3) そうすると、賃借人が前訴の事実訴口頭弁論終結時以後に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法35条2項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当するものというべきであるからである。

(引用終わり)

(大阪地判昭36・6・12より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 被控訴代理人は、控訴代理人が当審に至つて初めて被控訴人の賃料相当額に関する主張を否認したのは時機に遅れて防禦方法を提出したものであるとして右否認の主張の却下を求めるので、まずこの点についてみると、相手方当事者の主張する事実を単純に否認することも、その結果その事実の有無について立証の必要を生ぜしめ、訴訟の終結を遅延させるに至り得る点で、抗弁を新たに主張することと何等変りがない。従つてかかる否認も一つの防禦方法の提出として民事訴訟法第139条(※注:現行の157条1項に相当する。)の制限を受けると解すべきこと勿論であり、かかる否認が原審においては言うまでもなく当審においても控訴提起後6月と13日を経過した昭和35年5月24日の当審第3回口頭弁論期日に一旦口頭弁論が終結するに至るまで控訴人もしくは控訴代理人によつてなされることなく、右の口頭弁論終結後、昭和35年9月5日付をもつて口頭弁論再開の申立をするとともに、再開後の同年10月8日、第5回口頭弁論期日においてはじめて主張されるに至つたことは当裁判所に顕著な事実であつて、右の事実からすればこの否認の主張が控訴人の少くとも重大な過失に基き時機に遅れて提出されたことを認めるに難くないのみならず、従来賃料相当額の点に関して何等の立証がなされていなかつた本件においては、かかる否認の結果訴訟の終結が遅延するに至ることも明らかであつたといわなければならない。しかしながら、当事者の故意又は重大なる過失に基いて時機に遅れて攻撃又は防禦の方法が提出され、これがため訴訟の終結が遅延すると認められる場合にも、当該訴訟の経過全般に照らしてかかる攻撃又は防禦の方法の提出を制限すべきでない事情が認められる場合にはこれを却下しないことも許されると解すべきところ、本件訴訟の経過をみると、控訴人は原審において賃借権の存在の点の主張のみに防禦の重点を置き、賃料相当額についての被控訴人の主張を争わなかつたため、原判決において賃料相当額の点については自白をしたものとみなされるに至つたことが弁論の全趣旨から明らかであつて、この事実からすれば、控訴人は当審においてもその抗弁が容れられない場合あるを慮つて賃料相当額に関する被控訴人の主張を争うに至つたものと推認すべく、かかる事情の下にあつて直ちに民事訴訟法第139条第1項を適用して賃料相当額を争う旨の主張の提出を却下することは相当でないと思料されるので、被控訴人の申立は却下すべきものである。

(引用終わり)

最判平14・1・22より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 旧民訴法78条,70条(※注:現行の53条4項、46条に相当する。)の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条(※注:現行の42条に相当する。)にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成12年(許)第17号同13年1月30日第一小法廷決定・民集55巻1号30頁参照)。
 また,旧民訴法70条所定の効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく,その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和45年(オ)第166号同年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1583頁参照),この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし,ここでいう判決の理由とは,判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい,これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして,その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。

(引用終わり)

(仙台高判昭55・1・28より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 原判決は、次のとおり説く
 「訴訟告知の効果は、被告知者において告知者に補助参加する利益を有する場合に、民事訴訟法70条(※注:現行の46条に相当する。)に規定する参加的効力を受けることにほかならない。ところで、参加的効力は、補助参加人が被参加人を勝訴させることによつて自己自身の利益を守る立場にあることを前提として、被参加人敗訴の場合に、その責任を分担させようとするものであるから、訴訟告知の場合に被告知者が参加的効力を受けるのは、被告知者において告知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害が一致し、そうすることを期待できる立場にあることが前提となるものというべく、そのような場合に、右のように告知者と利害が一致し協同しうる争点に限つて、訴訟告知の効果が被告知者に及ぶものと解すべきである。」
 しかし、訴訟告知の制度は、「被告知者において告知者に補助参加する利益を有する場合」のために設けられたものと解すべきではない。訴訟告知の制度は、告知者が被告知者に訴訟参加をする機会を与えることにより、被告知者との間に告知の効果(民事訴訟法78条(※注:現行の53条4項に相当する。))を取得することを目的とする制度であり、告知者に対し、同人が係属中の訴訟において敗訴した場合には、後日被告知者との間に提起される訴訟において同一争点につき別異の認定判断がなされないことを保障するものである。したがつて、同法76条(※注:現行の53条1項に相当する。)にいう「参加をなしうる第三者」に該当する者であるか否かは、当該第三者の利益を基準として判定されるべきではなく、告知者の主観的利益を基準として判定されるべきである。
 次に原判決は、参加的効力を規定する同法78条は「補助参加人が被参加人を勝訴させることによつて自己自身の利益を守る立場にあることを前提」とすると説く。右の説示は訴訟告知に基づかず、単純に同法64条により補助参加をした者と被参加人との間については妥当であろうが、訴訟告知者と被告知者との間については必らずしも妥当しない。けだし、前述のとおり、被告知者が参加をなしうる第三者であることは告知者がその主観において決定するものであり、右の主観が客観的に理由あるものであれば、当該訴訟告知は有効であつて、被告知者の主観上告知者のために参加すべき場合であることを要しないからである。
 したがつて、「被告知者において告知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害が一致し、そうすることを期待できる立場にある」場合にのみ被告知者に対して参加的効力が及ぶとする原判決の理論は、採用することができない。……(略)……。
 もとより、係属中の訴訟における争点であつても、被告知者が当該訴訟に参加してその主張、立証をすることができない法律関係又は事実については、かかる事項についての判決理由中の認定判断の効力を被告知者に及ぼすことは衡平に反するものといれなければならない。しかし、被告知者は必ず告知者のために参加すべき法律上の義務を負うものではなく、被告知者の主観による利害が告知者の主観による利害と反するときは、敢て告知者の相手方たる当事者のために補助参加し、又は民事訴訟法71条、73条もしくは75条(※注:現行の47条、49条、52条に相当する。)による参加をすることによつて、自己に有利な主張、立証を尽くすことができるのである。したがつて、被告知者は、かような参加が可能であるにもかかわらず参加を怠つた場合には、訴訟告知により参加の機会を与えられながらその権利を行使しないことによる不利益を受けても衡平に反するとは言えないものといわなければならない。

(引用終わり)

(東京地判平元・7・17より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 Xと本件建物の所有者Zとの間にZが原告となり、Xを被告として建物の滅失によるX占有部分の明渡等を求める訴(東京地方裁判所昭和61年(ワ)第11247号)が提起され、Xは反訴としてZの賃貸人としての債務不履行、土地工作物責任による損害賠償請求を起こしたところ、Zが本件電灯線が土地工作物にあたることを争うとともに、本件出火は専らYの本件電灯線の管理不注意にあると主張して争ったので、第7回の口頭弁論期日が終わった段階でXからYに対し、右反訴において占有者であるYが責任を負うからZに責任がないとしてXが敗訴した場合、Yに対しその責任を追求すべき関係にあるとして訴訟告知がなされ、その後、ZとX間の訴訟は昭和63年6月27日に判決が言い渡され、そのころ確定し、その判決において本訴はZが勝訴し、反訴もZには債務不履行の帰責性がなく、また、本件電灯線は土地工作物にあたらないとしてZが勝訴した……(略)……。
 そこで、訴訟告知の効力について判断するに、訴訟告知によって、被告知者が民訴法70条(※注:現行の46条に相当する。)の参加的効力を受けるのは、実際に訴訟参加し訴訟追行をした場合と異なり、実体関係に基づく協力が法的に期待される場合でその不利益にのみ作用すると解されるから、被告知者が補助参加をなし得る場合に限ると解すべきである。
 Xが右反訴においてYに訴訟告知をしたのは、土地工作物の占有者であるYに注意義務違反があったから土地工作物の所有者たるZは責任を負わないとされた場合にその判断につきYに参加的効力を及ぼすためであって、本件電灯線が土地工作物にあたらないとされた場合にその判断につきYに参加的効力を及ぼすためではない。右反訴においてYに注意義務違反がなかったとする点ではXとYは訴訟追行を協同にする立場にあるが、本件電灯線が土地工作物にあたるとする点では、土地工作物とされれば予想される後訴でYは注意義務を尽くしたことを立証しなければならず、土地工作物でないとされればYは失火に関する法律の適用により重過失がなければ責任を負わないから、本件電灯線が土地工作物であるとする点についてはXとYは訴訟追行を協同にする立場にはなく、補助参加の関係にはない
 そして前記反訴判決においては、Yの注意義務違反については判断がなく、本件電灯線が土地工作物にあたらないとの判断のみがなされているのであるから、この点についてXY間には訴訟告知の効果は生じないというべきである。

(引用終わり)

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