(参照条文)犯罪捜査規範 104条(実況見分) 110条(遺留物の領置) |
(最大判昭36・6・7より引用。太字強調は当サイトによる。) 憲法35条は、同33条の場合には令状によることなくして捜索、押収をすることができるものとしているところ、いわゆる緊急逮捕を認めた刑訴210条の規定が右憲法33条の趣旨に反しないことは、当裁判所の判例(昭和26年(あ)第3953号、同30年12月14日大法廷判決、刑集9巻13号2760頁)とするところである。同35条が右の如く捜索、押収につき令状主義の例外を認めているのは、この場合には、令状によることなくその逮捕に関連して必要な捜索、押収等の強制処分を行なうことを認めても、人権の保障上格別の弊害もなく、且つ、捜査上の便益にも適なうことが考慮されたによるものと解されるのであつて、刑訴220条が被疑者を緊急逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場で捜索、差押等をすることができるものとし、且つ、これらの処分をするには令状を必要としない旨を規定するのは、緊急逮捕の場合について憲法35条の趣旨を具体的に明確化したものに外ならない。 (中略)
本件捜索、差押の経緯に徴すると、麻薬取締官等4名は、昭和30年10月11日午後8時30分頃路上において職務質問により麻薬を所持していたAを現行犯として逮捕し、同人を連行の上麻薬の入手先である被疑者B宅に同人を緊急逮捕すべく午後9時30分頃赴いたところ、同人が他出中であつたが、帰宅次第逮捕する態勢にあつた麻薬取締官等は、同人宅の捜索を開始し、第一審判決の判示第一の(一)の麻薬の包紙に関係ある雑誌及び同(二)の麻薬を押収し、捜索の殆んど終る頃同人が帰つて来たので、午後9時50分頃同人を適式に緊急逮捕すると共に、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をとり、逮捕状が発せられていることが明らかである。 (引用終わり) |
(上記最大判昭36・6・7における横田喜三郎意見より引用。太字強調は当サイトによる。) 刑事訴訟法第220条1項は、「被疑者を逮捕する場合において」、「逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること」ができるとしている。「被疑者を逮捕する場合において」といい、「逮捕の現場で」というのは、被疑者が現場にいて、逮捕と同時に捜索や差押を行なうか、すくなくとも逮捕の直前または直後に捜索や差押を行なうことを意味する。被疑者が不在であつて、逮捕ができない場合は、「被疑者を逮捕する場合」とはいえず、まして「逮捕の現場」とはいえない。そのような場合には、第218条にしたがつて、裁判官の令状を求め、それによつて捜索や差押を行なうべきで、令状なくしてこれらのことを行なうことはできない。 (引用終わり) |
(米子強盗事件判例より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。) 所論のうち憲法31条、35条1項違反をいう点は、アタツシユケースをこじ開けた前示B巡査長の行為を警職法に違反するものと認めながら、アタツシユケース及び在中の帯封の証拠能力を認めた原判決の判断は、上記憲法の規定に違反する、というのである。 (引用終わり) |
(参照条文)刑訴法 139条 168条 172条 218条 222条 223条 225条 |
(東京地八王子支判平3・8・28より引用。) 一 本件の主位的訴因は、「被告人は、昭和61年3月3日八王子簡易裁判所において窃盗罪により懲役8月に、同62年11月30日同裁判所において同罪により懲役10月に、平成2年2月8日東京地方裁判所八王子支部において窃盗及び傷害罪により懲役1年4月に各処せられ、いずれもそのころ右各刑の執行を受けたものであるが、更に常習として、平成3年4月22日午後3時15分ころ、東京都西多摩郡<住所略>株式会社ホンダクリオ新東京羽村店において、試乗を口実に、株式会社ホンダリース所有の普通乗用自動車1台(時価320万円相当)を窃取した」というものである。 二 よって、検討するに、前掲各証拠及び甲の司法警察員に対する供述調書、検察官作成の電話聴取書、司法警察員作成の捜査報告書(平成3年4月24日付け)及び犯罪経歴照会結果報告書、判決書謄本(同2年2月8日付け)によれば、左記の事実が認定できる。 記 1 被告人は、昭和62年6月ころ、24時間試乗会を催している東京都国立市内の株式会社ホンダクリオ新東京国立店に行き、同店営業員Bと商談後、ホンダレジェンド2700セダンの試乗を申し込んで約4時間試乗して同車を返還した。その1週間位後、被告人は、再度、同店に行って、今度はホンダレジェンドツードアハードトップの商談をして、その試乗車に乗ったが、被告人は、約定の24時間を経過しても返還せずにこれを乗り回していたため、右Bらが捜し回った末、その回収ができずに警察署へ相談に赴いたが、同署係官からは、右Bが自動車運転免許証等によって試乗をした被告人の氏名等を確認しておらず、また、24時間試乗会であったこと等からその試乗車の乗り逃げが詐欺罪、横領罪或いは窃盗罪のいずれかの判断がつかないため、直ちに犯人を逮捕することなどはできかねる旨説明があった。そのため、右Bらは、警察署へ被害届を提出することを諦めて、独自に右試乗車の捜索を続けていたところ、乗り逃げされてから約1週間後に被告人が右試乗車に乗って走行しているのに遭遇し、漸く被告人から右試乗車を取り戻すことができた。
2 被告人は、その外にも何か所かの自動車販売店で試乗車に乗っているが、それらの時は営業員が添乗していたため、試乗し終えた車両は直ちに回収されている。 (引用終わり) |
(最大判昭27・4・9より引用。太字強調は当サイトによる。) 憲法37条2項は、裁判所が尋問すべきすべての証人に対して被告人にこれを審問する機会を充分に与えなければならないことを規定したものであつて、被告人にかかる審問の機会を与えない証人の供述には絶対的に証拠能力を認めないとの法意を含むものではない(昭和23年(れ)833号同24年5月18日大法廷判決判例集3巻6号789頁以下参照)。されば被告人のため反対尋問の機会を与えていない証人の供述又はその供述を録取した書類であつても、現にやむことを得ない事由があつて、その供述者を裁判所において尋問することが妨げられ、これがために被告人に反対尋問の機会を与え得ないような場合にあつては、これを裁判上証拠となし得べきものと解したからとて、必ずしも前記憲法の規定に背反するものではない。 刑訴321条1項2号が、検察官の面前における被告人以外の者の供述を録取した書面について、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明、若しくは国外にあるため、公判準備若しくは公判期日において供述することができないときは、これを証拠とすることができる旨規定し、その供述について既に被告人のため反対尋問の機会を与えたか否かを問わないのも、全く右と同一見地に出た立法ということができる。そしてこの規定にいわゆる「供述者が……供述することができないとき」としてその事由を掲記しているのは、もとよりその供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。……(略)……尤も証言拒絶の場合においては、一旦証言を拒絶しても爾後その決意を翻して任意証言をする場合が絶無とはいい得ないのであつて、この点においては供述者死亡の場合とは必ずしも事情を同じくするものではないが、現にその証言を拒絶している限りにおいては被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは全く同様であり、むしろ同条項にいわゆる供述者の国外にある場合に比すれば一層強き意味において、その供述を得ることができないものといわなければならない。 (引用終わり) |
(最決昭29・7・29より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。) 証人が、記憶喪失を理由として証言を拒む場合が、刑訴321条1項3号の場合に該当することは、当裁判所の判例の趣旨とするところである―昭和26年(あ)2357号、同27年4月9日大法廷判決、集6巻4号584頁(※注:上記最大判昭27・4・9を指す。)参照。 (引用終わり) |
(大阪高判昭52・3・9より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。) 所論は、刑訴法321条1項2号前段は……(略)……原審決定に示されたような「列挙事由に準ずるに足る全面的供述不能の場合に限られる」と解すべきでなく、凡そ一部分であっても記憶喪失等のため証言できない以上はその部分に限ってでも2号前段が適用されるべきである旨主張するが、同号前段の趣旨にかんがみると、所論の如く要証事実の具体的内容をさらに細分してその一こま宛に区切って証言できなかったかどうかを分別するのは適切でなく、むしろ原審決定のいうように解するのが妥当であって、Vの原審証言に則していえば、被告人甲および同乙の各所為による被害の顛末はともかく証言し得ていることが明らかであって、2号前段列挙事由に準じて考えなければならぬ程の証言不能があるとは到底認め難く、所論Vの検察官調書2通は既にこの点において同号前段の要件を欠くものといわざるをえない。もっとも、記憶喪失による部分的な証言不能のため、その証言内容全体を検察官面前供述と対比し、要証事実について異った認定をきたす蓋然性があると考えられるほどの差異を生ずるに至ったときは、同号後段にいう「相反する供述」または「実質的に異った供述」との要件(以下あわせて相反性という)を具備し同後段により証拠能力を付与されることがある (引用終わり) |
(東京高判平22・5・27より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。) 供述者が公判準備若しくは公判期日において供述することのできないときとしてその事由を掲記しているのは、その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨げるべき障害事由を示したもので、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において検察官調書に証拠能力を認めることを妨げるものではないから、証人が証言を拒絶した場合にも、同号前段によりその検察官調書を採用することができる(最高裁昭和26年(あ)第2357号同27年4月9日大法廷判決・刑集6巻4号584頁(※注:上記最大判昭27・4・9を指す。))。しかし、同号前段の供述不能の要件は、証人尋問が不可能又は困難なため例外的に伝聞証拠を用いる必要性を基礎付けるものであるから、一時的な供述不能では足りず、その状態が相当程度継続して存続しなければならないと解される。証人が証言を拒絶した場合についてみると、その証言拒絶の決意が固く、期日を改めたり、尋問場所や方法を配慮したりしても、翻意して証言する見通しが少ないときに、供述不能の要件を満たすといえる。もちろん、期日を改め、期間を置けば証言が得られる見込みがあるとしても、他方で迅速な裁判の要請も考慮する必要があり、事案の内容、証人の重要性、審理計画に与える影響、証言拒絶の理由及び態度等を総合考慮して、供述不能といえるかを判断するべきである。 (引用終わり) |
(最決昭32・9・30より引用。太字強調は当サイトによる。) 相被告人の供述調書は、公判廷における夫々の供述と大綱においては一致しているが、供述調書の方が詳細であつて、全く実質的に異らないものとはいえないのであるから、同321条1項2号の要件をも満たしているということができる (引用終わり) |
(最判昭30・1・11より引用。太字強調は当サイトによる。) 刑訴321条1項2号は、伝聞証拠排斥に関する同320条の例外規定の一つであつて、このような供述調書を証拠とする必要性とその証拠について反対尋問を経ないでも充分の信用性ある情況の存在をその理由とするものである。そして証人が検察官の面前調書と異つた供述をしたことによりその必要性は充たされるし、また必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によつてそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解すべきものである。 (引用終わり) |
(参照条文)弁護士職務基本規程
5条(信義誠実)
75条(偽証のそそのかし)
82条(解釈適用指針) |
(東京高判平26・5・21より引用。太字強調は当サイトによる。) 消極的真実義務とは、弁護士が、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない(基本規程75条)ということであり、控訴審の弁護人が被告人の意思にかなうよう、弁護活動として、1審で取り調べられた証人の証言の信用性について疑問を提示したり、裁判所の判断の問題点を指摘したりすることは何ら消極的真実義務に反するものではない。 (引用終わり) |