平成26年予備試験短答式の結果について(3)

1.科目別の状況です。以下は、科目別平均点の推移です。一般教養だけは60点満点ですから、比較可能なように、かっこ書で30点満点に換算した数字を記載しました。

平成23年
平均点
平成24年
平均点
平成25年
平均点
平成26年
平均点
憲法 15.8 15.1 16.5 17.8
行政 12.2 12.5 14.2 12.7
民法 19.2 16.3 19.7 17.7
商法 12.9 14.7 12.1 15.0
民訴 14.7 16.9 17.0 16.2
刑法 18.6 16.6 17.0 14.1
刑訴 14.0 15.6 17.9 12.4
教養 23.2
(11.6)
27.2
(13.6)
25.2
(12.6)
31.5
(15.75)
合計 130.7 134.7 139.5 137.3

 今年の第一印象は、刑事、特に刑訴が難しいということでした。そのとおり、刑法、刑訴は平均点が低く、特に刑訴は、全科目中最も平均点の低い科目となりました。過去の刑訴の平均点と比較しても、最も低い点数となっています。それくらい、今年の刑訴は難しかった。例年平均点が低いのが、行政法と商法です。今年は、行政法は例年どおり、商法は易しめだった、という感じです。
 本試験の短答の試験科目は、来年以降憲民刑の3科目となりますが、予備試験の試験科目(法律科目)はこれまでどおり7科目です(※)。ですから、行商訴は、これからもきちんと勉強をしておく必要があります。対策としては、肢別問題集が最も効率的であることは、「平成26年司法試験短答式試験の結果について(6)」で説明したとおりです。
 今年の短答不合格だった人は、来年に向けて早く肢別問題集を回すことが重要です。短答は、やりさえすればストレートに結果につながりますし、一度合格ラインに達すると、それを維持するのは容易です。短答の知識は、意外と忘れません。論文の規範は文字列の暗記なので、すぐ忘れやすいのですが、○×を判断する程度の記憶は長く維持されるものなのです。

今回の司法試験法の改正は、本試験の短答試験科目を規定する3条2項を改正するもので、予備試験の短答試験科目を定める5条2項は改正されていません。

 

2.法律科目が全般的に難化したのに対し、一般教養の平均点は、かなり上がっています。これが、仮に例年どおりだったとすると、全体平均点は5点以上下がったことになる。そうすると、合格点が165点だった可能性も、十分あったことになります。前回の記事(平成26年予備試験短答式の結果について(2)」では、平均点が上がらなかった主要な要因は受験者層の違いであると書きましたが、一般教養の難易度も、重要な要素の一つだったということができるでしょう。

3.もっとも、一般教養頼みというのは、あまり良い考え方ではありません。一般教養は確実な対策が難しいですから、法律科目で手堅く合格を決めたい。そこで、法律科目だけで合格するには、どのくらい取る必要があるのかを考えてみましょう。
 一般教養は全問が5肢選択型なので、デタラメに選んでも、理論上は5分の1は取れます。ですから、一般教養の最低点は、20÷5×3=12点と考えることができるでしょう。今年の合格点は170点ですから、12点を差し引くと158点。これを7科目で割ると、1科目当たり、22点から23点を取ればよいことになる。これは、満点の73%~76%に当たります。従って、法律科目を7割強取れるようにすれば、一般教養はデタラメに選んでも受かる、というわけです。例年の問題を見る限り、肢別問題集をガチガチに固めてしまえば8割は取れる、という感じですから、これは十分現実味のある戦略でしょう。実際には、何の対策もしなくても、一般教養は30点くらい取れてしまいますから、結果的に余裕をもって合格してしまう場合もありますが、短答知識は論文でも役に立ちますから、それはそれで悪くないと思います。

4.司法試験本試験の今年の合格点は210点。これは、満点のちょうど6割です。予備試験で法律科目6割というと、30×7×0.6=126点。そうすると、今年の合格点170点に達するには、一般教養で44点が必要です。これは、一般教養を73%取ることを意味しますから、一般教養で逆転するイメージです。法律科目6割では、合格には今一歩足りない。その意味では、予備試験の方が、司法試験本試験よりも短答の要求水準が高いといえます。だからこそ、予備の最終合格者は、司法試験の短答でほぼ100%合格するわけですね。来年以降、司法試験本試験の方だけが憲民刑3科目になることによって、受験資格を得るための試験の方が、本体の試験より要求水準が高いという異常な状況が、さらに深刻化することになります。

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