1.以下は、年齢層別の受験者数の推移です。
年齢層 | 平成23 | 平成24 | 平成25 | 平成26 |
19歳以下 | 16 | 24 | 41 | 49 |
20~24歳 | 1159 | 1731 | 2894 | 3441 |
25~29歳 | 621 | 700 | 1243 | 1503 |
30~34歳 | 975 | 940 | 952 | 1045 |
35~39歳 | 981 | 979 | 1028 | 991 |
40~44歳 | 863 | 829 | 925 | 988 |
45~49歳 | 650 | 678 | 702 | 776 |
50~54歳 | 470 | 508 | 560 | 595 |
55~59歳 | 342 | 327 | 362 | 398 |
60~64歳 | 242 | 271 | 287 | 295 |
65~69歳 | 70 | 108 | 126 | 163 |
70~74歳 | 50 | 53 | 63 | 56 |
75~79歳 | 28 | 25 | 29 | 35 |
80歳以上 | 10 | 10 | 12 | 12 |
30代以降については、それほど数字が変動していません。かなりの部分、同じ顔ぶれが受験している、ということなのでしょう。特に80歳以上の10人は同一人物ではないか、平成24年に79歳だった2人が、平成25年は80歳で参戦したのではないか、とすら感じさせます。他方で、20代、特に20代前半が急増していることがわかります。予備試験受験者の増加は、主として20代前半の受験の急増によるものだということです。
2.今度は、職種別の受験者数の推移を見てみましょう。
職種 | 平成23 | 平成24 | 平成25 | 平成26 |
公務員 | 599 | 618 | 633 | 700 |
教職員 | 73 | 71 | 72 | 67 |
会社員 | 1287 | 1236 | 1351 | 1436 |
法律事務所 事務員 |
179 | 174 | 184 | 211 |
塾教師 | 117 | 135 | 153 | 145 |
自営業 | 335 | 337 | 346 | 377 |
法科大学院生 | 192 | 526 | 1456 | 1846 |
法科大学院以外 大学院生 |
24 | 24 | 26 | 34 |
大学生 | 1218 | 1636 | 2444 | 2838 |
無職 | 2153 | 2122 | 2198 | 2298 |
その他 | 300 | 304 | 361 | 395 |
法科大学院生と大学生は、平成25年に急増し、平成26年も400人近く増えています。それに対し、他の職種は、それほど増えていません。前記の20代前半の急増の中身は、ロー生と大学生だったということになります。すなわち、予備試験受験者の増加は、ロー生と大学生の増加によるもので、本来の予備試験受験者像として想定されていた社会人等は、それほど増えていないのです。
3.さらに、職種別の最終合格者数の推移をみると、予備試験の現状がよくわかります。
職種 | 平成23 | 平成24 | 平成25 | 平成26 |
公務員 | 13 | 18 | 10 | 17 |
教職員 | 1 | 1 | 0 | 0 |
会社員 | 12 | 15 | 14 | 12 |
法律事務所 事務員 |
4 | 4 | 5 | 4 |
塾教師 | 2 | 0 | 3 | 0 |
自営業 | 3 | 4 | 6 | 5 |
法科大学院生 | 8 | 61 | 162 | 165 |
法科大学院以外 大学院生 |
0 | 0 | 0 | 2 |
大学生 | 40 | 69 | 107 | 114 |
無職 | 32 | 41 | 36 | 34 |
その他 | 1 | 6 | 8 | 3 |
無職や社会人は、ほとんど合格者が増えていません。合格者数を急増させているのは、ロー生と大学生だけです(※)。予備の合格者数の増加分は、ほぼ全てロー生と大学生が持って行っているのです。
予備組とロー生の合格率を均衡させるために、予備合格者を増加させても、結局その増加分を上位のロー生や大学生が取ってしまい、大学在学中に予備に受からない人がローに入学し、ロー在学中に予備に受からない人がローを修了するという構図の下では、いつまでたっても予備組とロー修了生の合格率が均衡するはずはありません。予備を簡単にしても、その簡単な予備にすら受からない修了生と比べれば、やはり予備組が勝つでしょう。どんどん予備を簡単にして、行き着く先は、予備が簡単過ぎて、ロー修了前に全員予備に受かるという状況です。合格率均衡の閣議決定を無視せよとか、予備試験の受験資格を制限すべきであるという主張は、上記の点に着目する限り、一定の合理性があるのです。一方で、合格率が均衡するまで際限なく予備合格者を増やすべきであるとする主張は、現在のロー制度を破綻させるべきである、すなわち、予備が簡単過ぎて、誰もローに行こうとしないという状況が生じても構わないという前提でなければ成り立たない議論であり、ローを前提とする現在の制度とは整合しない、ということになるでしょう。
ですから、政府の現実的な政策として、閣議決定を文字どおりに実現し、かつ、予備試験の受験資格を制限しないという組み合わせは採り得ません。現実には、210点を合格点の下限とするという方法により閣議決定を文字どおりには実現しないが、予備試験の受験資格は制限しない。そういう方向性で動いています。逆に言えば、閣議決定を無視できる限り、予備試験の受験資格を制限する必要はない、ということでもあります。210点という合格点の下限は、一般的にはあまり知られていませんが、実は上記のような役割を果たす重要な防波堤になっているのです。これが崩壊したとき、受験資格制限の議論が現実味を帯びてくることになるでしょう。
※ ただし、大学生は、受験者数の増加ほどには合格者数が増えていません(「平成26年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」)。