1.ここ数年、司法試験の結果が出るたびに、注目されるのが、予備組の結果です。今年は、予備試験合格の資格で受験した382人中、235人合格。予備組の受験者合格率は、61.5%でした。以下は、予備組が司法試験に参入した平成24年以降の予備試験合格の資格で受験した者の合格率の推移です。
年 (平成) |
受験者数 | 前年比 | 合格者数 | 前年比 | 受験者 合格率 |
前年比 |
24 | 85 | --- | 58 | --- | 68.2% | --- |
25 | 167 | +82 | 120 | +62 | 71.8% | +3.6 |
26 | 244 | +77 | 163 | +43 | 66.8% | -5.0 |
27 | 301 | +57 | 186 | +23 | 61.7% | -5.1 |
28 | 382 | +81 | 235 | +49 | 61.5% | -0.2 |
受験者数、合格者数共に、一貫して増加しています。ただ、その増加幅をみると、今年は傾向に変化があることがわかります。昨年までは、受験者数、合格者数共に、増加幅は縮小傾向にありました。それが、今年は拡大に転じています。これは、予備試験の合格者数、特に論文合格者数の増減幅に対応しています(予備論文合格者数の変動要因については、「平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」参照)。
一方で、受験者合格率をみると、平成26年以降は、一貫して下落傾向でした。今年も、その傾向自体に変わりはありませんが、その下落幅はわずかです。ほぼ横ばいといってよいでしょう。今年で下げ止まり、来年以降は上昇に転じるのか、来年以降、また下落幅が拡大するのか、これを予測するには、これまで予備組の合格率が下落傾向にあった原因を考える必要があります。それは、当サイトで繰り返し説明している、「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則です。
2.「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則は、予備組にも当てはまる法則なのか。同法則が顕著に表れるのは、受験回数別の論文合格率です。予備組に関しては、受験回数別合格率は公表されていません。ただ、類似のデータとして、予備試験に合格した年別の数字は公表されます。予備組が受控えをするというのは、ほとんど考えられませんから、これは受験回数別の数字と考えてよいでしょう。今年は、まだその数字が出ていませんので、参考として、昨年の数字を用いて、 予備合格年別の短答合格者ベースの論文合格率を算出すると、以下のようになっています。予備合格年欄の括弧書きは、受控えがない場合の受験回数です。
予備 合格年 |
論文合格率 (短答合格者ベース) |
26 (1回目) |
79.17% |
25 (2回目) |
42.00% |
24 (3回目) |
27.50% |
23 (4回目) |
16.67% |
受験回数が増えるにつれて、顕著に合格率が下がっていることがわかります。これが、「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則の怖さです。予備組も、この法則から逃れることができていません。昨年の短答合格者ベースの論文合格率は、全体で34.8%でした。予備組の3回目以降の論文合格率は、この水準すら下回っています。つまり、予備組であっても、2回不合格になるような「論文に受かりにくい者」は、平均的な論文合格率をも下回ってしまうのです。
3.上記のことからわかるのは、予備組の合格率を低下させる要因は、2回目以降の受験者、すなわち、滞留者の増加にある、ということです。確認してみましょう。以下は、毎年の受験者数から合格者数を差し引いた滞留者数の推移です。
年 (平成) |
滞留者数 | 前年比 |
24 | 27 | --- |
25 | 47 | +20 |
26 | 81 | +34 |
27 | 115 | +34 |
28 | 147 | +32 |
このようにしてみると、滞留者数は一貫して増加傾向にあり、今年はわずかに増加幅が縮まったものの、ほぼ前年と同程度の増加幅を維持していることがわかります。そうだとすると、今後、予備組の合格率が上昇に転じるということは、考えにくいでしょう。予備組の合格率の下落傾向は、今後も続くと考えておいた方がよいと思います。