1.平成29年予備試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は160点。合格者数は2299人。受験者合格率は21.3%でした。
2.以下は、合格点、合格者数等の推移です。
年 | 受験者数 | 短答 合格者数 |
短答 合格率 |
短答 合格点 |
23 | 6477 | 1339 | 20.6% | 165 |
24 | 7183 | 1711 | 23.8% | 165 |
25 | 9224 | 2017 | 21.8% | 170 |
26 | 10347 | 2018 | 19.5% | 170 |
27 | 10334 | 2294 | 22.1% | 170 |
28 | 10442 | 2426 | 23.2% | 165 |
29 | 10743 | 2299 | 21.3% | 160 |
昨年まで、短答合格者数は一貫して増加していました。それが、今年は一転して減少に転じています。これをもって、「法務省は、これまで予備試験合格者の増加を許してきたが、法科大学院の定員削減に応じて、今年から予備試験合格者を減らそうとしているのだ。」という説明をする人が出てきそうです。本当にそのようなことが言えるのでしょうか。
3.平成25年以降、予備試験の短答式試験の合格点は、すべてあるルールによって説明できました。それは、「5点刻みで、最初に2000人を超えた得点が合格点となる。」というルールです。当サイトでは、これを「2000人基準」と呼んできました(「平成28年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。昨年まで一貫して短答合格者数が増加しているのは、実はこの「2000人基準」を適用した結果、偶然生じた現象です。今年も、このルールどおりに合格点が決まっているのか。確認してみましょう。以下は、法務省の得点別人員から、合格点前後の人員をまとめたものです。
得点 | 人員 | 累計 人員 |
165 | 78 | 1832 |
164 | 94 | 1926 |
163 | 95 | 2021 |
162 | 101 | 2122 |
161 | 104 | 2226 |
160 | 73 | 2299 |
昨年の合格点だった165点の累計人員をみると、1832人で、2000人を超えていません。そして、5点刻みで次の160点の累計人員をみると、2299人で、初めて2000人を超えます。この160点が、合格点になっている。このことから、今年も、「5点刻みで、最初に2000人を超えた得点が合格点となる。」という「2000人基準」によって、合格点が決定された、ということができます。
それにしても、昨年と比べて、合格者数は127人も減少しています。どうして、こうなったのか。昨年の合格点前後の人員をみると、これが単なる偶然であったことがわかります。
平成28年 | ||
得点 | 人員 | 累計 人員 |
170 | 86 | 1997 |
169 | 91 | 2088 |
168 | 79 | 2167 |
167 | 97 | 2264 |
166 | 79 | 2343 |
165 | 83 | 2426 |
昨年は、170点の累計人員が1997人と、限りなく2000人に近かった。そのため、初めて2000人を超える得点である165点の累計人員が、通常よりもかなり多めになってしまったのです(このような場合でも律儀に「2000人基準」を適用しているところから、これが内部基準的なものとなっていることを感じさせます。)。このように、昨年が特殊だったのです。今年はむしろ、「2000人基準」を適用した場合の通常の合格者数に戻ったというべきでしょう。
4.現在のところ、予備試験の論文式試験における合格点は、以下の2つの基準によって説明できます(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。
(1)210点に累計で400人以上存在しない場合は、210点が合格点となる。
(2)210点に累計で400人以上存在する場合は、5点刻みで初めて400人を超える点数が合格点となる(「400人基準」)。
これによれば、210点以上を取る人が何人いるかが重要になります。 平成27年及び平成28年は、いずれも210点の累計人員が400人を超えていました。その背景には、従来の経験則からは説明の難しい平均点の上昇がありました(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。このことからすれば、平均点の急激な下落が生じない限り、今年も、210点の累計人員は400人を超えるであろうと予測できます。そうすると、平成27年及び平成28年と同様、今年も上記(2)の「400人基準」が適用されることになるでしょう。したがって、論文の合格者数も、平成27年及び平成28年と同様、400人強の数字となるだろう、というのが、当サイトの予測です。