平成30年司法試験論文式公法系第2問
設問1(1)の補足説明(2)

1.さて、前回の記事(「平成30年司法試験論文式公法系第2問設問1(1)の補足説明(1)」)の続きです。何の話をしていたかというと、本件条例は、処分の根拠法令なのか、墓埋法と目的を共通にする関係法令なのか、ということでした。「【検討会議の会議録】」の記述から、本件条例は執行命令の性質を有するものと考えれば、本件条例は処分の要件及び手続そのものを定める規定ということになりますから、処分の根拠法令だ、ということになります。このことは、本件条例に違反してされた許可が違法となることを考えれば、明らかでしょう(執行命令も委任命令と同様の法規命令です。)。これが、「処分を根拠付ける」ことの意味です。そのことを理解した上で行訴法9条2項を改めて見ると、「当該処分又は裁決がその根拠となる法令『又は目的を共通にする関係法令』に違反してされた場合に」とはしていないことに気が付くでしょう。処分がされることによって関係法令に違反する状況が生じたとしても、直ちに処分が違法となるわけではないからです。

 

(行訴法9条2項。太字強調は筆者。)

 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

 そもそも、処分を定める法律の委任命令及び執行命令に当たる法令の趣旨・目的を考慮するのは当然のことです。行訴法9条2項に「目的を共通にする関係法令」が敢えて加えられた趣旨は、そのような処分の直接の要件・手続を規定する法令以外の法令の趣旨・目的をも考慮要素にすることによって、原告適格を拡大しようとする点にあったわけですから、執行命令をもって「目的を共通にする関係法令」であるとするのは、その趣旨を正しく理解しないものといえるでしょう。

 

衆院法務委員会平成16年04月27日より引用。太字強調は筆者。)

実川幸夫法務副大臣  考慮事項を定める今回の改正の趣旨ということでございますけれども、個々の具体的な事案におきましては、法律上の利益の有無につきまして、当該処分の根拠法令の文言のみによることではなくて、根拠法令の趣旨及び目的並びに当該処分におきまして考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮することとしております。
 また、根拠法令の趣旨及び目的を考慮するに当たりましては、これと目的を共通にします関係法令の趣旨及び目的をも参酌し、また、当該処分におきまして考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するに当たりましては、当該処分が当該法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質等をも勘案して、適切に判断されることを確保しようとするものでございます。
 これによりまして、原告適格が実質的に広く認められることになるものと考えております。

(引用終わり)

 

2.裁判例では、本件条例と同様の条例を目的を共通にする関係法令だ、としてしまったものがあります。

 

東京地判平22・4・16より引用。太字強調は筆者。)

 本件条例は,墓埋法10条の規定による経営の許可等に係る墓地等の構造設備及び管理の基準並びに事前手続その他必要な事項を定めることを趣旨とするものであり(本件条例1条),墓埋法と目的を共通にする関係法令ということができる。

(引用終わり)

 

 どちらにしても結論には影響しないわけですから、裁判例としてはこれでいいしかし、司法試験の答案としては、少し困るのです。なぜかというと、この点について気にしている考査委員がいるからです。

 

平成23年司法試験採点実感等に関する意見より引用。太字強調は筆者。)

・ 用語に関する基本的な誤解が目立つ。例えば,①行政処分の根拠法令に属する省令の規定をも,行政事件訴訟法第9条第2項にいう「関係法令」の一つに挙げる答案…などである。

(引用終わり)

 

 ここを間違えたからといって、直ちに合否に影響するようなことはないでしょう。とはいえ、上記の裁判例を参照して、本件条例を墓埋法と目的を共通にする関係法令であるとして解説するものが出てくるでしょうから、一応説明しておきました。ちなみに、平成23年の司法試験では、解説等でよく参照された裁判例として、場外発売場の設置の許可について、「原則的に禁止された場外発売場の設置を例外的に解除するという法律効果を有する,いわゆる許可(講学上の特許)に当たる」とした東京地判平18・12・20がありました。当サイトでは、これが誤りであり、高裁で訂正されていることを説明しました(「平成23年新司法試験論文式公法系第2問の感想と参考答案」)。現在でも、上記裁判例をそのまま参照して、特許とするのが正解だ、という解説が一部ではなされているようですから、注意を要します。なお、偶然ですが、この平成23年司法試験で問題となった東京地判平18・12・20と上記東京地判平22・4・16の裁判長は、いずれも杉原則彦裁判官です。

3.原告適格については、規範は覚えているものの、その当てはめ方がわからない、という人が多いように思います。「具体的利益」と「個々人の個別的利益」の意味が、必ずしも正確に理解されていないからでしょう。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(行政法)」より引用。太字強調は筆者。)

 行訴法9条1項にいう法律上の利益を有する者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分の根拠法令が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含む場合には、このような利益も上記法律上保護された利益に当たる。そして、処分の相手方以外の者について上記の判断をするに当たっては、同条2項所定の要素を考慮すべきである(小田急線高架訴訟判例参照)。

(引用終わり)

 

 まず、具体的利益とはなにか。これは、裁判規範としての意味を持つ利益だ、ということです。すなわち、この利益を害する場合には、原則として処分をしてはならない、処分をすれば違法になる、という意味になります。逆に、抽象的利益であれば、それが侵害されたからといって、直ちに処分が違法となるわけではない。似たような用例を、憲法や刑法で学んでいるはずです。生存権の請求権的側面は抽象的権利であるから、法律をもって具体的に保護されない限り、直ちに違憲の問題は生じない、というとき、上記のような意味での「抽象的」、「具体的」という用語を用いています。また、抽象的危険犯においては法益侵害の危険が構成要件とならないが、具体的危険犯においては法益侵害の危険が構成要件となる、というときの「抽象的」、「具体的」という用語についても同様です。そして、原告適格の文脈では、上記のように、その利益を侵害する場合には処分をしてはならない、ということは、その利益の保護が処分の要件となっているということを意味しますから、これを必要とする考え方を、「処分要件説」と呼ぶのでした。

 

衆院法務委員会平成16年05月11日より引用。太字強調は筆者。)

塩野宏(東京大学名誉教授)参考人  第三者の原告適格の問題となるような処分というのは、つまり、当該第三者との利益調整が法の趣旨、目的の中に含められている。つまり、第三者への考慮というものが処分要件とされている場合でありますので、そうしますと、関係法令としてはまず目的を共通にするものが想定されますので、そのことを、私の変な言葉ですけれども、必要的考慮事項として定めたものである。だから、最高裁としては新潟空港判決で出てきたけれども、下級審判決もすべてこれを十分、必要的な考慮事項として考えたらどうかということではないかというふうに思います。

(引用終わり)

 

 判例も、初期の頃は、この論理をきちんと判示していましたが、次第にざっくりとした判示をするようになってきています。ですから、判例の論理を正しく理解するには、初期の頃の判例をきちんと読む必要があるのです。

 

新潟空港事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法は、前記の目的を達成する一つの方法として、あらかじめ定期航空運送事業免許の審査の段階において、当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時など申請に係る事業計画の内容が、航空機の騒音による障害の防止の観点からも適切なものであるか否かを審査すべきものとしているといわなければならない。換言すれば、申請に係る事業計画が法一〇一条一項三号にいう「経営上及び航空保安上適切なもの」であるかどうかは、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断されるべきものである。したがつて、申請に係る事業計画に従つて航空機が航行すれば、当該路線の航空機の航行自体により、あるいは従前から当該飛行場を使用している航空機の航行とあいまつて、使用飛行場の周辺に居住する者に騒音障害をもたらすことになるにもかかわらず、当該事業計画が適切なものであるとして定期航空運送事業免許が付与されたときに、その騒音障害の程度及び障害を受ける住民の範囲など騒音障害の影響と、当該路線の社会的効用、飛行場使用の回数又は時間帯の変更の余地、騒音防止に関する技術水準、騒音障害に対する行政上の防止・軽減、補償等の措置等との比較衡量において妥当を欠き、そのため免許権者に委ねられた裁量の逸脱があると判断される場合がありうるのであつて、そのような場合には、当該免許は、申請が法一〇一条一項三号の免許基準に適合しないのに付与されたものとして、違法となるといわなければならない。

(引用終わり)

もんじゅ訴訟判例より引用。太字強調は筆者。)

 規制法は、原子力基本法の精神にのっとり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ、かつ、これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに、これらによる災害を防止し、及び核燃料物質を防護して、公共の安全を図るために、製錬、加工、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うことなどを目的として制定されたものである(一条)。規制法二三条一項に基づく原子炉の設置の許可申請は、同項各号所定の原子炉の区分に応じ、主務大臣に対して行われるが、主務大臣は、右許可申請が同法二四条一項各号に適合していると認めるときでなければ許可をしてはならず、また、右許可をする場合においては、あらかじめ、同項一号、二号及び三号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については原子力委員会、同項三号(技術的能力に係る部分に限る。)及び四号に規定する基準の適用については、核燃料物質及び原子炉に関する安全の確保のための規制等を所管事項とする原子力安全委員会の意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならないものとされている(二四条)。同法二四条一項各号所定の許可基準のうち、三号(技術的能力に係る部分に限る。)は、当該申請者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及びその運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき、また、四号は、当該申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む。)、核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)又は原子炉による災害の防止上支障がないものであるか否かにつき、審査を行うべきものと定めている。原子炉設置許可の基準として、右の三号(技術的能力に係る部分に限る。)及び四号が設けられた趣旨は、原子炉が、原子核分裂の過程において高エネルギーを放出するウラン等の核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき所定の技術的能力を欠くとき、又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の右技術的能力の有無及び申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性につき十分な審査をし、右の者において所定の技術的能力があり、かつ、原子炉施設の位置、構造及び設備が右災害の防止上支障がないものであると認められる場合でない限り、主務大臣は原子炉設置許可処分をしてはならないとした点にある

(引用終わり)

 

 このことを理解した上で、行訴法9条2項を見ると、「当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益」の部分が、上記の趣旨に対応していることがわかります。ある利益を侵害する場合には処分をしてはならない、すなわち、その利益の保護が処分の要件となっているということは、「処分が法令に違反してされた場合にその利益が害されることとなる」ことを意味するのです。

 

(行訴法9条2項。太字強調は筆者。)

 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする

 

 次に、個々人の個別的利益とは、何か。これは、上記のように判断して認められた具体的利益が、誰に帰属するかが区別できる、ということを意味します。例えば、ある不動産の所有権であれば、通常は、それが誰に帰属し、誰に帰属しないかを容易に判断することができます。では、空港や原子炉などの施設が建設されたことによって生じる騒音や健康被害のおそれ等から保護される利益については、どうか。この点についても、初期の頃の判例は、基本的な考え方を示してくれています。

 

新潟空港事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 航空機の騒音による障害の被害者は、飛行場周辺の一定の地域的範囲の住民に限定され、その障害の程度は居住地域が離着陸経路に接近するにつれて増大するものであり、他面、飛行場に航空機が発着する場合に常にある程度の騒音が伴うことはやむをえないところであり、また、航空交通による利便が政治、経済、文化等の面において今日の社会に多大の効用をもたらしていることにかんがみれば、飛行場周辺に居住する者は、ある程度の航空機騒音については、不可避のものとしてこれを甘受すべきであるといわざるをえず、その騒音による障害が著しい程度に至つたときに初めて、その防止・軽減を求めるための法的手段に訴えることを許容しうるような利益侵害が生じたものとせざるをえないのである。このような航空機の騒音による障害の性質等を踏まえて、前述した航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法が、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、申請に係る事業計画が法一〇一条一項三号にいう「経営上及び航空保安上適切なもの」であるかどうかを、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断すべきものとしているのは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。したがつて、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 

(引用終わり)

もんじゅ訴訟判例より引用。太字強調は筆者。)

 同法二四条一項三号所定の技術的能力の有無及び四号所定の安全性に関する各審査に過誤、欠落があった場合には重大な原子炉事故が起こる可能性があり、事故が起こったときは、原子炉施設に近い住民ほど被害を受ける蓋然性が高く、しかも、その被害の程度はより直接的かつ重大なものとなるのであって、特に、原子炉施設の近くに居住する者はその生命、身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定されるのであり、右各号は、このような原子炉の事故等がもたらす災害による被害の性質を考慮した上で、右技術的能力及び安全性に関する基準を定めているものと解される。右の三号(技術的能力に係る部分に限る。)及び四号の設けられた趣旨、右各号が考慮している被害の性質等にかんがみると、右各号は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、原子炉施設周辺に居住し、右事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。

(引用終わり)

 

 施設の騒音等による利益の侵害は、その性質上、施設周辺の一定の地域的範囲の住民に限定される。だから、そのような地域的範囲外の住民は、そのような侵害を受けない利益を享受しないだろうと区別できる。さらに、その施設のもたらす利便性を考慮すれば、ある程度の騒音等は仕方がないが、受忍限度を超えるものは、具体的利益の侵害があるといえる。だから、上記の一定の地域的範囲の周辺住民のうち、社会通念上著しい障害、ないしは、直接的かつ重大な被害を受けることとなる者については、そのような利益が個別的に帰属しているといえるだろう。逆にいえば、それ以外の者は、そのような利益が帰属していないと区別できる。このような意味だということです。
 このことを理解した上で、行訴法9条2項をみると、「害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度」の部分が、上記の趣旨に対応していることがわかります。違法な処分による侵害が、その利益の内容・性質から、一定範囲の者に限定されるか、受忍限度を超えるような態様・程度の者はさらに絞られるか、等々を考慮せよ、というようなことを意味しているのです。

 

(行訴法9条2項。太字強調は筆者。)

  裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする

 

 以上を論証化すると、以下のようになるでしょう。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(行政法)」より引用)

 周辺住民が処分による法益侵害を受けるおそれを主張してその取消し等を求める場合において、処分の根拠法令及びその関係法令から、上記法益侵害が生じるおそれがある場合には当該処分をすべきでない旨の趣旨が読み取れるときは、当該法益は具体的利益として保護されているといえる。そして、当該処分がされると上記法益を直接かつ著しい程度に侵害されるおそれのある者が一定範囲の周辺住民に限られるときは、上記法益は一般的公益の中に吸収解消させることが困難であるから、上記著しい法益侵害を直接的に受けるおそれのある範囲の住民の個別的利益を保護する趣旨を含むと解される。よって、上記範囲の周辺住民には原告適格が認められる(新潟空港事件、もんじゅ訴訟、小田急高架訴訟事件各判例参照)。 

(引用終わり)

 

 以上のような理解を踏まえて、次回から本問のD及びEについて、具体的に検討していきます。

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