統計の読み方
(令和5年司法試験公法系第1問)

 今年の憲法では、統計資料として、以下のような事情が記載されていました。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

X:Bさんから頂いた資料によると、昨年の給与所得者の年収では、男性の平均が約600万円、女性の平均が約300万円と2倍の格差があり、40歳代、50歳代でも1.5倍強の格差があります。これは、女性の場合、非正規雇用の職員・従業員が多いからです。例えば、正規雇用の職員・従業員数は、45歳から54歳で男性約680万人に対して、女性約340万人です。女性がとりわけ40歳以上で新たに正規雇用の職を得ることが困難であることも、統計上示されています。

(引用終わり) 

 

 一見すると、これは合憲方向の事情にみえます。しかし、本当にそうなのか。具体的な数字で考えてみましょう。以下は、男女別の平均年収と40・50代の年収を表にしたものです。

  平均 40・50代
男性 600万
女性 300万

 問題文に、「男性の平均が約600万円、女性の平均が約300万円」と書いてあるので、それを記入しています。40・50代については、具体的な数字が問題文にありませんが、「女性がとりわけ40歳以上で新たに正規雇用の職を得ることが困難である」と記載されていることから、ここでは、仮に40・50代の女性は、年収が200万円まで下がると考えましょう。

  平均 40・50代 減少幅
男性 600万
女性 300万 200万 -100万

 問題文では、40・50代の年収の男女格差は1.5倍強ということですから、ここでは、仮に1.53倍と仮定して計算します。そうすると、40・50代の男性の年収は、以下のようになることがわかります。

  平均 40・50代 減少幅
男性 600万 306万 -294万
女性 300万 200万 -100万

 

すげぇ減ってるじゃねーか!

 

 女性は3分の1程度の減少にとどまるのに対し、男性はほぼ半減しています。「40歳代、50歳代でも1.5倍強の格差」という問題文の記載は、具体的には上記のことを意味しているのです。
 このことを理解すれば、当サイト作成の参考答案(その2)の以下の論述部分の意味が理解しやすいでしょう。

(参考答案(その2)より引用。太字強調は筆者。)

 確かに、昨年の給与所得者の年収では、男女の平均で2倍の格差があり、40・50代でも1.5倍の格差がある。これは、45歳から54歳の正規雇用者数で男性が女性の倍であることが示すとおり、女性に非正規が多いからであり、女性がとりわけ40歳以上で新たに正規雇用の職を得ることが困難なことが統計上示されている。
 しかし、女性が正規の職を得ることが難しい事情は、女性への支給の必要を基礎付ける事情であって、男性への支給を否定すべき事情ではない。男性への支給を否定すべき事情というには、40歳以上55歳未満の男性が就労により自活できることを基礎付けうることを要する。
 上記統計によれば、40・50代では、男女格差が2倍から1.5倍に縮小しており、収入の減少割合に着目すると、むしろ、女性よりも男性の方が収入の減少が著しいことが認められる。そうすると、上記統計は40歳以上55歳未満の男性が就労により自活できることを基礎付けうるものではなく、合理的関連性及び実質的相当性を認めるに足りない。

(引用終わり)

 現場でこれに気付く人はとても少ないでしょうから、合否を分けるポイントとはいえませんが、出題する側としては、こうした数字の読み方にも着目して欲しいと思って出題したのだろうと思います。

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