46条各号該当の効果
(令和5年司法試験民事系第3問)

1.今年の民訴設問3課題2で、46条3号該当事由があること、同号は補助参加人が援用する場面では適用がないと考えるべきことについては、予備校等の解説でも説明があることでしょう。もっとも、同号該当の効果については、ほとんど説明がないのではないかと思います。

2.同条各号に該当する場合について、条文の文言を素直に読むと、参加的効力自体が発生しないとみえます。

(参照条文)民訴法46条(補助参加人に対する裁判の効力)
 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する
 一 前条第1項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
 二 前条第2項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
 三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
 四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

 「次に掲げる場合を除き、効力を有する。」というのだから、「次に掲げる場合には、効力を有しない。」と読むのが素直なところ。このような読み方も成立しないわけではなくて、例えば、「各号該当事由がある場合には、被参加人と補助参加人の協力関係が破壊されているといえるので、敗訴責任分担の趣旨が妥当せず、参加的効力はおよそ生じない。」という理由によって説明することが可能です。このように考える場合、本問では、「46条3号の事由があるから参加的効力が発生しなさそうだけど、補助参加人が援用する場面では同号の適用がないから発生するよ。」という説明になる。当サイトの参考答案(その1)は、この立場を前提としています。

(参考答案(その1)より引用)

(1)Zは前訴に補助参加し、免除の事実を証明するためにZ自身の証人尋問の申出をした。しかし、Yはこれを撤回した。YはZの訴訟行為を妨げたといえ、参加的効力が生じないとみえる(46条3号)。
 しかし、同号は、前訴の補助参加人に対して被参加人が参加的効力を援用する構図を前提とする。しかし、本件では前訴である本件訴訟の補助参加人が被参加人に対して前訴確定判決の参加的効力を援用する珍しい構図になっているから、同号は適用されない。
 以上から、参加的効力が生じる。

(引用終わり)

3.上記2の考え方は文言に忠実ではあるものの、たった1つの事項について各号該当事由があれば、それだけで参加的効力が全く生じなくなってしまう。オール・オア・ナッシングな感じで柔軟さに欠けるきらいがあります。ある事項について各号該当事由があった場合には、その事項についてだけ参加的効力が及ばないとすれば足りるのではないか。そう考えると、同条各号は参加的効力の発生障害を定めたものではなく、参加的効力が及ぶ範囲を規律するものだ、という考え方になる。このように考える場合、本問では、まず、参加的効力の発生の可否の文脈では、「46条3号の事由があるから参加的効力が発生しなさそうだけど、同号はそもそも発生するかの問題じゃないよ。」と説明した上で、参加的効力の範囲の文脈で、「46条3号の事由があるから免除の主張には参加的効力が及ばなそうだけど、補助参加人が援用する場面では同号の適用がないから及ぶよ。」と説明することになります。当サイトの参考答案(その2)は、この立場を前提としています。

(参考答案(その2)より引用)

(1)前記1(4)アのとおり、YがZの訴訟行為を妨げたから、参加的効力が生じない(46条3号)とみえる。
 しかし、同条各号の趣旨は、敗訴責任を分担させることが公平でない場合を参加的効力の範囲から除外する点にある。
 したがって、同号の事由の有無は、参加的効力の発生を妨げない。

 (中略)

イ.もっとも、免除の事実による甲債権消滅に限っては、前記1(4)アのとおり、YがZの訴訟行為を妨げたから、46条3号の事由があり、参加的効力が排除されるのではないか。
 同条各号は、被参加人が援用する典型場面を想定して、補助参加人の従属性ゆえに敗訴責任を分担させるべきでない場合を列挙したにすぎない。
 したがって、補助参加人から援用する本件には適用がない。

(引用終わり)

 この点は、答案の点数を左右するものではありませんが、論述する際の論点の位置付けに影響することから、説明をしておきました。

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