法効果以外を問わなかった理由
(令和6年司法試験論文式公法系第2問)

1.令和6年論文式公法系第2問設問1小問(1)。以前の記事でも説明したとおり、当サイトは、公権力性や実効的な権利救済の合理性については問われていない、と考えています(「設問1小問(1)の解法~前編~(令和6年司法試験論文式公法系第2問)」)。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕(1)、〔設問1〕(2)、〔設問2〕の配点割合は、35:35:30〕)

 (中略)

〔設問1〕

(1) 本件事業計画変更認可が取消訴訟の対象となる処分に当たることの論拠について、同認可が施行地区内の宅地の所有者等の権利義務又は法的地位に対して有する法的効果の内容を明らかにした上で検討しなさい。

 (中略)

課長:なるほど。では、本件事業計画変更認可の処分性はどうでしょうか。本件事業計画変更認可によってもB地区組合の組合員には変更がないため、上記最高裁判決にいう強制加入団体の設立であることを根拠として処分性を肯定できるか、疑問があり得ます。しかし、実現されるべき事業の内容を示す事業計画が変更されれば、施行地区内の宅地の所有者等には何らかの影響が生じるはずです。組合設立認可を行うに当たっては事業計画も審査されますから、同認可には、強制加入団体の設立以外の、事業計画に関わる法的効果もあるものと考えられないでしょうか。

係長:では、本件事業計画変更認可の処分性を肯定する論拠について、強制加入団体の設立であるという点からではなく、同認可が施行地区内の宅地の所有者等の権利義務や法的地位に対してどのような法的効果を有しているかという点から検討して御報告します

(引用終わり)

 では、なぜ、法効果に絞ってきたのか。

2.公権力性については、何の疑義もない(※1)し、そんなもん答えさせてもつまんないから、だろうと思います。どうせ、「法38条1項を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行うから公権力性がある。」と書いて終わり(※2)。本問はかなり複雑な制度の読み解きが必要なんだから、公権力性なんかに1秒も時間を使ってほしくない。関連法令の読解とかの方を頑張ってほしいよね、ということなのでしょう。
 ※1 判例も、都市計画に関する決定等の処分性の判断において、公権力性を問題にしたことはありません。
 ※2 本当は、私人が同様のことを行った場合(例えば、一般市民が、「よし俺がその事業計画変更を認めてやるよ。」と発言した場合)と異なる法効果が発生すること等も公権力性に関係するのですが、それは法効果の検討と重なります。

3.実効的な権利救済の合理性については、設問2との関係でちょっと具合が悪い、ということだったのかな、と思います。仮に、設問1小問(1)で、実効的な権利救済の合理性を書かせるとすると、「権利変換処分よりも、事業計画変更認可を争わせるのが合理的だぜ!」ということを力説させることになる。一方で、設問2の手続法的観点からの記述では、「事業計画変更認可の段階で争わせるのは無理でしょ。権利変換処分の段階で争わせるのが合理的だろうがよ。」と力説させる。なんか矛盾したことを解答させる感じになっちゃうよね。そういう配慮から、実効的な権利救済の合理性についても、問わないこととしたのではないかと思います。

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