1.令和6年予備試験民法。設問1(2)では、BEFの善意・悪意を間違えちゃった、という人がそこそこいるでしょう。そのような答案は、当然ながら想定した配点事項と異なる内容になるので、評価を落とします。そのようなミスをした人の中には、「たまたま間違えちゃったテヘヘ。」という程度で、あまり反省してない人もいるかもしれません。しかし、そのようなミスは、「根拠となる事実を問題文から書き写す。」という当たり前のことをやっていないことによる必然であって、決して「たまたま」ではありません。それだけではない。そのような人の多くは、「受かりにくい人」です。
2.BEFの善意・悪意については、問題文に明確な記載があります。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 7.Aは甲の沈没後に外国漁船によって救出されていたが、諸般の事情から帰国できないでいた。Aは、令和4年8月5日頃、Bに電話をして無事を伝えたが、Bは、Aの滞在する地域の情勢等から帰国は困難であると判断し、友人Fに、Aは生存しているものの帰国は困難であることを伝え、その財産の処分について相談したほかは、この事実を誰にも話さずに秘匿していた。Aの滞在する地域は外国との通信が厳しく制限されており、前記の電話のほかにAの生存を伝えるものはなかった。 8.令和4年8月24日、Cは、適法に相続放棄の申述を行った。同月25日、乙土地について、相続を原因とするAからBへの所有権移転登記がされた。同年10月20日、Bは、Aの生存を知らない不動産業者Eに対して、代金2000万円で乙土地を売り渡し、その旨の登記がされた。その際、Bは、Eに対して、「ひょっとしたら1年後くらいに1割増しで買い戻すかもしれないので、その間は他の人に処分しないでほしい。」と申し向けていた。 (引用終わり) |
とりわけ、BFについては、問題文に「知っている。」とは明記されていないわけですから、答案では悪意の認定事実として、上記問題文の事実を書き写す必要がある。例えば、当サイトの参考答案(その1)のような感じです。時的要素も、「電話の後に取引した。」ということを明らかにする意味で、摘示するのが望ましいでしょう。
(参考答案(その1)より引用。太字強調は筆者。) 2.32条1項後段が適用されるとの反論が考えられる。 (1)「善意でした行為」(32条1項後段)というためには、法律行為をした当時、当事者双方が善意であったことを要する(判例)。 (2)以上から、32条1項後段は適用されない。 (引用終わり) |
このように、認定根拠となる事実を問題文から書き写すぞ、という意識があれば、BEFの善意・悪意を間違えようがない。構成段階で、どの事実を書き写すかメモをしようとして、「えーとFは確か善意で、問題文のどこにあったっけ……あれっBから知らされてるじゃん悪意じゃん。危ない危ない。」と気が付くものです。
3.この種のミスをする人は、普段から当てはめで問題文の事実を書き写そうとせず、フィーリングで書く傾向にあります。問題文にない事実を答案に書いてしまったり、「甲の行為は悪質であり~」のように、基礎となる事実を書かないで自分勝手な評価だけを書き殴って当てはめをしたりする。そのような答案を書く人は、どの科目でも事実摘示に関する配点を取れないので、受かりにくい。今回、BEFの善意・悪意を間違えた人は、「ちょっとしたケアレスミスだから」などと軽く考えることなく、普段から問題文の事実を書き写す意識を持てるよう、方法論を改めないと、「受かりにくい人」から脱却できません。