財源規制違反の学説選択
(令和6年予備試験商法)

1.令和6年予備試験商法。設問1(1)では、財源規制違反の自己株式取得の効力について、各自が事前に準備していた立場から、解答したことでしょう。ここは、どれが予備校通説というものがあまりなくて、受験生によって、どの立場を採るかが分かれています。そこで、この機会に、この論点についての学説選択について、当サイトの考え方を説明しておきたいと思います。

2.まず、有効説ですが、本問のように、瑕疵が財源規制違反しかない場合には、淡々と条文を適用するだけで解答になることが多く、最も簡明で優れていると思います。本問におけるDの同時履行についても、「自己株式の返還請求権は462条1項の義務履行の効果として生じる(民法422条類推適用)ので、同時履行関係にない。」と簡単に説明すれば足ります。なので、本問に関しては、有効説で書いた人も何の支障も感じなかったでしょう。
 ただ、有効説だと困る場合があります。それは、財源規制違反以外にも手続等の瑕疵がある場合です(※1)。この場合、有効なのか無効なのか、462条等を適用してよいのかダメなのか、困ってしまうでしょう(※2)。仮に、「財源規制違反があっても有効だけど、他の瑕疵がある場合は無効になる。」と考えるとすると、462条は有効な場合の規律だから適用できなさそう。でも、その場合は取締役の責任とか相手方の同時履行とかはどうなるの。そうしたことも含め、「有効ルート」と「無効ルート」を事前に準備しておかなければ対応できません。
 ※1 平成23年司法試験民事系第2問がその例です。
 ※2 債権法改正前の文献では、有効説の立場から、当時の民法93条ただし書類推適用によるという解釈が示されていました(相澤哲ほか『論点解説新・会社法:千問の道標』(商事法務 2006年)150頁)。債権法改正後は、同条1項ただし書類推適用か、あるいは同法107条類推適用ということになるのでしょう。いずれにせよ、無効になる場合があるということです。

 それから、設問で、株主総会決議の効力が問われた場合にも、結構困ります。無効説は、「決議内容に法令違反があるんだから決議無効に決まってるだろ。」と言います。

(参照条文)会社法830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)

 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

 これに対して有効説は、以下のように説明し、必ずしも決議は無効にならないといいます。

「財源規制違反の効力(補足)」会社法であそぼ。より引用。太字強調は筆者。)

 461条1項は、「次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。」と規定しています。

 ポイントは、「その効力を生ずる日における」というところです。

 つまり、①株主総会の決議時の分配可能額を超えていなくても、配当の効力発生日の分配可能額を超えるのならば、配当はできないし、②株主総会の決議時の分配可能額を超えるような配当決議であっても、配当の効力発生日の分配可能額を超えないならば、配当してもよいのです。

 無効説は、株主総会の決議が無効だから、それに基づく配当も無効であるという旧来の論理の延長線上にあるように思いますが、「利益配当は、年1回だけ」という旧商法では、それで対応できても、配当の回数が無制限になった会社法では、その考えでは対応できません。

 たとえば、6月1日の時点で分配可能額が1000万円の会社が、その日、株主総会で総額800万円の配当決議をし、効力発生日を7月1日にしたとしましょう(第一配当)。この決議は有効です。
 ところが、6月15日に株主総会を開催し、その日を効力発生日として500万円の配当決議をする(第二配当)とどうなるでしょうか。第二配当の効力発生日である6月15日の時点では、まだ第一配当がされていないので、分配可能額は1000万円であり、第二配当は、461条1項に違反しません
 そして、第二配当で500万円を配当すると、その時点で分配可能額は500万円になるので、第一配当の効力発生日である7月1日の時点では、800万円の第一配当は、その日の分配可能額を超えてしまいます
 この場合、無効説は、どのような論理で、第一配当の効力を説明するのでしょうか?
 
 逆の例も、あります。
 たとえば、6月1日の時点で分配可能額が1000万円の会社が、その日、株主総会で総額1200万円の配当決議をし、効力発生日を7月1日にしたとしましょう(無効説ですと、その決議は無効であると考えるでしょう)。
 しかし、6月15日に株主総会を開催し、その日を効力発生日として500万円の資本金の減少を行い、剰余金を増加させると(債権者保護手続きは終了しているものとします)、6月15日に分配可能額は1500万円になり、7月1日の1200万円の配当は、分配可能額の配当になります。

 このように財源規制違反の問題は、配当の効力発生日における分配可能額を基礎に論理を構成すべきでなのです。

(引用終わり)

 有効説に立つのであれば、これを答案で説明することになりますが、「面倒くさい。」と思う人が多いことでしょう。
 それだけではありません。有効説は、さらに、「決議無効となる場合もあるよ。だけど剰余金配当・自己株式取得は無効にならないよ。」と言います。

「財源規制違反の効力(補足)」会社法であそぼ。より引用。太字強調は筆者。)

 なお、財源規制違反の配当を内容とする株主総会の決議が、どんな場合でも無効とならないかというと、そうではありません。例えば、株主総会の決議の日を配当の効力発生日として、財源規制違反の配当をすれば、決議内容の法令違反で決議は、無効になるでしょう。決議の日と効力発生日が異なる場合でも、配当の効力発生日に配当額が分配可能額を超えることを避けることができないような決議であるならば、決議が無効とされることになるでしょう。ただし、その場合でも、配当してしまえば、その配当は有効と評価されることになりますが。

(引用終わり)

 つまり、上記のような場合には、「決議は無効だけど、剰余金配当・自己株式取得は有効です。」と書かなければならない。決議無効になる場合とそうでない場合を区別した準備が必要だ、ということですね。さらに、このケースでは、決議無効事由が財源規制以外にも複数ある場合にどうするか、という問題も生じるでしょう。「配当してしまえば、その配当は有効」というのであれば、財源規制以外の事由で決議無効になる場合も同じになりそうですが、「本当かよ。」と思うところです。有効説の主唱者であった葉玉匡美さんは新たな見解を表明してくれそうな感じではありませんし、学説で有効説を積極に採る論者は青竹正一教授くらいしかいない(※3)ので、派生的論点についてどうなるか、ということを調べようとしても、「それは葉玉さんに聞いてみないと分からないよ。」となりがちなことも、有効説の困ったところです。
 以上のようなことがあるので、有効説を採るにはちょっとした怖さがある。これが、当サイトの評価です。
 ※3 田中亘教授も有効説を支持するに至っていますが、それほど積極的な感じではありません(田中亘『会社法(第4版)』(東京大学出版会 2023年)469頁)。

3.次に、絶対的(純粋)無効説ですが、これは有効説の下位互換であり、これを採るくらいなら有効説を採るべきだ、と思います。
 まず、有効説と比べて簡明さで劣ります。本問におけるDの同時履行について、「462条の義務の性質は給付利得返還なので原則同時履行」ということを説明した上で、同時履行を否定する理由を説明しなければならない。しかも、絶対的(純粋)無効説は、自己株式取得の相手方が善意無重過失でも無効とするので、「善意無重過失の相手方の同時履行も否定しちゃうの?」という問題を抱えています。
 一方で、財源規制違反以外の瑕疵があった場合に厄介だ、という有効説の弱点は、絶対的(純粋)無効説にもそのまま当てはまります。絶対的(純粋)無効説も、財源規制違反以外の無効事由については、相対的無効説を採用するのが一般です。なので、両方が混在すると、どうしていいか分からなくなる。絶対的(純粋)無効説は、財源規制違反の場合だけ相手方の善意・悪意関係なく無効とする論拠として、462条の規定ぶりを挙げるのですが、そうだとすると、財源規制違反以外の無効事由によって無効になる場合には同条は(類推)適用がないと考えるのでしょう。「財源規制違反の場合は462条が一律に規定するから絶対的無効だ。」と言いながら、「財源規制違反以外の場合は相対的無効だけど462条を類推適用します。」というのは、ちょっと何を言ってるか分からない。結局、「財源規制違反で無効になる場合の処理」と、「財源規制違反以外の事由で無効になる場合の処理」を分けて、準備しなければならなくなるのです。同時履行についても、前者なら否定だけど後者なら肯定、のようになるのでしょう。面倒くさいです。
 それから、決議の効力が問われた場合、財源規制違反による決議内容の法令違反で決議無効→自己株式取得も無効という場合には462条で処理することになるのでしょうが、財源規制違反以外の理由で決議無効(ないし決議取消し)→自己株式取得も無効という場合にはどうなるのか。同じ決議無効なのに取扱いが変わるとなると、違和感がすごい。絶対的(純粋)無効説を採るのであれば、この辺りも事前準備しておかなければならず、結構面倒くさいと思います。それから、財源規制違反の場合だけ旧商法時代の通説の理解を変更する(相対的無効説を採らない。)ということになるため、会社法以前の解釈論を参照しにくくなるという点もいただけません。

4.有効説・絶対的(純粋)無効説に対して、相対的無効説は、自己株式取得の問題を単純に一本化して簡明に理解できる強みがあります。なお、念のために説明しておくと、ここでいう相対的無効説は、自己株式取得の瑕疵に関する解釈論です。剰余金配当についてまで、相対的無効と考えるわけではない点に注意が必要です(※4)。この違いは、剰余金配当の場合は一方的にお金が流出するのに対し、自己株式取得の場合は、会社が自己株式を取得するので、対価が適正である限り資産の流出が生じないこと、取引行為であり、相手方の取引安全を考慮する必要性があることによって生じます。
 ※4 前田庸『会社法入門〔第13版〕』(有斐閣 2018年)672頁。463条1項の善意株主への求償制限は、自己株式取得においては確認的意味しかなく、剰余金配当においてのみ創設的意味を持つ規定と理解されます。なお、剰余金配当の場合も相対的無効説を採る異説として、龍田節・前田雅弘『会社法大要〔第2版〕』(有斐閣 2017年)434頁があります。「財源規制違反の相対的無効説は極端少数説」と呼ばれるときの「相対的無効説」とは、この剰余金配当の場合に相対的無効説を採る立場を指しています。混同しないよう、注意が必要です。

(1)有効説や絶対的(純粋)無効説では、財源規制違反以外の瑕疵があった場合に厄介でした。それは、財源規制違反と、それ以外の無効事由とで、取扱いを変えていたからでした。相対的無効説は、どの事由で自己株式取得が無効になっても相対的無効と考えれば足ります。そして、462条は自己株式取得が無効になった場合の一般的な給付利得返還の特則を定める趣旨だと理解できるので、財源規制違反以外の無効事由がある場合でも、同条を類推適用して同じ処理ができる(※5)。非常に簡明です。
 ※5 ただし、462条3項、463条2項のように、分配可能額超過の場合のみを想定した規定は別です(『司法試験定義趣旨論証集会社法【第2版】』「分配可能額超過以外の瑕疵により剰余金配当等が無効となった場合の462条、463条類推適用の肯否」参照)。

(2)それから、相手方の同時履行についても、想定されるのが悪意・重過失の相手方だけになるので、「悪意・重過失の相手方に同時履行なんて認める必要がない。」と言い切ってあまり問題がない(※6)。そして、本問におけるDのように、相手方が善意無重過失の場合には、そもそもその論点すら出てこないので、簡明に解答できます。
 ※6 当サイト作成の『司法試験定義趣旨論証集会社法【第2版】』では、民法295条2項を類推適用する法律構成を用いています(「分配可能額を超える自己株式取得の相手方に対する462条1項柱書に基づく支払請求に対する相手方の同時履行の抗弁権の肯否」)。

(3)本問のDのように相手方が善意無重過失の場合、取締役Aの責任も発生しないので、簡潔に解答しようと思えばそれだけ書いて最低限の解答になるという点も、相対的無効説の利点のうちの1つです。

(吉本健一『会社法における財源規制違反の剰余金の配当等の効力』阪大法学第57巻第5号(2008年)7頁より引用。太字強調は筆者。)

 まず第一に、財源規制に違反する自己株式の取得について無効説を採るとしても、それは旧法上における通説的見解であったいわゆる相対的かつ片面的無効説を採るべきであると考える。なぜならば、株式取引の安全を考慮すると、譲渡人が財源規制に違反する自己株式の取得であることを知らない場合にも、会社からの取得行為の無効主張を認めることは、譲渡株主の利益を害することになり、また譲渡株主からの無効主張を認める必要はないと考えられるからである。……(略)……自己株式の取得が無効となるのは、譲渡株主が財源規制に違反する自己株式の取得であることを知っていることまたは重大な過失によって知らなかったことを会社が証明した場合に限るべきである。これ以外の場合は、自己株式の取得は有効であり、したがって取得行為の無効を前提とする不当利得返還義務の特則としての財源規制違反責任も生じない。そしてまた、四六二条一項に基づく業務執行者等の財源規制違反責任も、このような譲渡株主の不当利得返還義務を補完する責任であると理解するならば、自己株式の取得が有効とされる場合には生じないこととなる。

(引用終わり)

 当サイトの参考答案(その1)は、この立場から、超簡潔に書いています。

(参考答案(その1)より引用。太字強調は筆者。)

1.A
 Aは代表取締役であるから、「当該行為に関する職務を行った業務執行者」(462条1項柱書)に当たる。
 もっとも、前記第1の3のとおり、甲社はDに無効を主張できないから、Aは同項の責任を負わない

(引用終わり)

 「でも、免責事由の当てはめにも配点がありそうじゃん。時間に余裕があるから、そこの当てはめもしたいんだけど。」と思う上級者については、欠損填補責任のところで書きましょうね、というのが、相対的無効説の立場です。相対的無効説は、相手方の善意無重過失によって自己株式取得が有効になった場合の債権者保護については、期末の欠損が填補されることで満足すべきだ、という価値判断に立っているのでした。

(吉本健一『会社法における財源規制違反の剰余金の配当等の効力』阪大法学第57巻第5号(2008年)7~より引用。太字強調は筆者。)

 自己株式の取得が有効である場合には四六二条一項の財源規制違反責任は発生せず、それだけ資本維持が弱くなることは否定できない。しかし、有効説は、旧法上の通説が、取引の安全確保の見地から、財源規制に違反する自己株式の取得であることにつき悪意・重過失のない株主との関係では、自己株式の取得を有効と扱ってきた場合も、債権者保護というスローガンのもとに、実質的にはすべて無効とするのと同様の責任を譲渡株主に負わせているということになる。債権者保護のためとはいいながら、善意無過失の譲渡株主にも財源規制違反責任を負わせることは行き過ぎではないだろうか。……(略)……自己株式の取得が有効な場合には財源規制違反責任が生じないと解しても、直近の事業年度決算において分配可能額が欠損となった場合の業務執行者等の填補責任(四六五条)は、無過失の証明がないかぎり、自己株式の取得が有効である場合にも生じるから、その範囲では、資本維持が図られることになる(反対に、四六五条の責任が生じない場合には、分配可能額の欠損は解消していることになる)。

(引用終わり)

 当サイトの参考答案(その2)は、この立場から書いています。時間が余って仕方がない人は、このように書けばよいでしょう。

(参考答案(その2)より引用。太字強調は筆者。)

1.A
(1)Aは、代表取締役として業務執行権を有する(349条4項、363条1項1号)から、「業務執行取締役」(2条15号イ第1括弧書)であり、甲社を代表して本件株式の買取りを行ったと考えられるから、「当該行為に関する職務を行った業務執行者」(462条1項柱書)に当たる。
 もっとも、業務執行者等の支払義務は相手方から回収できない場合の会社の損害を賠償させる任務懈怠責任の性質を有するところ、そもそも会社が相手方に自己株式取得の無効を対抗できないときは、会社は相手方に取得した株式を返還する義務を負わない反面、相手方も同項の支払義務を負わないから、回収できない損害は観念できない。したがって、会社が相手方に自己株式取得の無効を対抗できないときは、業務執行者等は同項の責任を負わない。
 前記第1の3のとおり、甲社はDに無効を主張できないから、Aは同項の責任を負わない。

(2)462条1項は、同項各号の場合における任務懈怠責任に係る423条の特則であるから、462条1項の責任が否定されるときは、423条1項の責任も生じない。取得価格が不適正であった場合には別に任務懈怠を構成する余地があり得るが、本件株式の取得価格は適正な金額であったから、その余地もない。

(3)令和6年3月31日において200万円の欠損がある。同年度(「当該行為をした日の属する事業年度」)の確定決算(「計算書類につき第438条第2項の承認…を受けた時における」)においても欠損が生じる(「第461条第2項第3号、第4号及び第6号に掲げる額の合計額が同項第1号に掲げる額を超えるとき」)場合、Aは、欠損填補責任(465条1項)を負うか
 Aは、「職務を行った業務執行者」(465条1項本文)に当たる。免責事由(同項ただし書)はあるか。
 会計帳簿の作成も会社の業務の1つであるから、Aは業務執行権を有する代表取締役として、その正確性について責任を負う(432条)。もっとも、適切な管理体制が整備されている場合には、特段の不審事由がない限り、体制が正常に機能することを信頼すれば足りる(ヤクルト事件等裁判例参照)。
 甲社では、代表取締役A自身が、甲社の経理・財務を担当し、計算書類作成・分配可能額計算も自分で行う一方、監査役Fが会計監査を行い、会計帳簿を経理担当従業員Gがほぼ単独で作成するという業務分担体制であった。甲社のような極めて小規模な会社においては、上記体制が不適切であるとはいえない。
 上記欠損の原因となる会計帳簿の過誤は令和6年7月になってBが偶然発見したもので、定時株主総会でもFは疑義を述べなかったから、特段の不審事由はなかった。
 以上から、Aが会計帳簿の作成についてGに任せきりにしたとしても、監督義務違反があるとはいえない。免責事由がある。Aは欠損填補責任を負わない。

(4)よって、Aは、甲社に対し、何らの責任も負わない。

(引用終わり)

 このように、相対的無効説からは、状況に応じて簡潔にも重厚にも、書くことができるのでした。

(4)加えて、自己株式取得に関する相対的無効説は旧商法時代からの通説なので、その解釈論を参照して応用できる、ということも、会社法下の判例・裁判例に乏しい現状(※7)では、見逃せない利点です(※8)。
 ※7 今後、有効説を明言する判例・裁判例が登場し、それを踏まえた解釈論が定着するようになったなら、当サイトも有効説を採用することを考えるでしょう。
 ※8 従前の解釈論との連続性を踏まえて財源規制違反の自己株式取得について相対的無効説を採用するものとして、前田庸『会社法入門〔第13版〕』(有斐閣 2018年)161頁。

5.以上のような理由で、当サイト作成の『司法試験定義趣旨論証集会社法【第2版】』では、財源規制違反の自己株式取得の効力について、相対的無効説を採用しています(「分配可能額(461条2項)を超える自己株式取得(同条1項1号から7号まで)の効力」)。学説選択をするに当たっては、純粋な理論的優劣だけでなく、論文式試験の問題として出題された場合の対応の仕方なども考慮する必要があります。財源規制違反の自己株式取得の効力については、特に複雑な考慮が必要になることから、この機会に詳しく説明をしておきました。

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