1.平成26年予備試験論文式試験の結果が公表されました。合格者数は、392人でした。以下は、予備試験論文式試験の合格者数の推移です。
年 | 論文 合格者数 |
前年比 |
23 | 123 | --- |
24 | 233 | +110 |
25 | 381 | +148 |
26 | 392 | +11 |
今年は、前年と比較して11人の増加にとどまっています。これまでのような、勢いのある増加にはなりませんでした。このことの意味を理解するには、合格者数と合格点の関係を考慮する必要があります。
2.予備試験の合格者数は、合格率均衡を求める閣議決定に従う限り、増えるはずです。これまで、予備試験合格者の数が増加してきたのは、この閣議決定が根拠となっていました。この閣議決定は現在も生きていますから、そのことからすれば、今年も合格者数は増えて当然、ということになるでしょう(「平成26年予備試験短答式の結果について(4)」)。
一方で、当サイトでは、来年は素直に合格者数は増えないのではないか、合格者数の抑制要因として、合格点の下限の問題があるのではないか、という説明をしてきました。すなわち、昨年の時点で、論文の合格点は一応の水準の下限(210点)にまで下がっている。これをさらに下げるとすると、不良の水準を合格させることになるから、それはできないだろう。そうなると、この一応の水準の下限が、合格点の最低限を画することになり、合格者数の抑制要因として機能するのではないか、ということでした(「平成26年予備試験短答式の結果について(5)」)。合格点が210点であれば、この説明が妥当することになります。
また、それとは別に、近時は、増加要因である合格率均衡の閣議決定について、これを空文化させる解釈が公然と主張されるようになりました(「平成26年司法試験の結果について(8)」)。従来、閣議決定を前提にすると予備合格者数を増やすしか選択肢がない、と思われていましたから、これは司法試験委員会に、閣議決定を無視する大義名分を与えることになります。合格点が210点ではなかった場合には、この閣議決定の理解が合格者数の抑制根拠となったと考えることができるのです。ただし、閣議決定を無視する場合には、合格率均衡という基準が失われるわけですから、合格者数をどのように決めるのか、新たなメルクマールが要求されることになる点に、注意が必要です。
3.以上のことを踏まえた上で、今年の結果をみると、合格者数増が抑制されている一方で、合格点は210点になっています。従って、前者の考え方、すなわち、今年の合格者数がそれほど増えなかったのは、一応の水準の下限という合格点の最低限が、合格者数増の抑制要因として機能したからだ、という説明が妥当することになります。この運用が今後も続くとすれば、来年以降の合格者数は、一応の水準の下限をクリアする人が何人出るかによって決まる。すなわち、受験生の皆さん一人一人の頑張り次第だということになりますね。