1.前回の記事(平成27年司法試験の結果について(4))では、論文単独の合格ラインを考えました。今回は、短答の寄与度を考えてみます。
2.今年の短答の合格点は、114点でした。従って、論文との総合評価の段階では、この114点が短答の最低点ということになります。短答をギリギリの114点で突破した人が、論文で逆転合格を果たすには、何点が必要だったのでしょうか。
総合評価は、以下の算式で計算されます(「司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について」)。
総合得点=短答の得点+論文の得点×1.75
昨年までは、短答の得点(350点満点)は、総合評価の段階で半分になっていましたが、今年から短答が憲民刑の3科目、175点満点となった関係で、そのまま総合評価に加算されるようになりました。ですから、短答と論文の比重は、従来どおり、1:8で変わりません。
さて、今年の総合評価における合格点は、835点でした。上記の算式から、短答で114点だった者が合格するには、
835=114+論文の得点×1.75
論文の得点=721÷1.75
論文の得点=412
論文で412点が必要だったということになります。前回の記事(平成27年司法試験の結果について(4))でみたとおり、論文単独の合格点は400点でしたから、12点余計に取る必要があったということです。とはいえ、短答ギリギリ合格でも、12点しか不利にならないと考えると、それほど大きな差ではないと感じるかもしれません。
3.前記2と同様に、代表的な短答の得点と、その場合に合格に必要な論文の得点及びその得点率についてまとめたのが、以下の表です。
短答の得点 | 短答順位 | 論文の 合格点 |
得点率 |
114 (短答合格点) |
5308 | 412 | 51.5 |
133.6 (短答合格者 の平均点) |
2719 | 400 | 50.0 |
140 (満点の8割) |
1692 | 398 | 49.7 |
145 (上位1000番) |
1044 | 394 | 49.2 |
173 (短答トップ) |
1 | 378 | 47.2 |
短答ギリギリ合格の人と、短答トップの人では、論文で34点の差があります。大きいようにも感じますが、論文は選択科目を含めて8科目ありますから、1科目当たりにすると、4.25点です。しかも、これは175点満点中の173点を取った場合です。満点の8割を取った程度では、短答ギリギリ合格の人と比べても14点しか違いません。短答で付く差は、せいぜいこの程度だということを、知っておくべきでしょう。
同時に、短答ギリギリ合格の者であっても、一応の水準のやや上くらいを取れば合格できるということも、重要な事実です。論文で優秀や良好を取って挽回しなければならない、というようなことはないのですね。しかも、このうちの20点分、得点率にすると2.5%相当分は、全科目平均点の上昇によるものです(前回の記事「平成27年司法試験の結果について(4)」参照)から、従来の感覚でいえば、得点率49%程度が合格ラインなのです。ですから、短答で差を付けようと考えるよりは、論文で確実に一応の水準の上位を取ろうと考える方が、堅実な考え方だと思います。
4.以上のように、短答は、無視し得るほどではないが、しかし、さほど重要でもないという、微妙な位置付けです。そのため、どの程度短答を勉強するかは、悩ましい部分があります。この点については、以前の記事(「平成27年司法試験短答式試験の結果について(4)」で詳しく説明したとおり、初期の頃は短答を重視して学習し、ある程度短答が取れるようになったら、論文主体に切り替えるのが、効率の良い勉強法です。