1.以下は、今年の受験生のうち、法科大学院修了生の資格で受験した者の各修了年度別、未修・既修別の合格率です。
受験者数 | 合格者数 | 受験者 合格率 |
|
22未修 | 772 | 65 | 8.4% |
22既修 | 359 | 44 | 12.2% |
23未修 | 792 | 81 | 10.2% |
23既修 | 429 | 59 | 13.7% |
24未修 | 809 | 93 | 11.4% |
24既修 | 533 | 119 | 22.3% |
25未修 | 866 | 144 | 16.6% |
25既修 | 836 | 306 | 36.6% |
26未修 | 970 | 148 | 15.2% |
26既修 | 1349 | 605 | 44.8% |
毎年の確立した傾向として、以下の2つの法則があります。
ア:同じ年度の修了生については、常に既修が未修より受かりやすい。
イ:既修・未修の中で比較すると、常に年度の新しい者が受かりやすい。
このように既修・未修、修了年度別の合格率が一定の法則に従うことは、その背後にある司法試験の傾向を理解する上で重要なヒントとなります。
2.まず、アの既修・未修の差は、かつては主に短答で付いていました。短答は、単純に知識量で差が付くからです。ただ、近年は、短答だけでなく、論文でも差が付くようになってきています。今年の短答・論文別の既修・未修別合格率はまだ公表されていませんが、昨年のデータ(「平成26年司法試験受験状況」)を参考に参照すると、以下のようになっています。短答は受験者ベース、論文は短答合格者ベースの数字です。
平成26年 | ||
短答 合格率 |
論文 合格率 |
|
既修 | 78.2% | 41.9% |
未修 | 49.7% | 24.3% |
短答・論文の双方で、大きく差が付いています。論文でも差が付くようになった原因の一つには、論文の出題傾向が単純な形式で安定してきたことがあるように思います。以前の記事(「平成27年司法試験の結果について(4)」)でも説明したとおり、それによって各科目の攻略法が一致し、既修者試験に合格経験のある既修が、より安定して点を取れるようになった。そのことが、論文段階での既修・未修差を生じさせているように思います。このことは、平成18年の過去問と今年の問題を見比べると、よく分かるでしょう。当時は、何を書いていいかわからずに、実力を全く出せずに自滅する、という人が一定数いましたが、今ではそれはかなり少なくなっています。
3.また、イの修了年度による差は、論文で付いています。短答は勉強量さえ増やせば受かりやすくなるので、受験回数が増えると、合格率も上がる。しかし、論文は、逆に、受験回数が増えると、合格率が下がる(「平成26年司法試験の結果について(13)」参照)。論文は、単に勉強量を増やせばよいというのではなく、規範を正確に明示し、事実を丁寧に摘示するという意識がなければ合格できないので、そのような意識がなく滞留した人は、次の年も同じように不合格になってしまう可能性が高いのです。これが、「論文に受かりにくい人は、何度受けても受からない法則」です。
4.今年も、概ね上記の法則が成り立っていますが、唯一例外があります。26年度未修と25年度未修です。26年度未修よりも25年度未修の方が合格率が高く、上記イが成り立っていません。従来から、未修については、初年度と次年度の差はそれほど開かないという傾向がありました。その原因は、初年度未修は短答で不合格になってしまう割合が大きいということにあるのだろうと思います。昨年の25年度修了の未修者の短答合格率は48.3%です。半数以上の初年度未修は、短答で不合格になっているのです。
そうすると、短答は勉強量を増やすと合格率が上がりますから、2回目の未修は、この短答合格率上昇の影響を受け易い。
また、短答で不合格になっている人は、2回目の受験でも「論文に受かりにくい人」とは必ずしもいえません。論文で規範・事実を書く意識はあり、論文が採点されていれば受かったであろう未修者が、短答で不合格になっていたというケースが、それなりにあるわけです。その場合、上記のイの法則の影響を受けにくくなる。その結果として、初年度と次年度の未修の差は付きにくい、あるいは、今年のように逆転することが出てくるのでしょう。