1 出願者数から予測できる今年の予備試験の短答・論文の難易度を検討します。
まず、受験者数の予測ですが、予備試験の受験率(出願者ベース)は、例年82%程度です。ですから、今年の予備試験の受験者数は、以下のようになると予測できます。
14494×0.82≒11885人
2 次に、予備試験の短答式試験の合格者数です。一昨年までは、これは「2000人基準」によって説明できました(「平成29年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。それが昨年は、「2500人基準」に変化したともとれるような結果になりました(「平成30年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。当初、これは論文合格者が400人を大きく超える場合を見越したものだろう、と考えていました。ところが、実際に論文の結果をみてみると、合格者数は459人にとどまりました。実際に論文の採点をしてみると、予想より全体の出来が悪かったのではないか、そして、その要因は論文受験者の増加によるところが大きいのではないか、というのが、当サイトの推測です(「平成30年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。
このようなことを考慮すると、今年は、昨年の反省から、短答は「2000人基準」に戻る可能性があるでしょう。一方で、昨年より受験者数が増えることを考慮して、昨年同様、「2500人基準」が採用される可能性も十分あるように思います。そこで、ここでは、短答合格者が2100人だった場合と、2600人だった場合を考えて、合格率(対受験者)を試算してみることにしましょう。
短答合格者数 | 短答合格率 |
2100 | 17.6% |
2600 | 21.8% |
以下は、これまでの短答合格率(対受験者)の推移です。
年 (平成) |
短答 合格率 |
23 | 20.6% |
24 | 23.8% |
25 | 21.8% |
26 | 19.5% |
27 | 22.1% |
28 | 23.2% |
29 | 21.3% |
30 | 23.8% |
31 |
17.6%? 21.8%? |
これをみると、短答合格者数が2600人なら、数字の上では平成29年と同じくらいの難易度ですが、2100人となると、これまでで最も厳しい短答となってしまうことがわかります。短答合格者が2100人程度だった場合でも大丈夫なように、短答は手を抜かずにやっておく必要があるでしょう。
3 論文はどうか。近時の論文式試験の合格点及び合格者数は、以下の法則で説明することができます(「平成30年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。
(1)210点に累計で400人以上存在しない場合は、210点が合格点となる。
(2)210点に累計で400人以上存在する場合は、5点刻みで初めて400人を超える点数が合格点となる(「400人基準」)。
(3)ただし、上記(2)を適用すると、合格点が245点を超える場合には、245点が合格点となる。
そして、平成27年、平成28年は、それ以前の傾向では説明の付かない平均点の上昇が生じた結果、上記(2)の「400人基準」によって、合格点及び合格者数が決定され(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(2)」)、平成29年は、初めて上記(3)が適用されて、論文合格者は469人となったのでした(「平成29年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。この上記(3)の基準の存在によって、受験生全体の出来が良ければ、合格者数が400人を大きく上回る可能性がでてきたのです。しかし、昨年は、全体の平均点が7点程度下がったことによって、再び上記(2)の「400人基準」が適用されたのでした(「平成30年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。
以上の経緯を踏まえると、今年の合格者数としては、概ね以下の3つのケースを考えておけばよさそうです。
① 基準(2)が適用されて、合格者数は410人くらいになる。
② 基準(2)又は(3)が適用されて、合格者数は460人くらいになる。
③ 基準(3)が適用されて、合格者数は510人くらいになる。
短答合格者数が2100人だった場合と、2600人だった場合のそれぞれについて、上記①から③までの論文式試験の短答合格者ベースの合格率を試算してまとめると、以下のようになります。
短答 合格者数 |
論文 合格者数 |
論文合格率 (対短答) |
2100 | 410 | 19.5% |
460 | 21.9% | |
510 | 24.2% | |
2600 | 410 | 15.7% |
460 | 17.6% | |
510 | 19.6% |
過去の数字と比べてみましょう。
年 (平成) |
論文 受験者数 |
論文 合格者数 |
論文合格率 |
23 | 1301 | 123 | 9.4% |
24 | 1643 | 233 | 14.1% |
25 | 1932 | 381 | 19.7% |
26 | 1913 | 392 | 20.4% |
27 | 2209 | 428 | 19.3% |
28 | 2327 | 429 | 18.4% |
29 | 2200 | 469 | 21.3% |
30 | 2661 | 459 | 17.2% |
今年の論文が最も厳しくなるシナリオは、短答合格者数が2600人で、論文合格者数が410人だった場合です。昨年同様、短答で多めに合格させたのに、実際に論文を採点してみると全然出来がよくなかったという場合、このような結果になる可能性があるでしょう。この場合には、論文合格率は15.7%となり、数字の上では平成24年に次ぐ厳しい年になる。逆に、最も易しくなるシナリオは、短答合格者数が2100人で、論文合格者数510人だった場合です。昨年の反省から短答を少なめにしたところ、意外にも論文の出来がとてもよかったという場合、このような結果になり得るでしょう。この場合、論文合格率は24.2%になります。これは、数字の上では、これまでで最も難易度の低い数字です。今年は、論文の難易度が両極端に振れる可能性のある年といえるでしょう。