1.出願者数から予測できる今年の予備試験の短答・論文の難易度を検討します。
まず、受験者数の予測ですが、予備試験の受験率(出願者ベース)から推計できます。以下は、平成27年以降の受験率の推移です。
年 | 出願者数 | 受験者数 | 受験率 |
平成27 | 12543 | 10334 | 82.3% |
平成28 | 12767 | 10442 | 81.7% |
平成29 | 13178 | 10743 | 81.5% |
平成30 | 13746 | 11136 | 81.0% |
令和元 | 14494 | 11780 | 81.2% |
令和2 | 15318 | ??? | ??? |
概ね、81~82%程度で推移していることがわかります。そこで、ここでは受験率を81.5%と仮定してみましょう。そうすると、受験者数は、以下のとおり、12484人と推計できます。
15318×0.815≒12484人
昨年と比較すると、受験者数は700人ほど増えることになりそうだ、ということがわかります。
2.次に、予備試験の短答式試験の合格者数です。近年は、短答合格者数の決定基準が不安定になっています。平成29年までは、これは「2000人基準」によって説明できました(「平成29年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。それが、平成30年は、「2500人基準」に変化したともとれるような結果となりました(「平成30年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。そして、昨年はというと、そもそも合格点が5点刻みになっていないという、異例の結果で、それは、「2500人基準」とすると、合格者数が2911人となって、多くなり過ぎるということを考慮したのではないか、とも思われたのでした(「令和元年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。
このようなことを考慮すると、今年も、基本的には「2500人基準」によりつつも、それだと合格者数が多すぎるとみえる場合には、2600人強くらいの合格者数に合格点を調整してくるのではないか、という推測が一応可能です。そこで、ここでは、短答合格者を2650人と想定して、合格率(対受験者)を試算してみることにしましょう。そうすると、今年の短答合格率(対受験者)は、以下のとおり、21.2%と推計できます。
2650÷12484≒21.2%
以下は、これまでの短答合格率(対受験者)の推移です。
年 |
短答 合格率 |
平成23 | 20.6% |
平成24 | 23.8% |
平成25 | 21.8% |
平成26 | 19.5% |
平成27 | 22.1% |
平成28 | 23.2% |
平成29 | 21.3% |
平成30 | 23.8% |
令和元 | 22.8% |
令和2 | 21.2%? |
こうしてみると、今年の短答式試験の数字の上での難易度は、平成29年と同じくらいになりそうだ、ということがわかります。昨年と比べてみましょう。昨年は、11780人が短答を受験して、2696人が合格。合格点は、162点でした。仮に、合格率が21.2%だったとすると、合格者数は2497人となり、得点別人員と対照すると、合格点は164点くらいとなります。順位にすると200番くらい、点数にすると2点くらい、昨年より難しくなりそうだ、ということがいえるでしょう。昨年、短答をぎりぎりの得点で合格したような人は、注意しておかないと、今年はやられてしまうかもしれません。とはいえ、全科目総合で2点程度の違いなので、ほとんど変わらないといってよいでしょう。
3.論文はどうか。平成29年以降の論文式試験の合格点及び合格者数は、「5点刻みで、初めて450人を超える得点が合格点となる。」という、「450人基準」で説明することができます(「令和元年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。これを前提とすると、今年の論文合格者数も、概ね460人~490人くらいと考えておけばよさそうです。そうすると、以下のとおり、論文合格率(対短答合格者)は、17.3%~18.4%と推計できます。
460÷2650≒17.3%
490÷2650≒18.4%
これを、過去の数字と比べてみましょう。
年 (平成) |
論文 受験者数 |
論文 合格者数 |
論文合格率 |
23 | 1301 | 123 | 9.4% |
24 | 1643 | 233 | 14.1% |
25 | 1932 | 381 | 19.7% |
26 | 1913 | 392 | 20.4% |
27 | 2209 | 428 | 19.3% |
28 | 2327 | 429 | 18.4% |
29 | 2200 | 469 | 21.3% |
30 | 2661 | 459 | 17.2% |
令和元 | 2580 | 494 | 19.1% |
令和2 | 2650 | 460~490 | 17.3~18.4% |
概ね、一昨年と昨年の間くらいの合格率です。どちら側に振れるかは、5点刻みで初めて450人を超える得点の人員が何人だったかという、偶然の事情によって左右されます。昨年の数字と比べてみましょう。仮に、昨年の論文合格率が17.3%だったとすると、合格者数は446人となり、得点別人員から読み取れる合格点は233点くらいとなります。したがって、最悪の場合を考慮すると、順位としては50番くらい、得点にすると3点くらい、昨年より難しくなりそうだ、といえます。とはいえ、予備試験の論文の合計点で3点というのは、1科目当たりにすると0.3点ということなので、感覚的にはほとんど違いがわからない程度の差でしかありません。
4.以上、みてきたように、今年は、短答、論文共に、数字の上での難易度は、昨年とほとんど変わらないか、わずかに難しくなるかもしれない、という感じです。もっとも、近年は、若年受験者の増加が頭打ちとなる一方、年配受験者が増加傾向にあります(「令和元年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」)。年配受験者は短答が得意な一方で、論文は極端に受かりにくい(「令和元年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)ので、この受験者層の変化は、数字の上での難易度よりも短答の難易度を高め、論文の難易度を下げる要素といえます。とはいえ、この受験者層の変化も、それほど急激なものではありません。ですので、受験対策という点では、昨年と同じ感覚で臨めばよいのだろうと思います。