1.令和2年予備試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は156点。合格者数は2529人。受験者合格率は23.8%でした。
2.以下は、合格点、合格者数等の推移です。
年 | 受験者数 | 短答 合格者数 |
短答 合格率 |
短答 合格点 |
平成23 | 6477 | 1339 | 20.6% | 165 |
平成24 | 7183 | 1711 | 23.8% | 165 |
平成25 | 9224 | 2017 | 21.8% | 170 |
平成26 | 10347 | 2018 | 19.5% | 170 |
平成27 | 10334 | 2294 | 22.1% | 170 |
平成28 | 10442 | 2426 | 23.2% | 165 |
平成29 | 10743 | 2299 | 21.3% | 160 |
平成30 | 11136 | 2612 | 23.4% | 160 |
令和元 | 11780 | 2696 | 22.8% | 162 |
令和2 | 10608 | 2529 | 23.8% | 156 |
平成25年から平成29年までは「2000人基準」、すなわち、「5点刻みで、最初に2000人を超えた得点が合格点となる。」というルールで、説明ができました(「平成29年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。平成30年は、それが「2500人基準」へと、変更されたようにみえたのでした(「平成30年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。それでも、「5点刻み」というルールは、維持されていたのです。
それが、昨年になって、初めて5点刻みではない合格点となりました。当時、当サイトは、5点刻みの「2500人基準」を形式的に適用すると合格者数が増えすぎてしまうので、若干合格点を引き上げた結果ではないか、と考えていたのでした。
(「令和元年予備試験短答式試験の結果について(1)」より引用)
おそらく、当初は「2500人基準」で決定することとして、合格者数は大体2600人くらいだろうと想定していたのでしょう。ところが、実際には、「2500人基準」を適用すると、2500人を大きく上回る2911人が合格してしまう。そこで、さすがにこれはちょっと多すぎるのではないか、という異論があって、若干合格点を上げることになった。161点にしてもまだ2806人も合格するので、もう1点上げて162点とした。そういうことだったのでしょう。
(引用終わり)
3.さて、今年の合格点をみると、156点。今年も、昨年と同様に、「5点刻み」ではない合格点となりました。もっとも、そうなった理由は、昨年とは違うようです。以下は、法務省の得点別人員調から、合格点前後の得点の人員数をまとめたものです。
得点 | 人員 | 累計 人員 |
161 | 79 | 2076 |
160 | 94 | 2170 |
159 | 88 | 2258 |
158 | 97 | 2355 |
157 | 86 | 2441 |
156 | 88 | 2529 |
155 | 83 | 2612 |
154 | 104 | 2716 |
153 | 88 | 2804 |
152 | 91 | 2895 |
151 | 117 | 3012 |
仮に、「5点刻みで、最初に2500人を超えた得点が合格点となる。」というルールを適用したとすると、今年の合格点は155点。合格者数は、2612人となったはずでした。昨年とは違い、これはこれで、落ち着きの良い数字です。5点刻みでも特に不都合がないのに、5点刻みにしなかった。これが、昨年との違いです。
では、どのようなルールだったのか。上記の表をみれば、「2500人基準」ではあるが、5点刻みではなく、1点刻みになった。すなわち、「1点刻みで、最初に2500人を超えた得点が合格点となる。」
というルールで説明できそうだ、ということがわかるでしょう。今年は、昨年のように、「5点刻みだと不都合だったから」という事情を経由せずに、初めから1点刻みで考えるようになった。最近では、受験者数が1万人強で推移していることもあって、合格点前後の1点に100人弱の人員が存在するので、5点刻みだと偶然の事情で500人弱の合格者数の変動が生じてしまいかねない状況でした。よく考えてみれば、5点刻みでないといけない理由は別にないわけだから、それなら最初から1点刻みで考えればいいじゃない。そういうことなのでしょう。
4.今年の合格点が、上記のような理由で、新たな「1点刻みの2500人基準」によって決定されたとすれば、今後も、しばらくは同様の基準が用いられる可能性が高いでしょう。このことは、年ごとの短答合格者数のブレが小さくなることを意味します。今後は、短答合格者数が2500人を大きく上回るということは、生じにくくなるでしょう。5点刻みから1点刻みへの変更には、合格者数を抑制する効果があるのです。
現在、予備の論文は、5点刻みの「450人基準」によって、合格点が決められているとみえます(「令和元年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。昨年の論文合格者数が494人と、450人を大きく上回る数字となったのも、5点刻みであったことによるものといえます。仮に、論文も1点刻みになるとすれば、450人を大きく上回る可能性は低くなるでしょう。論文式試験の結果が公表された際には、このことは1つの注目点となります。