「供述」の意味を理解する(その2)
(令和5年司法試験刑事系第2問)

1.この記事は、以前の記事(「「供述」の意味を理解する(その1)(令和5年司法試験刑事系第2問)」)の続きです。
 今回は、実況見分調書①の写真下説明部分についてです。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

5 ……(略)……Qは、甲方から押収されたピッキング用具と同種のもの及び本件犯行時にV方に設置されていた錠と同種の特殊な錠を準備し、同日、同署において、甲に対し、「この道具を使って、この錠を開けられますか。」と尋ねた。甲は、随時説明しながらピッキング用具を使って解錠した。後日、Qは、その解錠の状況につき、【実況見分調書①】を作成した。同調書には、甲が解錠している前記状況を連続して撮影した写真が複数枚添付されており、これらの写真の下に、それぞれ「被疑者は、『このように、ピッキング用具を鍵穴に入れてこうして動かしていくと解錠できます。』と説明した。」との記載があった。また、甲が解錠された後の錠を指さしている場面の写真1枚が添付されており、その下に「被疑者は、『このように解錠できました。』と説明した。」との記載があった。

(引用終わり)

2.まず、「このように、ピッキング用具を鍵穴に入れてこうして動かしていくと解錠できます。」という発言部分を考えてみましょう。「供述」とは、体験した事実を言語等によって再現することをいうのでした。この発言には、体験した事実の再現が含まれているか。まず、「解錠できます。」という現在形である点に注目します。これは、今からこうして解錠しますよ、という意味。なので、「過去にこうやって解錠したんですよ。」という意味ではない。この点から、この発言は、今から行う(ないしは、今行っている)動作を説明しているだけで、「過去にこんな事実があったんですよね。」という意味ではない、ということがわかります。「こうして動かしていくと」という部分も、「過去にこうして動かしました」という意味でないことが明らか。それから、以前の記事(「供述の意味を理解する(その1)(令和5年司法試験刑事系第2問)」)で説明したとおり、写真部分が過去の再現でないのだから、それを説明する甲の発言も、過去の再現でないといえるでしょう。
 以上から、「このように、ピッキング用具を鍵穴に入れてこうして動かしていくと解錠できます。」という発言は、そもそも供述でないので、要証事実がどうのこうのという以前に、伝聞証拠に当たりようがない、ということになります。この部分も、「内容の真実性が問題になるか」という文脈で検討すると、「本当にピッキング用具を鍵穴に入れて解錠したのかという点の真実性が問題となる。」とか言えてしまいそうで、「内容の真実性が問題になる」という判断基準が機能しないことがわかります。

3.次に、「このように解錠できました。」という発言部分を考えます。この発言には、体験した事実の再現が含まれているか。まず、「できました。」という過去形である点に注目します。これは、過去にそうだった、という意味。すなわち、過去の事実を内容とするのが普通です。そして、「このように解錠」とは、自分が自ら行った解錠の事実を指すのでしょう。したがって、甲が過去に体験した事実の再現が含まれているといえる。「めっちゃ直前のことなんだから、過去の事実っていえないんじゃね?」と思うかもしれません。しかし、例えば、直前に発生したひき逃げについて、「1分くらい前に目撃した被害者を引いて走り去った車のナンバーは◯◯です。」という発言を考えてみれば、めっちゃ直前の事実でも、その再現が供述となることは明らかでしょう。これが、「被害者を引いて走り去った車のナンバーは〇〇である。」という過去に体験した事実の再現であり、供述といえることを否定する人はいないと思います。
 以上から、「このように解錠できました。」という発言は、供述である。もっとも、この供述は、その再現どおりの事実の存在を要証事実とするものでないこと(=指示説明であること)があまりにも明らかなので、要証事実の点を先読みして、「そもそも供述証拠ではない。」と表現されがちです。しかし、厳密には、供述証拠である(供述を内容とする)ことと、その再現どおりの事実の存在を要証事実とする(伝聞証拠である)ことは別問題なので、区別した方がよいと思います(※)。
 ※ 供述証拠の定義の中に、「再現どおりの事実の存在を要証事実とする」という要素を含めている概説書等も多いのですが、その定義によると、そもそも供述でないのか、「再現どおりの事実の存在を要証事実とする」という要素を欠くのかが不明瞭になってしまいます。また、供述証拠の定義の記載では「再現どおりの事実の存在を要証事実とする」という要素を含めているのに、「供述証拠を内容の真実性の立証に用いない場合には、非伝聞である(非供述証拠的利用)。」のような説明をする概説書等もあったりして、「内容の真実性の立証に用いない場合は定義上『供述証拠』っていえないから、『供述証拠を内容の真実性の立証に用いない場合』とかあり得なくね?」とか、「その定義だと『非供述証拠的利用』じゃなくて、単なる非供述証拠っていうべきでないの?」という疑問を誘発することになります。この辺りは、概説書等でも混乱した記載が多いことには、留意すべきでしょう。

4.以上を答案にすると、当サイトの参考答案(その2)のようになるでしょう。

(参考答案(その2)より引用)

(3)甲発言引用部分

ア.「このように、ピッキング用具を鍵穴に入れてこうして動かしていくと解錠できます。」の部分は、甲がこれから行う動作を説明するにすぎず、甲が体験した事実を再現するものでないから、供述でない。

イ.「このように解錠できました。」の部分は、甲が体験した解錠の事実を言語で再現するから、供述を内容とする。

(引用終わり)

 

 

戻る