法施行令4条1項1号該当性
(令和6年司法試験論文式公法系第2問)

1.令和6年司法試験論文式公法系第2問設問1小問(2)。前回の検討(「施設建築物?(令和6年司法試験論文式公法系第2問)」)で、後は、法施行令4条1項1号該当性を検討すればよいことが分かりました。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

【資料 関係法令】

 (中略)

○ 都市再開発法施行令(昭和44年政令第232号)(抜粋)

(縦覧手続等を要しない事業計画等の変更)
第4条 事業計画の変更のうち法第38条第2項(中略)の政令で定める軽微な変更(中略)は、次に掲げるものとする。

 一 都市計画の変更に伴う設計の概要の変更
 二 施設建築物の設計の概要の変更で、最近の認可に係る当該施設建築物の延べ面積の10分の1をこえる延べ面積の増減を伴わないもの
 三 事業施行期間の変更
 四 資金計画の変更
 五 その他第2号に掲げるものに準ずる軽微な設計の概要の変更で、国土交通省令〔注・施設建築敷地内の主要な給排水施設や消防用水利施設等の位置の変更等が挙げられている〕で定めるもの

2、3 (略)

(引用終わり)

 「【本件の事案の内容】」を改めて高速で確認すると、以下の部分が目に付くでしょう。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

【本件の事案の内容】

 (中略)

 令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。
 本件都市計画変更を受けて、B地区組合は、平成28年認可に係る事業計画を変更すべく、Q県知事に対し、C地区を本件事業の施行地区に編入して公共施設である公園とする一方で、設計の概要のうち当該公園を新設すること以外は変更しないという内容で、事業計画の変更の認可を申請した(法第38条第1項)。

(引用終わり)

 「本件都市計画変更を受けて」とあるから、「都市計画の変更に伴う」といえそうだし、「設計の概要のうち当該公園を新設すること以外は変更しない」とあるから、「設計の概要の変更」といえそうだ。それなら、1号該当ということになるのではないか。仮に、本問が適法・違法のどちらの結論でもよい問題であれば、上記部分を書き写して1号該当で適法、という結論にしてもよいでしょう。しかし、本問は、違法の結論という縛りがあります。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

〔設問1〕
(1) (略)
(2) 本件事業計画変更認可が違法であることについて、Dはどのような主張をすることが考えられるか、検討しなさい。

(引用終わり)

 なんとかして1号不該当の結論にしないといけない。「なんかないの?」という目で、改めて問題文をガン見すれば、本件都市計画変更と本件事業計画変更認可に係る事業計画変更の内容の間にズレがあることに気付くことができるでしょう。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

【本件の事案の内容】

 (中略)

 令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。
 本件都市計画変更を受けて、B地区組合は、平成28年認可に係る事業計画を変更すべく、Q県知事に対し、C地区を本件事業の施行地区に編入して公共施設である公園とする一方で、設計の概要のうち当該公園を新設すること以外は変更しないという内容で、事業計画の変更の認可を申請した(法第38条第1項)。

(引用終わり)

 ざっくり見ただけでも、「本件都市計画変更では『C地区を公園にする。』なんて言っていない。公園の件は、事業計画変更の方で初めて出てきてる。」ということには気が付くでしょう。これを指摘できただけでも、ここは結構上位だと思います。

2.もう1つ、慎重に読むと、実は、「施行区域」と「施行地区」は全然違う概念で、本件都市計画変更で施行区域に編入されても、当然に本件事業の施行地区にしなきゃいけないわけではないことも、問題文・関係法令から読み取れるようになっています。

問題文より引用。太字強調は筆者。)

【市街地再開発事業の制度の概要】

 (中略)

 都市計画に定められた第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、5人以上共同して、定款及び事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けることにより、市街地再開発組合(以下「組合」という。)を設立することができる(法第11条第1項)。組合は、施行区域内の土地について、同事業を施行することができる(法第2条の2第2項)。都市計画に定められた施行区域内の土地のうち、事業計画において同事業が施行される土地として定められた地区を「施行地区」といい(法第2条第3号)、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者の全員が、強制的に組合の組合員とされる(法第20条第1項)。

 (中略)

【本件の事案の内容】

 (中略)

 令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。
 本件都市計画変更を受けて、B地区組合は、平成28年認可に係る事業計画を変更すべく、Q県知事に対し、C地区を本件事業の施行地区に編入して公共施設である公園とする一方で、設計の概要のうち当該公園を新設すること以外は変更しないという内容で、事業計画の変更の認可を申請した(法第38条第1項)。

 (中略)

【資料 関係法令】

○ 都市計画法(昭和43年法律第100号)(抜粋)

(市街地開発事業)
第12条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる事業を定めることができる。
 一~三 (略)
 四 都市再開発法による市街地再開発事業
 五~七 (略)
2 市街地開発事業〔注・第12条第1項各号に掲げる事業をいう。〕については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めるものとするとともに、施行区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
3~6 (略)

 (中略)

○ 都市再開発法(昭和44年法律第38号)(抜粋)

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 (略)
二 施行者 市街地再開発事業を施行する者をいう。
三 施行地区 市街地再開発事業を施行する土地の区域をいう
四 公共施設 道路、公園、広場その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
五 宅地 公共施設の用に供されている国、地方公共団体その他政令で定める者の所有する土地以外の土地をいう。
六 施設建築物 市街地再開発事業によつて建築される建築物をいう。
七~十三 (略)

(市街地再開発事業の施行)
第2条の2 (略)
2 市街地再開発組合は、第一種市街地再開発事業の施行区域内の土地について第一種市街地再開発事業を施行することができる。
3~6 (略)

(引用終わり)

 そうすると、「C地区を施行地区に編入する」という点についても、実は本件都市計画変更によって当然に決まるものじゃなさそう。厳密には、それでも「伴う」とはいえそうな感はありますが、D側の主張なので、そこは強気で書いても許されるだろう。じゃあ、ここも書き写すか。当サイト作成の参考答案(その1)は、そのようにして書いています。

(参考答案(その1)より引用)

 事業計画変更認可をするには、「軽微な変更」を除き、縦覧・意見書提出手続を要する(法38条2項、16条)。
 本件事業計画変更認可につき、Q県の担当部局は「軽微な変更」に当たると判断した。確かに、本件事業計画変更認可は、本件都市計画変更を受けて申請され、設計の概要のうち公園新設以外は変更しない内容であるから、「都市計画の変更に伴う設計の概要の変更」(法施行令4条1項1号)に当たるとみえる。
 しかし、都市計画で定めるのは市街地開発事業の種類、名称及び施行区域で(都計法12条2項)、本件都市計画変更はC地区を施行区域に編入するものである。C地区を本件事業の施行地区に編入して公共施設である公園とすることは本件都市計画変更で決まっておらず、「都市計画の変更に伴う」とはいえない
 以上から、「都市計画の変更に伴う設計の概要の変更」(法施行令4条1項1号)に当たらない。Q県知事がR市長に縦覧・意見書提出手続を実施させなかったのは違法である。

(引用終わり)

 これが、受験生が現場で書ける限界でしょう。ここまで書けた人は、上位者でもほとんどいないと思います。

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