1.令和6年司法試験論文式公法系第2問設問1小問(2)。前回の検討(「施設建築物?(令和6年司法試験論文式公法系第2問)」)で、後は、法施行令4条1項1号該当性を検討すればよいことが分かりました。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 【資料 関係法令】 (中略) ○ 都市再開発法施行令(昭和44年政令第232号)(抜粋) (縦覧手続等を要しない事業計画等の変更) 一 都市計画の変更に伴う設計の概要の変更 2、3 (略) (引用終わり) |
「【本件の事案の内容】」を改めて高速で確認すると、以下の部分が目に付くでしょう。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 【本件の事案の内容】 (中略)
令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。 (引用終わり) |
「本件都市計画変更を受けて」とあるから、「都市計画の変更に伴う」といえそうだし、「設計の概要のうち当該公園を新設すること以外は変更しない」とあるから、「設計の概要の変更」といえそうだ。それなら、1号該当ということになるのではないか。仮に、本問が適法・違法のどちらの結論でもよい問題であれば、上記部分を書き写して1号該当で適法、という結論にしてもよいでしょう。しかし、本問は、違法の結論という縛りがあります。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 〔設問1〕 (引用終わり) |
なんとかして1号不該当の結論にしないといけない。「なんかないの?」という目で、改めて問題文をガン見すれば、本件都市計画変更と本件事業計画変更認可に係る事業計画変更の内容の間にズレがあることに気付くことができるでしょう。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 【本件の事案の内容】 (中略) 令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。 (引用終わり) |
ざっくり見ただけでも、「本件都市計画変更では『C地区を公園にする。』なんて言っていない。公園の件は、事業計画変更の方で初めて出てきてる。」ということには気が付くでしょう。これを指摘できただけでも、ここは結構上位だと思います。
2.もう1つ、慎重に読むと、実は、「施行区域」と「施行地区」は全然違う概念で、本件都市計画変更で施行区域に編入されても、当然に本件事業の施行地区にしなきゃいけないわけではないことも、問題文・関係法令から読み取れるようになっています。
(問題文より引用。太字強調は筆者。) 【市街地再開発事業の制度の概要】 (中略) 都市計画に定められた第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、5人以上共同して、定款及び事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けることにより、市街地再開発組合(以下「組合」という。)を設立することができる(法第11条第1項)。組合は、施行区域内の土地について、同事業を施行することができる(法第2条の2第2項)。都市計画に定められた施行区域内の土地のうち、事業計画において同事業が施行される土地として定められた地区を「施行地区」といい(法第2条第3号)、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者の全員が、強制的に組合の組合員とされる(法第20条第1項)。 (中略) 【本件の事案の内容】 (中略) 令和4年になって、R市は、B地区から見て河川を越えた対岸にある約2千平方メートルの空き地(以下「C地区」という。)を施行区域に編入するために、上記平成27年に決定された都市計画を変更した(以下「本件都市計画変更」という。)。……(略)……。 (中略) 【資料 関係法令】 ○ 都市計画法(昭和43年法律第100号)(抜粋) (市街地開発事業) (中略) ○ 都市再開発法(昭和44年法律第38号)(抜粋) (定義) (市街地再開発事業の施行) (引用終わり) |
そうすると、「C地区を施行地区に編入する」という点についても、実は本件都市計画変更によって当然に決まるものじゃなさそう。厳密には、それでも「伴う」とはいえそうな感はありますが、D側の主張なので、そこは強気で書いても許されるだろう。じゃあ、ここも書き写すか。当サイト作成の参考答案(その1)は、そのようにして書いています。
(参考答案(その1)より引用)
事業計画変更認可をするには、「軽微な変更」を除き、縦覧・意見書提出手続を要する(法38条2項、16条)。 (引用終わり) |
これが、受験生が現場で書ける限界でしょう。ここまで書けた人は、上位者でもほとんどいないと思います。