令和3年司法試験の出願者数について(2)

1.今回は、明らかになった出願者数から、今年の司法試験についてわかることを考えてみます。以下は、直近5年の出願者数、受験者数、合格者数等をまとめたものです。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
平成29 6716 5967 88.8%
平成30 5811 5238 90.1%
令和元 4930 4466 90.5%
令和2 4226 3703 87.6%
令和3 3754 ??? ???

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
平成29 3937 65.9%
平成30 3669 70.0%
令和元 3287 73.6%
令和2 2793 75.4%
令和3 ??? ???

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
平成29 1543 39.1% 25.8%
平成30 1525 41.5% 29.1%
令和元 1502 45.6% 33.6%
令和2 1450 51.9% 39.1%
令和3 ??? ??? ???

2.まず、受験者数の予測です。これは、出願者数に受験率を乗じることで、算出できます。受験率は、直近では概ね90%程度です。昨年は、出願後に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じ、緊急事態宣言が発出されて試験日程が延期されるに至りました。昨年の受験率が例年より低いのは、そうしたイレギュラーな事情によるものでしょう。今年は、ある程度状況がわかった上で出願していますので、それほど受験率は低下しないと考えられます。そこで、受験率を90%と仮定して、試算しましょう。

 3754×0.9≒3378

 受験者数は、3378人と推計でき、昨年より325人程度減少するだろうということがわかります。

3.次に、短答合格者数です。現在の短答式試験の合格点は、論文の合格者数を踏まえつつ、短答・論文でバランスのよい合格率となるように決められているとみえます(「令和2年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。そうだとすると、短答合格者数を考えるに当たっても、先に論文合格者数がどうなるかを、考えておく必要があるでしょう。そこで問題となるのは、「1500人程度」の下限が、今年は完全に無視されるか、ということです。

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)より引用。太字強調は筆者。)

  新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

(1)以下は、直近5年の論文合格者数の推移です。

論文合格者数
平成28 1583
平成29 1543
平成30 1525
令和元 1502
令和2 1450

 平成28年以降、毎年のように、「今年こそは1500人を割り込むに違いない。」などと言われながら、令和元年までは結果的に1500人の下限が守られてきたのでした。それが、昨年、ついに1500人を割り込む1450人となりました。もっとも、ぎりぎり「1500人程度」といえそうな微妙な数字でもあったのでした(「令和2年司法試験の結果について(1)」)。この数字だけを見て、「1500人を割り込んだのだから、もはや1500人という数値目標は意味をなさなくなった。」と考えるのは早計ですし、一方で、「今年も1500人程度といえる枠内に必ず収まるだろう。」と考えるのも楽観に過ぎるというものです。
 そこで、次に考えるべきことは、前回の記事(「令和3年司法試験の出願者数について(1)」)でも紹介した法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(いわゆる連携法)等の改正に伴い設定される法科大学院の入学定員の上限との関係です。この入学定員管理の趣旨は、予測可能性の高い制度とすること、いい換えれば、再び合格率が急落する事態が生じないようにすることでした。

 

法科大学院等特別委員会(第92回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

小幡専門教育課長 定員管理に関するところでございますが,法務大臣と文部科学大臣の相互協議の規定の新設ということで,法務大臣と文部科学大臣は,法科大学院の学生の収容定員の総数その他の法曹の養成に関する事項について,相互に協議を求めることができることなどを規定することとしております。 また,この後,こちらも省令でございますけれども…学校教育法施行令を改正し,法科大学院の定員増を認可事項とし,文科省告示により,入学定員総数について,現状の定員規模である2,300人程度を上限とすることを検討しているということでございます。これによりまして法科大学院の定員管理の仕組みを設け,予測可能性の高い法曹養成制度を実現するということを目的としております。

(引用終わり)

参院法務委員会令和元年5月30日より引用。太字強調は筆者。)

政府参考人(森晃憲君) 法科大学院制度については、制度発足時、数多くの法科大学院が設置されて過大な定員規模となったこと、それから、修了者の合格率が全体として低迷していること、そして、数多くの学生が時間的負担が大きいと感じている、そういった課題がございます。また、司法試験合格者については、当面千五百人規模は輩出されるような必要な取組を進めるということとされておりまして、こうした状況を踏まえまして、今回の改正案については、法務大臣と文科大臣の相互協議の規定を新設して法科大学院定員管理の仕組みを設けたこと、それから、法科大学院において涵養すべき学識等を具体的に規定して法科大学院教育の充実を図ること、さらに、今御指摘がありました3プラス2の制度化と司法試験の在学中受験の導入によりまして、時間的、経済的負担の軽減を図ることとしております。

(引用終わり)

 

 定員の上限を2300人程度としたとしても、合格者数が1500人を大きく割り込んでしまえば、「合格率が高くなったと聞いて法科大学院に入学したのに、自分が修了する頃には合格率が急落してしまっていた。」ということになるでしょう。これでは、予測可能性の高い制度にはならない。このように考えると、定員に上限を設ける施策は、合格者数が1500人を大きく下回らないことを前提としているといえるのです。このように考えると、昨年の1450人から合格者数が大きく減少することはないのではないか、という予測にも根拠があるといえるでしょう。
 もっとも、この合格者数1500人というのは、毎年2300人が法科大学院に入学してくるという前提で試算された数字です。ところが、前回の記事(「令和3年司法試験の出願者数について(1)」)でみたとおり、実際の入学者数は令和2年度で1711人と、全く届いていない。そうすると、実入学者数が2300人程度まで回復してくるまでは、合格者数が1500人を相当程度下回っても構わない、と考えることができます。このように考えてくると、昨年より合格者数が減っても不思議ではないともといえるでしょう。

(2)もう1つ、考えるべきファクターとして、累積合格率があります。

 

規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定) より引用。太字強調は筆者。)

 法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が新司法試験に合格できるよう努める。

 (引用終わり)

 

 上記閣議決定の「約7~8割」は、各年の受験者合格率ではなく、修了生が受験回数制限を使い切るまでに、最終的に7~8割が合格するということ、すなわち、累積合格率を意味します(「令和元年司法試験の結果について(2)」)。現在でも、この目標は維持されています。

 

衆院文部科学委員会平成31年4月24日より引用。太字強調は筆者。)

畑野君枝(共産)委員 七、八割が合格できるという点についてはどうなったのですか。

小出邦夫政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げました平成二十七年の法曹養成制度改革推進会議決定では、法科大学院全体としての司法試験合格率などが制度創設当初に期待されていた状況と異なり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っているとされまして、法科大学院改革により、各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率として、おおむね七割以上が司法試験に合格できるよう充実した教育が行われることを目指すとされたところでございます。

(引用終わり)

 

 そして、各年の受験者合格率をPとするとき、受控えや中途の撤退等を考慮しない単純な想定の下での累積合格率は、以下の算式で表すことができます。

 1-(1-P)

 以下は、上記の算式に基づいて、今年の論文合格者数と対応する累積合格率をまとめたものです。

論文
合格者数
受験者
合格率
累積
合格率
1500 44.4% 94.6%
1300 38.4% 91.1%
1100 32.5% 85.9%

 かつては、累積合格率が7割に達しないことが問題にされていましたが、現在ではむしろ、累積合格率が高くなりすぎるのではないか、ということを考える段階になっています。仮に、累積合格率が9割を超えるようなら、前記閣議決定の「約7~8割」の枠を超えてしまいますし、試験として適切に機能しているかが疑わしくなってくるでしょう。その観点から上記の表をみると、仮に合格者数が1300人まで減少しても、9割を超える累積合格率になることがわかります。司法試験委員会がこのことを考慮して、「1300人くらいまで減らしても全然問題ない。」と考えるかもしれません。さらにいえば、1100人まで減らしても、8割5分の水準となるので、「1100人でもいいんじゃないの?」と判断される可能性も否定できないでしょう。もっとも現時点の法科大学院全体の累積合格率は53.7%(「各法科大学院の平成28年度~令和2年度入学者選抜実施状況等」参照)にとどまっていますから、累積合格率が高くなりすぎるという心配をするには早すぎるという感じもします。上記の試算に基づく累積合格率は、受控えや中途の撤退等を考慮していませんし、予備組を含んだ数字なので、法科大学院修了生に限った実際の累積合格率は、もう少し低い数字になるでしょう。そのようなことも考慮すると、今年はまだ1500人前後で問題ない、という判断がされても不思議ではないという感じもします。

(3)ここまで、色々と考えてきましたが、そもそもそのような議論は無意味である、という考え方も十分成り立ちます。なぜなら、合格者数は結局のところ司法試験委員会が勝手に決めるので、実は「1500人程度」とか、「修了生7割」というような数値目標には意味がないからです。

 

法曹養成制度検討会議第14回会議議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁(早大)委員 これまでも何度か申し上げてきましたけれども,今の司法試験のシステムというのは,政策的に何人と決めて,それに合わせて合格者を決めるという性質のものではありません。受験者の学力といいますか,試験の成績を司法試験委員会のほうで判定して決めている。その結果として2,000人なら2,000人という数字になっているということなので,その仕組みを変えない限り,それを何千にするということを言うわけにはいかない性質のものだと思います。ですから,法曹人口の問題については,このぐらいのところを目指すべきだということは言えるかもしれないですけれども,合格者を何人にしろというのは現行の制度では無理で,仮にそうするというのでしたら,現行の司法試験の合格者決定の仕組み自体を変えろという提言をしないといけないということになるだろうと思います。

(引用終わり)

参院法務委員会令和元年5月30日より引用。太字強調は筆者。)

政府参考人(小出邦夫君) 推進会議決定におきましては、今後新たに養成し、輩出される法曹の規模として千五百人程度は輩出されるよう必要な取組を進めることとされております。他方…司法試験委員会においては、この推進会議決定を踏まえつつ毎年の司法試験の合格者を決定しているものと承知しております。
 ただ、司法試験の合格者は、あくまでも実際の試験結果に基づいて決定されるものでございます。実際の試験の結果と関わりなく一定数を合格させるものではございません。したがいまして、あらかじめ決められた一定数を合格させる試験ではないといった法務省の答弁の趣旨は、こういったことを説明したものでございます。

(引用終わり)

 

 かつて、合格者数3000人を目指すと言われていた当時も、司法試験委員会は、その数字にはとらわれない合否判定をしていたとされています。

 

平成20年度規制改革会議第1回法務・資格タスクフォース議事概要より引用。太字強調は筆者。)

佐々木宗啓法務省大臣官房司法法制部参事官 再々申し上げていますように、司法試験合格者数につきましては、司法試験委員会においてどうするということが判定される。そのときに判定する基準は、受験者が法曹三者になろうとするものに必要な学識及びその応用能力を有するか否かということになります。このような判定基準によるそういう資格試験ですので、実際に採点してみないと、その基準に達する者が何人いるかはわからない
 あと、このことに関しましては司法試験委員会の方で、一応の目安となる合格者の概数を発表してございますが、これはあくまでも概数であって、優秀な方がたくさんいれば数字は上がるでしょうし、優秀な方がほとんどいなければ数字は下がる。そういうような性格のものでございますので、今の段階での見通しを言うことはなかなか難しいと思います。

 (中略)

福井秀夫(政策研究大学院大学教授)主査 その目標の数字を前提とすると、おっしゃったことは資格試験だから能力本位で、数は後から付いてくるものだという御趣旨の建前だと思うんですが、実際には数の目標で、ある程度のボリュームをコントロールすると、ボーダーラインの水準は常に動くはずですね。その関係はどう見ておられますか。

佐々木参事官 特にボリュームをコントロールしているということではなくて、司法試験委員会において、この程度まで達していれば法曹となろうとする者にふさわしい能力があるということを考えられて,そこで切っているので、数ありきの判定ではないと御理解いただければと思います。

福井主査 仮に 3,000 人の目標年次においてふさわしい能力の者が、今年は特別できが悪くて 300 人しかいなかったというときに、10 分の1の 300 人を合格者にするということは少し考えにくいのではないですか

佐々木参事官 我々としては、300 人であれば 300 人でしょうし、6,000 人ならば 6,000 人なのではないか,と申し上げることになります

福井主査 一応、政府の方針は司法試験委員会としては勘案されるわけでしょう

 佐々木参事官 勘案はしますけれども、質を低下させるということはできない,質を維持し確保しながらの増員というのが閣議決定の内容と考えているわけです。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第42回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

土屋美明(共同通信)委員  すいません、私、司法試験委員会の委員をしておりまして、説明しなければならない立場かと思うのですが、皆さんご存知の通りこれは守秘義務がございます。そういう意味では中身をですね、全部お話するという事はとても出来なくて申し訳ないと思うんですが、今回初めて考査委員の会議にも出席させて頂いて、色んな方のお話を伺いました。非常に多彩な意見の方がいて、昨年までの考査委員の会議の判定の仕方と今年は違っているという風に事務局からはうかがいました委員の皆さんの考え方がより反映されるような判定をするという方式に変わったという風に了解しております。一応目安として、本年度3,000人程度と言う合格者数、2,900人から3,000人と言う目安が出されてはおりましたけれども、それとの関連で合格者数を決めるというような発想はあまり取られていなかったように私は受け止めました。私の感じです。あくまで委員の皆さんがこの結果でもって、法曹資格を与えるに値するかどうかという事を非常に慎重に議論されていらっしゃる。受験者の中身を見ようという風に皆さん考えていらっしゃったという事が言えるかと思います。私の感想は以上です。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第48回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁(東大)座長代理  司法試験については、司法試験委員会ないし法務省の方の見解では、決して数が先にあるのではなく、あくまで各年の司法試験の成績に基づいて、合格水準に達している人を合格させており、その結果として、今の数字になっているというのです。確かに、閣議決定で3,000人というのが目標とはされているのだけれども、受験者の成績がそこまでではないから、2,000ちょっとで止まっているのだというわけです。それに対しては、その合格者決定の仕方が必ずしも外からは見えないこともあり、本当にそうなのかどうか、合格のための要求水準について従来どおりの考え方でやっていないかどうかといった点も検証する必要があるのではないかということは、フォーラムなどでも申し上げております。

(引用終わり)

 

 考査委員の側から言わせれば、別に合格者数の目安を無視したいというわけではないが、採点していて満足な答案が少ないので、これ以上合格点を下げてまで合格者数を増やしてはさすがにダメだろうという感覚があって、やむを得ずそうしているのだ、ということになるのでしょう。これは、合格者数が少ないといわれていた旧司法試験時代からあった話です。特に実務家の考査委員は研修所教官であることも多いので、ここで甘くすると、後で自分が困るという事情もあったりするわけです。

 

司法制度改革審議会集中審議(第1日)議事録より引用。太字強調は筆者。)

藤田耕三(元広島高裁長官)委員 大分前ですけれども、私も司法試験の考査委員をしたことがあるんですが、及落判定会議で議論をしますと、1点、2点下げるとかなり数は増えるんですが、いつも学者の試験委員の方が下げることを主張され、実務家の司法研修所の教官などが下げるのに反対するという図式で毎年同じことをやっていたんです学者の方は1点、2点下げたところで大したレベルの違いはないとおっしゃる研修所の方は、無理して下げた期は後々随分手を焼いて大変だったということなんです
 そういう意味で学者が学生を見る目と、実務家が見る目とちょっと違うかなという気もするんです。口述試験も守秘義務があるから余り言っちゃいけないのかもしれませんけれども、あるレベルの点数がほとんどの受験者について付くんですが、出来がよければプラス1、プラス2、悪ければマイナス1、マイナス2というような点を付けます。本当は全科目についてレベル点以上を取らなければいけないのですが、それでは予定している人数に達しないので、1科目や2科目、マイナスが付いているような受験生も取るということでやっていました。そういう意味では以前のことではありますけれども、質的なレベルについてはかなり問題があるんじゃないでしょうか。

(引用終わり)

法曹の養成に関するフォーラム第13回会議議事録より引用。太字強調は筆者。)

鎌田薫(早大総長)委員 実際には旧試験の合格者が500人とか1,000人の時代でも,正直言って本当に満足できる答案は1,000人なんかとてもいないのに,1,000人合格させていたというふうな印象が採点する側にはある

(引用終わり)

 

 実務家委員の方が学者委員より厳しいという図式は、法科大学院教員が排除された平成28年に合格者数が急減し、法科大学院教員が戻ってきた平成29年に合格者数がほとんど減らなかったということとも符合します(「平成30年司法試験の出願者数について(2)」)。
 以上のことを踏まえると、今年の試験が実施されて実際に採点された段階で、全体の出来が悪いと考査委員が判断すれば、上記推進会議決定にかかわらず、合格者数が昨年の1450人をさらに下回ることは普通にあり得る、ということになるわけです。

(4)以上のことから導かれる結論は、にゃんともいえない、ということです。 

4.そういうわけで、ここでは、いくつかの場合を想定して、シミュレーションをしてみましょう。

(1)まず、論文合格者数が昨年と同じ数字だった場合、すなわち、合格者数1450人だった場合です。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):56.9%
論文合格率(対受験者):42.9%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、特に対短答の論文合格率がちょっと高過ぎはしないか、という感じはするところです。そこで、論文の対短答合格率を、昨年と同水準の51.9%にすると、どうなるか。この場合、短答合格者数は2793人となりますから、まとめると、以下のようになります。

短答合格者数:2793人
短答合格率(対受験者):82.6%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):51.9%
論文合格率(対受験者):42.9%

 今度は、短答がちょっと高すぎるかな、という感じです。そこで、両者の中間くらいの短答合格者数ということで、2650人にしてみると、以下のようになります。

短答合格者数:2650人
短答合格率(対受験者):78.4%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):54.7%
論文合格率(対受験者):42.9%

 これなら、短答と論文のバランスがよさそうです。そのことからすれば、論文合格者数を昨年同様の1450人にするなら、この辺りの数字に落ち着きそうな感じがします。
 この場合の短答・論文の数字の上での難易度を考えてみましょう。昨年の短答の合格点は93点ですが、仮に合格率78.4%だったとすると、法務省の公表する得点別人員調によれば、合格点は88点まで下がります。また、昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が54.7%となれば、1527人合格する計算です。したがって、数字の上では、短答でいえば5点程度、論文でいえば77番程度、昨年より難易度が下がると考えることができるでしょう。

(2)次に、論文合格者数が1450人を割り込んで、1300人になった場合を想定します。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1300人
論文合格率(対短答):51.0%
論文合格率(対受験者):38.4%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、これはこのままでもなかなかいいバランスだ、ということができるでしょう。
 昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が51.0%であれば、1424人合格する計算です。したがって、数字の上では、短答は変わらず、論文でいえば20~30番程度難易度が上がると一応考えることができますが、ほとんど昨年と変わらないイメージでよいでしょう。

(3)最後に、最も悲観的な数字として、1100人まで減った場合を想定しましょう。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1100人
論文合格率(対短答):43.1%
論文合格率(対受験者):32.5%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、対短答の論文合格率がちょっと低すぎる、という印象がないわけではありません。そこで、短答合格率を70%にすると、以下のようになります。

短答合格者数:2364人
短答合格率(対受験者):70.0%
論文合格者数:1100人
論文合格率(対短答):46.5%
論文合格率(対受験者):32.5%

 これは、それなりにありそうな数字です。
 この場合の短答・論文の数字の上での難易度はどうか。昨年の短答の合格点は93点ですが、仮に合格率が70%だったとすると、法務省の公表する得点別人員調によれば、合格点は97点となります。また、昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が46.5%となれば、1298人が合格する計算となる。したがって、数字の上では、短答でいえば4点程度、論文でいえば152番程度、昨年より難易度が上がると考えることができるでしょう。言い方を変えれば、最悪の状況でも、この程度だということです。

(4)それぞれの想定の数字をまとめると、以下のような対応関係となります。

受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
3378 2547 75.4% 1450 56.9% 42.9%
2793 82.6% 1450 51.9% 42.9%
2650 78.4% 1450 54.7% 42.9%
2547 75.4% 1300 51.0% 38.4%
2547 75.4% 1100 43.1% 32.5%
2364 70.0% 1100 46.5% 32.5%

5.最後に、以上の試算に基づく推計の数字を、最初に示した年別の一覧表に書き込んだものを示しておきましょう。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
平成29 6716 5967 88.8%
平成30 5811 5238 90.1%
令和元 4930 4466 90.5%
令和2 4226 3703 87.6%
令和3 3754 3378? 90.0%?

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
平成29 3937 65.9%
平成30 3669 70.0%
令和元 3287 73.6%
令和2 2793 75.4%
令和3 2364? 70.0%?
2547? 75.4%?
2650? 78.4%?

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
平成29 1543 39.1% 25.8%
平成30 1525 41.5% 29.1%
令和元 1502 45.6% 33.6%
令和2 1450 51.9% 39.1%
令和3 1100? 46.5%? 32.5%?
1300? 51.0%? 38.4%?
1450? 54.7%? 42.9%?

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