1.令和5年司法試験の結果が公表されました。合格者数は、1781人でした。昨年は1403人でしたから、378人の大幅な増加ということになります。
2.近時の司法試験の論文合格者数は、短答・論文でバランスのよい合格率となるように決められているとみえます。そして、一昨年、昨年と、当サイトで事前に考えていたバランスのよい数字に近い合格者数になっていたのでした(「令和3年司法試験の結果について(1)」、「令和4年司法試験の結果について(1)」)。今年も、当サイトでは、短答の結果が公表された時点で、バランスのよい合格率となる数字を考えていました。
(「令和5年司法試験短答式試験の結果について(1)」。太字強調は原文のもの。) 実際の短答合格者数3149人を基礎に、昨年と同じ論文合格率(56.2%)を想定すると、論文合格者数は1769人と試算できます。 (中略) このようにしてみても、とてもバランスのよい合格率です。今回の短答式試験の結果は、短答・論文の合格率を昨年同様の水準にし、論文合格者数を1700人強にすることを見越したものだ、と考えても、それほどおかしくない。仮に、上記の試算のとおりとなれば、今年の論文合格者数は、昨年より300人以上増加することになります。 (引用終わり) |
上記試算では1769人で、実際の合格者数は1781人。とても近い数字です。今年も、論文合格者数は、短答・論文でバランスのよい合格率となるように決められているとみて違和感がありません。
3.一昨年、昨年と、具体的な論文合格者数は、「1400人基準」、すなわち、5点刻みで最初に1400人を超える累計人員となる得点を合格点とする、というルールで説明できました(「令和3年司法試験の結果について(1)」、「令和4年司法試験の結果について(1)」)。今年は、「〇〇人基準」で説明できるのか。以下は、法務省公表の「令和5年司法試験総合点別人員調(総合評価)」から、今年の合格点である770点前後における5点刻みの人員分布を抜粋したものです。
得点 | 累計人員 |
780 | 1698 |
775 | 1744 |
770 | 1781 |
765 | 1817 |
760 | 1860 |
仮に、「1700人基準」であれば、合格点は775点になるはずです。なので、「1700人基準」では説明できない。「1750人基準」なら、合格点は770点になるので、一応説明が付きます。でも、1750はちょっと半端な感じがする。違う着眼点で考えてみましょう。「令和5年司法試験総合点別人員調(総合評価)」には、実人員とは別に、最低ライン未満者を除いた累計割合が記載されています。これに着目してみてはどうか。以下は、今年の合格点である770点前後における5点刻みの累計割合(最低ライン未満者を除く。)を抜粋したものです。
得点 | 累計割合 |
780 | 57.95% |
775 | 59.52% |
770 | 60.78% |
765 | 62.01% |
760 | 63.48% |
これを見ると、5点刻みで最初に60%を超える累計割合となる得点を合格点とする、というルール、すなわち、「60%基準」で説明できることに気が付きます。60%という数字は、とってもいい感じ。今年の短答合格率が80.1%だったこと(「令和5年司法試験短答式試験の結果について(1)」)を思い返すと、「短答は80%、論文は60%」ということを考えているのかな、という感じもします。まだ、なんとも言えないところではありますが、来年も「短答は80%、論文は60%」で説明できる数字になったとすれば、有力な仮説となり得るでしょう。