1.令和6年司法試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は、93点でした。以下は、憲民刑の3科目、175点満点になった平成27年以降の短答式試験の合格点の推移です。
年 | 合格点 |
平成27 | 114 |
平成28 | 114 |
平成29 | 108 |
平成30 | 108 |
令和元 | 108 |
令和2 | 93 |
令和3 | 99 |
令和4 | 96 |
令和5 | 99 |
令和6 | 93 |
平成27年及び平成28年は114点、平成29年から令和元年までは108点でした。それが、令和2年に一気に15点も下がって以降は、毎年合格点が変動しています。どうして、このような点数になっているのでしょうか。
2.令和3年、令和4年の短答式試験の合格点は、一定の論文合格者数を踏まえつつ、短答・論文でバランスのよい合格率となるように決められているとみえました(「令和3年司法試験短答式試験の結果について(1)」、「令和4年司法試験短答式試験の結果について(1)」)
。
それが、昨年は、「短答8割、論文6割(最低ライン未満者を除く短答合格者ベース)」という一定の合格率を基準にして決められているとみえました(「令和5年司法試験の結果について(1)」)。在学中受験開始によって受験者数が増加することから、「1500人程度」を意識した論文合格者数を前提にすると、合格率が極端に低下してしまうため、それを避けようとして、一定の合格率を基準にしたのだろうと考えられたのでした。その状況は、今年も変わっていないと考えられることから、当サイトでは、今年の受験予定者数が公表された段階で、昨年と同様に、「短答8割、論文6割(最低ライン未満者を除く短答合格者ベース)」だった場合を想定した試算を行っていました(「令和6年司法試験の受験予定者数について(3)」)。以下の表は、その当時の試算と実際の数字を比較したものです。
短答8割 論文6割 の試算 |
実際の 数字 |
両者 の差 |
|
受験者数 | 3784? | 3779 | -5 |
短答 合格者数 |
3027? | 2958 | -69 |
短答 合格率 (対受験者) |
80.0%? | 78.2% | -1.8% |
論文 合格者数 |
1672? | --- | --- |
論文 合格率 (対短答) |
55.2%? | --- | --- |
論文 合格率 (対受験者) |
44.1%? | --- | --- |
概ね試算と同じ、といえなくもないのですが、合格率が中途半端に低めです。78%というキリの悪さ。「なんか変だ。」と感じさせます。この違和感は、合格点である93点前後の人員数をみると、より強くなります。
得点 | 類型 人員 |
合格率 (受験者ベース) |
95 | 2881 | 76.2% |
94 | 2920 | 77.2% |
93 | 2958 | 78.2% |
92 | 2998 | 79.3% |
91 | 3024 | 80.0% |
実際の受験者数3779人をベースに、短答合格率を8割にしたいなら、今年の合格点は91点にすればよかった。どうして、それより2点も高い93点になったのか。ここで、「論文では、最低ライン未満者を除く数字をベースにして6割だったよな。」ということを思い出して、短答でも最低ライン未満者を除外した合格率を考えてみました。
得点 | 類型 人員 |
合格率 (最低ライン未満者 を除く受験者ベース) |
95 | 2881 | 88.2% |
94 | 2920 | 89.4% |
93 | 2958 | 90.6% |
92 | 2998 | 91.8% |
91 | 3024 | 92.6% |
「最低ライン未満者を除いて9割」と考えると、スッキリする数字です。そこで、「ひょっとして昨年もこれで説明できるんじゃね?」ということで、昨年の数字でも確認してみました。以下は、昨年の合格点99点前後の得点における最低ライン未満者を除いた受験者ベースの合格率です。
令和5年 | |
得点 | 合格率 (最低ライン未満者 を除く受験者ベース) |
101 | 87.8% |
100 | 88.9% |
99 | 89.7% |
98 | 90.5% |
97 | 91.3% |
「1点刻みで初めて9割以上になる合格点」という厳密な意味での「9割基準」とまではいえないものの、概ね「最低ライン未満者を除いて9割」という説明ができそうな感じがします。このように考えると、今年の受験者ベースの合格率が昨年より少し下がったのは、「最低ライン未満者が昨年より多かったからだ。」ということで説明が付きます。
3.以上のことから、令和5年以降の司法試験の合格者数は、最低ライン未満者を除外した数字をベースにして、「短答9割、論文6割」という一定の合格率を目安にしているのではないか、という仮説を考えることができました。改めて、この仮説によって論文合格者数を試算してみましょう。平均的な最低ライン未満者割合は7.9%程度である(「令和6年司法試験の受験予定者数について(3)」)ことから、以下のように試算できます。
2958人(短答合格者数)×0.921×0.6≒1634人
論文合格者数は1634人となって、昨年(1781人)より150人くらい減少するだろう。これが、上記仮説から導かれる現時点での当サイトの予測です。