中間審査基準を使わせてくれない
(令和6年予備試験憲法)

1.当サイトで繰り返し説明しているとおり(※1)、近時の憲法では、「判例無視で人権の重要性と規制態様の強度をテキトーに羅列して、とりあえず中間審査基準(※2)」という予備校答案を抹殺してやろう、という意図を感じさせる出題傾向が確立しています。令和6年予備試験憲法も、その傾向に沿った内容でした。私人間の問題なので、中間審査基準で書きようがない。さすがに、本問で以下のように書いた人は、ほとんどいないでしょう。
 ※1 「令和4年予備試験論文式憲法参考答案」、「効果的で過度でない」の今後」、「近時の傾向との関係(令和5年司法試験公法系第1問)」、「考査委員激おこ答案(令和5年予備試験憲法)」、「薬事法事件判例無視はとても危険(令和6年司法試験論文式公法系第1問)」参照。
 ※2 「効果的で過度でない」基準を使う人は、もうほとんどいなくなったようです。

【論述例】

1.祭事挙行費を町内会の予算から支出することは、Xの信教の自由(20条1項前段)を侵害し違憲ではないか。

2.C神社の祭事挙行のために町内会費が使われることは、金額の多寡にかかわらず、D教徒であるXとしては、到底認められないから、信教の自由の制約がある。

3.では、正当化されるか。

 確かに、信教の自由は~重要である。しかし、~。 また、確かに、規制態様は~。しかし、~。 そこで、目的が重要で、手段の実質的関連性があるかで合憲性を判断する。

4.目的は、~で重要である。 次に手段は、~で実質的関連性がある(ない)。
 よって、祭事挙行費を町内会の予算から支出することは正当化され合憲である(正当化されず違憲である)。

 今年に関しては、上記のように書いた人は極めて少数だと思われることから、カルガモ作戦(※3)は成立しません。「これは即死」と言っても過言ではないと思います。本問でこれが通用すると本気で思っていたとしたら、憲法をナメすぎでしょう。
 ※3 「考査委員激おこ答案(令和5年予備試験憲法)」の5、「薬事法事件判例無視はとても危険(令和6年司法試験論文式公法系第1問)」の2を参照。

2.上記のように、今年も、中間審査基準では書きようがない問題でした。とはいえ、この傾向は、ちょっと露骨に続き過ぎています。さすがに、来年くらいは普通に中間審査基準でも書ける問題が出るのではないか。確たる根拠があるわけではなく、単なる直感ですが、当サイトとしては、何となくそんな気分になりつつあります。とはいえ、中間審査基準で書ける問題であっても、判例を用いた方が得点しやすい事案だったり、判例を知っていると当てはめの要素を拾いやすい事案だったりするでしょうから、いずれにしても、判例で書く訓練は重要だろうと思っています。

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